2000~
男は孤独だった。
目に映る全ての事象は、彼にとって退屈だった。
自分よりも遥かに長く生きている人間の人生観を聞かされることも、同年代の中身がない白けた会話に混ざることも、彼にとって苦痛だった。
何をしても刺激が無い日々は、今に始まった事ではなかった。
男は雪が降らない地域に産まれた。
口数の少ない父親が家を出てからというもの、独裁的でヒステリックな母親が家庭を牛耳っていた。
毎晩のように酒を呑み元夫の恨み節を垂れ流す母親は、他者と交流を持たず、独走して歪んだ愛情を男へ注いだ。男が当時3歳のことだった。
時が流れ、少し成長した男は、母親の異常性を危惧した親族によって引き取られた。
男は、母親が通院していた精神科の主治医により、知能指数が上位数%に位置し、加えて失感情症である事を指摘された。
感情表現や感情の起伏が少ない男に対し、周囲は不当な扱いを施した。
他者から見れば見るに耐えない環境であったが、男にとってそれは日常であった。自身の感情に鈍い男は、そこから逃げる術を知らなかった。
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