奮闘
「あ”ーッッ!!!!オレこれ嫌いなんだよ!!!!クソッ!!」
「今の内だ!!畳みかけるぞ!!」
「ウゼーッ!!!!しね!!!!!」
グロウがなんとかもがいて子供のような悪態をつきながら手の中から抜け出そうとするが、聖女の光の手は反動のように締め付けていく。
勇者の後押しの言葉とこの願ってもないチャンスにアーチャーがきらりと目を光らせた。
ぎち、と弓がしなる。
「もらった!!」
「ぅぐッ、…ぁ、そ、んなんでオレを殺せるわけねーだろ!!!」
まっすぐに心臓を狙った破魔矢はもがいて動くグロウの右肩に深く刺さった。じわりと血がにじむ。
グロウの言葉を気にせずに、シールダーが魔力弾を放った。避けられず命中し当たった衝撃でグロウがふらつき始める。
光の手はもってあと数秒。
攻撃を仕掛けるなら今!!!
好機を見逃さず勇者が動いた。王から授かった剣がきらりと輝く。
「う”わ”ーーッッ!!!その剣もキライなんだよ!!!向けんな!!!!!ボケ!!!!!」
「素直に聞くわけないだろ!!」
「、ギィ…ッッ!!」
剣から放たれた斬撃の衝撃波がグロウを襲う。悪態がぴたりと止み、立ち上った煙の中からはグロウの苦しそうな声が響いた。
とうとう魔法の効果が切れたのだろう、光の手が徐々に消えていく。
四人が前のめりで様子を伺って、グロウを支えるものが何もなくなった瞬間、ゴッと風が吹きパーティ四人の身体を揺らした。
目も開けられない突風にひるんだ瞬間、魔導士ががくんと膝をついた。
「ハァッ、ハァッ、…!!」
「魔導士!…!髪が!」
「…ぁ?もってったの、髪、だけ、かよ…クソ…」
「グロウ…!!お前…!!」
「ンだよ、その顔はよお…?オレが、あれしきで、死ぬとでも…?」
その身体にびっしりと聖女の手形を残しながら、グロウが小さく笑う。凄絶な笑みが、パーティ4人をその場に縫い付ける。
グロウの状態は見るからに満身創痍だったが、そんなことも気にせずに笑っている姿は完全に常軌を逸していた。
…通常ならそろそろ負傷で膝をついてもいい頃合いなのに。
…痛くて顔をしかめて戦闘がイヤになる頃合いなのに!
パーティ4人の少なからず困惑の入った顔を見て、また、グロウは笑った。
「ハハ…ッ!ハハハ!ケッサクだなァ!!その顔!!なんだよ、オレたちは、そんなに、甘く見られてたって…!?ハハハ!ハーァ…ナメてんなよ…ガキどもが…」
勇者が冷酷に呟かれた言葉を聞いた瞬間、周りの温度がザッと急激に下がった。
空には暗雲が立ち込め、鳥が逃げていく。
木がざわめき、葉が大きくこすれる音がする。
まわりで戦っていたはずの影兵団も魔王軍もいつの間にかいなくなり、その場にいるのが5人だけだと嫌でも把握できた。
グロウが空中をグッと掴む。
途端に魔術が空気中に広がり、パーティ4人の魔力行使を抑えつけた。
勇者が新しく自身の影兵団を出そうとするが、反応は何もなく。
唯一、魔力感知が鮮明に出来る魔導士だけが顔を青くしてグロウを見つめていた。
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