第6話
薄暗い中、朽ちかけた木の梁が頭上に迫り、壁には古い書物や道具が整然と収められていた。
彼女の心臓は高鳴り、しだいに迫りくる異様な雰囲気を感じ取る。
すると、微かに〈門〉からの妖気が漂ってきた。
まるでその存在が彼女を引き寄せようとしているかのようだった。
瑠璃玻は一歩一歩、ゆっくりと奥へ進む。
そこには、巨大な門が静かに佇んでいた。
大きな木製の扉は、何世代にもわたり受け継がれてきたかのような深いひび割れが走り、その存在感は圧倒的だった。
彼女を包む気配は、不吉であり、また神秘的でもあった。
「これは…立派な〈門〉やなぁ」
惚れ惚れとして見る彼女だが、自分が何をしに来たのかを思い出す。
(あかん、見蕩れとる場合やない、〈門〉があると言う事は、近くにもアレがある筈…)
やがて、彼女はその近くに、小さな台座に置かれた一枚の呪符を見つけた。
淡い光を放つその呪符は、周囲の暗闇の中でかすかに輝き、迷宮へと繋がる道を示唆しているようだった。
呪符に描かれた複雑な紋様は、まるで幾重にも重なる迷宮の構造を思わせる。
(あった、転移用の呪符、〈醜閣〉へ入ったら、最初から迷宮を動かなあかんけど、これなら途中から迷宮を探索出来る、妖術師の必需品や)
瑠璃玻の手が自然に呪符へと伸ばす。
(うちがやる事は〈門〉の封印、それと、正式に認定されてない〈門〉を利用する者への征伐…あの子が〈門〉に入った以上、外法師として認定せなあかん)
彼女の心の中には、不安と期待が入り混じり、さらに深い運命の底へと引きずり込まれる予感が宿った。
呪符が彼女を異界へと引き寄せ、〈醜閣〉へと導こうとしている。
瑠璃玻は、息を呑みながらその瞬間を受け止める。
周囲に充満する妖気と、彼の存在を思い浮かべる。
「っ…やっぱ、転移は慣れんわ、酔うてまう」
瑠璃玻は周囲を見回し、静まり返った迷宮の空間に男子生徒の姿が見当たらないことを確認した。
薄明かりの中、彼女の心に一瞬の不安がよぎる。
その広がる迷宮の壁には、奇怪な模様と陰影が描かれており、妙な緊張感が漂う。
彼女の足元には、古い石畳が不規則に広がり、過去を語るようにひび割れが走っていた。
その時、彼女はふと感じる。
彼がこの場所にいるはずだと。
(階段が目の前にあると言う事は…下へ降りたんやろうな、なら、早よ追わな…)
彼女は階段を確認して、男子生徒を追う様に降りていく。
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