第10話 頼光四天王について
あまり関係ないように見えて確かに関係ない話(笑)。
今回は先に本作の設定をちょっと説明するので、怠い人は流すか閉じてください。
本作は現代ファンタジーなのに理化学研究所が出てきます。
理研で秘密裏に行われていた「霊元移植実験」、その最高責任者だったのが霧咲紗月の父・霧咲吾郎。
理化学研究の副所長だった安倍(重田)英里は、所長であった母・晴子に不信感と反発を覚え、実験を止めさせるために奮闘しますが、志半ばで死んでしまいます。
英里の意志は夫であった重田優士と伊吹保輔、13課組対室に引き継がれています。
そんな背景がある国立理化学研究所。
どんな実験をしているかというと、「人工的に最強の霊元を持った人間を作る」を上位目標としています。
その隠れ蓑として少子化対策実験室を設け、国からの許可と助成を受けている。
作中で桜谷陽人が「生命倫理に反した実験を繰り返しているが国営であるためメスが入れ難い」と話しています。
ヤバイ実験を繰り返していると、そりゃ失敗作も生まれるわけで、そういう被験体は幽世に売られたり呪術の実験体にされたりしています。故に戸籍がない子供たちがたくさんいます。
そのために所長の安倍晴子とその娘・千晴(英里の姉・存命中)は巨大反社・反魂儀呪と繋がっています。
安倍家は先祖代々の陰陽師の家系であり、今でも陰陽師連合に加盟していますが、霊元を持った術者は既に絶え、有能な術者は英里だけでした。
いやぁ、ヤバい話ですね。
さらにヤバいことに、理研は命にラベリングをしています。
masterpiece(最高傑作)、blunder(失敗作)、bug(ガラクタ)。
blunderとbugは基本、廃棄処分。良くて集魂会送りとなります。真面そうな個体には戸籍が与えられて社会生活が可能。
理研生まれの被験体である重田優士や伊吹保輔は戸籍をもらえたblunderです。
とまぁ、今回はのっけから本作の説明を始めてしまいました。
なんでこの話から入ったかというと、理研に頼光四天王がいるからです。
昔から書いてみたかった科学とファンタジーの融合は、仄暗ではこんな形になりました。
で、やっと頼光四天王の話。
史実では酒呑童子を討った朝廷側の勇敢な武者(豪の者・兵)ですね。渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武。特に渡辺綱や坂田金時は色んな逸話があって有名ですよね。個々の説明はググれば出てくるんで省きます。
物語として土蜘蛛退治や鬼退治がありますが、実際の所は藤原道長に賄賂送りまくって朝家の守護となり、道長の出世と共にその地位を確立して盤石にしていった清和源氏です。
のちに幕府を開く征夷大将軍は清和源氏じゃないとダメみたいな流れになっていくけど、頼光が頑張らなかったら清和源氏にそこまでの価値って生まれなかったかもね。
酒呑童子討伐の話は、後世で作られた物語で、元になったのは藤原保昌との対立とも言われています。大江山に夷賊討伐とかには実際に行っていたようなので、そういう話と混ぜて作った御伽噺なんだろうなと思います。
頼光と保昌はお互いの身内が喧嘩して殺されちゃったりもしてて不仲説もあるし、創作年が古いほど頼光より保昌が酒呑童子討伐の主人公になっている物語もあるので、仲良く手を取り合って倒しましたって感じではないんだろうなと思います。
江戸時代の戯作者って、その辺りの作り込みがめちゃくちゃ巧いし面白い。面白い話が残るのは道理だなと思う。そういえば曲亭馬琴も頼光と四天王の話、書いてますね。酒呑童子ではなかった気がする。なんかの妖怪退治的な話です。
特に頼光四天王なんて、ロマンがある。真田十勇士然り、創作の題材としてはもってこいですよねぇ。
頼光は父親の満仲が作った源氏の武士団をそのまま引き継いでいますが、源氏の血筋に関わらず優秀なの引っ張ってきている感はあるので、才を見抜く目のある人だったんでしょう。
坂田金時なんて、頼光に拾われなかったら討たれる側になっててもおかしくなかった人なので。
ここまで書いて気付かれた方がいるか、わかりませんが、私は頼光と四天王が嫌いです。だから理研側の人間にしました。
作中で花笑円が「理研を朝廷に見立てて、それを守る四天王」と表現していますが、坂田、碓氷(漢字変えてます)、卜部、までは出しました。
本作の酒呑童子は伊吹保輔、理研にblunderのレッテルを貼られながらも、実は誰よりもmasterpieceな霊能を封印されていた。重田英里が理研を潰すために隠した秘蔵っ子です。
酒呑童子が勝利する話にしたかったんです。
だから保輔には伊吹山の鬼・伊吹弥三郎(酒呑童子の親、或いは幼少期とされる鬼)の遺伝子が組み込まれています。
けど、まぁ、そういう単純な話でもなく、命を軽視する理研に恨みを抱きながら、理研生まれの子供たちが理研の悪行を止めるために頑張る。
理研側に付く子もいれば、酒呑童子側に付く子もいる。
四天王の中で作中にまだ出てきていないのが源頼光と渡辺綱ですが、綱さんは割と嫌いじゃないんですよね。
一条戻り橋の茨木童子との逸話とか好きですね。あとまぁ、マジで至極個人的な趣味でしかないけど、歌川豊国の絵が良い。それだけ。
酒呑童子討伐の話の中でも、碓井・卜部が「鬼は殺して当然」と考える中で、自分の行動を割と冷静に捉えていた人なんだろうと思う。中央では正しい行動だけど、人間として果たして正しい行動なのかと考えていたような、聡明なイメージがあります。
本作の綱さんは他の三人よりキーマンになる登場をさせたいなと思っています。
ちなみに本作の碓氷さんと卜部さんは理研を守る振りしてちゃっかり酒呑童子側に付いていた人たちでした。坂田さんは理研側に付いて死んじゃったけど。
史実に合わせるなら、坂田さんが一番、酒呑童子の気持ちを理解できたんだろうと思うんですけどね。
理解できるからこそ討つのか、守るのか。その辺はキャラの性格と物語の流れによるのでしょうね。
源頼光もこれから出す予定だけど、あんまり良いキャラにはならないかもなぁ。必要な人だから出すけど。だって嫌いだし。
うがった見方ですけど、じっと気を見計らって、自分が一番注目してもらえる瞬間を、他人を足蹴にしたり立場を奪ってでもモノにしてきた人、というイメージです。そういう人が歴史に名を遺すのでしょうね、きっと。
藤原保昌の方がどちらかというと好きです。比べるなら、ですけど。
キャラ設定を作る上で、格好良いキャラって作るの簡単なんだけど、情けないキャラとか弱いキャラって作るのも書くのも結構大変だったりする。
ヘタレの頼光ってのも、悪くない気がしています。
今回は、かなりざっくりと書きました。
今までもざっくりですけどねぇ。あんまり調べ直したりもしてないので、例によって例の如く参考にはしないでください。
さて、次回は「鬼の種類」について。
本作に登場する、または登場予定の鬼について、具体的にいくつか紹介したいと思います。
本作はこちら↓
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで』
https://kakuyomu.jp/works/16818023212261037641
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで・Ⅱ』
https://kakuyomu.jp/works/16818093078564930840
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで・Ⅲ』
https://kakuyomu.jp/works/16818093081595698958
※現在Ⅳを執筆中(まだ非公開)。
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