先輩とゲーム配信楽しすぎる

 こんなゲーマーの憧れみたいな家に住めるとは。

 しかも雪先輩のような超絶可愛い女の子と一緒にオンラインゲームを遊べる、なんて夢のような光景だろうか。


 俺の為に急遽きゅうきょ追加したというゲーミングPC。

 デカデカとしたタワーケースが七色に光る。

 CPUは最新の10万円クラス、これまた10万円相当のグラボ、大容量かつ高速度のゲーミング専用SSD、マウスとキーボードもプロ仕様。マウスパッドまでこだわってるし。ハイスペックすぎるだろ、これ。



「ここまでよく用意できましたね」

「同じクラスのパソコンに詳しい女子に聞いたの」

「なるほど……」


 先輩のクラスにそんなPCに詳しい女子がいるとはな、そっちの方が驚きだ。


 部屋内部を吟味ぎんみしていると先輩がドリンクバーへ。よくそんなものを設置したなと畏怖いふの念を抱いていると、紙コップにドリンクを注いでくれた。



「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」



 かわいた喉をうるおしていく。先輩がれてくれた飲み物だ、味わって飲まねばモッタイナイ。


 少し落ち着いたところで『WO』を遊ぶことに。

 時間はまだあるし、帰宅なんて遅くなってもいい。なんなら帰らなくてもいいしな。明日は土曜日だから。

 ……あ、でも着替えとか生活するうえで必要最低限のものは欲しいな。一度、取りに行こうか。


「もし泊まるなら生活用品とか取りにいく?」

「そうですね、歯ブラシとか寝巻くらいは欲しいですね」

「うん。じゃあ、電動自転車使っていいよ」


 コンテナハウスの前に置いてあったあの不思議なナンバープレートが付いた電動自転車か。

 そういえば近年、新たに『特定小型原動機付自転車』なんてものが追加されたそうだな。『免許不要』で、ヘルメットも努力義務らしい。スマホで調べ、警視庁のウェブサイトにそう書いてあった。


「これ、使ってもいいんです?」

「うん、念のための保険も入ってるし、大丈夫だよ」

「マジっすか。こんなハイテクなものに乗れるとは感動です。では、借りますね」

「運転の仕方とか教えておくね」


 先輩は俺に電動自転車の乗り方を教えてくれた。操作方法は思ったよりも単純だな。親父の原付バイクハイパーカブに触れたことがあったが、同じようなものだった。


 さっそく乗車してみる。もちろん、安全に配慮はいりょし、キャップヘルメットを被って。

 それから前進してみると――。



「おぉ!? 思ったよりスピード出ますね」

「最大20km/h出るからね! 気をつけてね」


 20km/hも出せるのかよ。

 原付が確か法定速度30km/hだから、思ったより大差ないな。


「そんなに速いんですね……! ぶつからないよう気をつけます」


 先輩の電動自転車に乗り、さっそく移動開始。

 道中、必死に漕がずに前へ進める感動を覚えながら、俺は一旦帰宅を果たす。これでも原付免許すらない俺だからな……事故らなくてよかったぜ。


 家から必要なものをブン取って、俺は再びコンテナハウスへ。無事帰還した。




 ハウス内へ入ると先輩の姿はなかった。あれ、トイレかな。

 待っていればそのうち現れるだろうと、俺はソファに腰掛けた。しばらくするとバスタオル一枚姿の雪先輩が現れ、俺は固まった。



「…………っ!?」

「え、誉くん。いつの間に……」



 肩や腕、美しい足の美肌が垣間かいま見え、俺は一瞬にして下半身が暴発しかけた。……うおッ、こ、これは……!



「せ、先輩なぜバスタオル姿なんです!?」

「お風呂、入っていたから」


「そ、そうだったんですね。このコンテナハウス、シャワーもあったんですか……!」



 先輩は恥ずかしそうにうなずく。

 後で分かったことが、このコンテナハウスの裏口にシャワールーム専用のコンテナハウスが設置されていた。そんなところにあるとは思わん!

