第13話

重厚な扉をゆっくりと開ける。

繊細な装飾が施された部屋の中を覗き込む。


「あー…また外れや、これで何度目なん?」


床の音が響く中、他の扉へと移動する。

次の扉を開けると、中には古い家具が厚塗りの埃をかぶっている。

開けた扉の向こうを見渡し、一瞬ためらう。


(まあ、妖の気配が無いから、安心して探せるわ…とと)


階段が目に入った。

部屋の奥に、階段が見えそうで見えない位置にあった。


(あったあった…って、なんやこの階段、下から全然妖気の気配が感じひん)


階段の前で立ち止まり、背後を振り返る。

彼の名前を呼ぼうと口を開くが途端に止めた。


(うーん…稀に階段の下が行き止まりって言うのもあるしなぁ…これで百鬼くん呼ぶのも気ぃ引けるし)


再び階段を見つめる。


(…確認するだけなら、うちでも出来る、降りて見よか)


最後にもう一度振り返り、決意を固めて階段を降り始める。


彼女は暗闇の中、階段を一段一段慎重に降りていく。

冷たい石の感触が足元に心地よく、徐々に不安が和らいでいく。

目の前に広がる空間を感じ取り、薄暗い影が横たわっているのを感じる。

降りるにつれて、空気がひんやりとし、湿気を帯びた匂いが鼻をかすめる。

階段の終わりが近づくにつれて、音が広がり、彼女の鼓動が高鳴る。

突然、階段の先に広がる広間の壁面がわずかに見えてきて、奥行きを感じる。

最後の一段を降りると、視界が開け、彼女は思わずその場に立ち尽くす。


「なーんもない…ここ、終点なんかな?」


広間は大きく、広々とした空間が目の前に広がり、天井は高く、岩肌が光を反射している。

壁には神秘的な模様が描かれ、洞窟の中を照らす自然な光が差し込んでいる。


(なんや、この石像)


迷宮の薄暗い通路を進む彼女の視線が、異様な存在を捉える。

四本腕の石像が静かに立ち尽くし、その圧倒的な存在感が彼女を引き寄せる。

手のひらを軽く合わせるように、それに近づく彼女の心は好奇心で満ちていた。

近寄るにつれ、石像の表面に刻まれた模様やひび割れがより鮮明に見えてくる。

不安な感情を抱えながらも、彼女の顔には興味津々の表情が浮かんでいる。

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