 俺が出かけている間、そこで体を清めた先輩。

 しかし、俺が予想よりも早く帰ってきてしまったので、こんな鉢合はちあわせをしてしまったようだった。


 なまめかしい半裸な先輩を直視できるはずもなく、俺は天井をあおぐしかなかった。



「着替えちゃうから、待っててね……」

「は、はい」


 他に場所がないものだから、先輩はその場で私服に着替えていた。衣擦きぬずれれ音がして、よりいっそう俺の心拍数は上昇した。まずいな、このままでは爆発してしまう。



「お待たせ」



 視線を降ろすと、そこには可愛らしいルームウェア姿の先輩がいた。……おぉ、猫耳フード付き。ピンク色なのが女の子らしくて可愛すぎる。



「先輩、似合っていますよ」

「えへ、ありがとう」


 嬉しそうに微笑ほほえむ天使スマイルの先輩。生きていて良かったぜ。


 それからゲーミングチェアに腰掛けてパソコンを起動。爆速でデスクトップに移行するや『WizardOnlineウィザードオンライン』を立ち上げた。

 最初から最新アップデートがされており、ログインするだけでよかった。時短になって助かる。


 すぐにログインIDとパスワードを入力。雪先輩も隣で作業を進めた。


 メインサーバーである『ニーズヘッグ』を選択。メインキャラクターで異世界へ突入。壮大なBGMがスピーカーから鳴り響く。


「あ、そうだ。先輩」

「どうしたの?」

「俺、配信もしなきゃなんですが――」

「ああ、うん。そのパソコンは好きに使っていいからね。誉くんの専用だから」

「いいんですか」

「もちろんだよ」


 ありがたく俺は配信環境も整えた。とはいえ、ヨーチューブライブを起動したり、画面を取り込んだりするだけだが。

 準備がいいことに、大体のアプリは整えられていた。もしかして先輩は配信もやる気があったのかもしれないな。


「先輩、配信やりたいんです?」

「うん。でも作法とかよく分からなくて」

「大丈夫ですよ。俺が教えますし」

「ほんとー!」

「はい。人気配信者になってリアルマネーを稼ぎまくりましょう」

「うんうん」


 めっちゃ乗り気で助かった。二人で配信して稼げれば楽しいぞ。

 先輩の配信環境も整えた。

 WizardOnlineウィザードオンラインの画面をキャプチャし、配信をスタート。更にWOとの『連携』もした。

 これをすることによってゲーム内の【配信ランキング】にも影響を及ぼすようになる。一位~十位には毎日レアアイテム及びゲーム内通過が配布されるシステムだ。

 ゲームの宣伝をしていることになるから、その報酬らしい。


 俺は常に一位なので毎日美味しい思いをしているわけだ。おかげで毎月五十万円以上を稼いでいた。これなら就職する意味がないので、俺はWOに人生を捧げるつもりでいた。


 配信環境が出来上がったところで、今度こそゲーム内へ。



「今日は第6層の『エーリヴァーガル』という川ダンジョンへ行きましょう。ボスが棲息せいそくしているので、初ボス狩りに挑戦です」

「いいね! 今のレベルでどれだけ通用するか試してみたい」


「一応ですが、デスペナを覚悟しておいてください。結構、経験値とか装備をロストするかもしれませんよ」


「そ、そうだね。リスクを考えてレアアイテムは倉庫に預けておくよ」


 このゲーム、やたら死に厳しいからなぁ。死亡するだけで経験値や所持アイテム、装備まで消し飛ぶ場合がある。



「でも、課金すればデスペナ受けないですよ」

「どういうこと~?」


 どうしてもデスペナルティを受けたくない場合は【VIP会員パス】というふざけた課金アイテムを買わねばならない。



【VIP会員パス】

【購入額:1,500円 / 30日】

【効果】

 デスペナルティを受けなくなる。

 獲得経験値 + 10%。

 アイテムドロップ率 +10%。

 VIPポーション 10個配布。

 (HP・MPを全回復。このポーションは1個で30回使用可。重量0。PvP及びGvGでは使用不可)



 仕方ないと言えば仕方ないか。WOは基本プレイ無料。だから、こういう“パス”で集金しなければ運営できないってわけだ。


 先輩は【VIP会員パス】を課金した。

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