第3話 幼馴染との同室生活は快適です1
――とはいえ。
ここまでルネと同室で過ごしてきて実際のところ。
ルネとのルームメイト生活は、他の男子生徒たちには申し訳ないくらい快適だった。
「ユーベル、洗濯物」
「おう」
基本的に、食事を除いた掃除・洗濯などの家事は、生徒たちが各自で行うよう決められていた。
自主性・自立心を養うため、とかなんとかいう理由らしい。
とはいえ、そんなことを言ってもこっちは十代のやんちゃ盛りの少年たちである。
ロクに掃除もされることのない、魔窟のような部屋が存在するという話も聞く中で、我が部屋に至ってはルネがまめまめしく掃除をしてくれて、洗濯も洗濯物が溜まる前に気を遣って動いてくれる。
おまけに、いい匂いがするルームフレグランスなども置いてくれたりしてくれるおかげで、用事があって部屋に来た他の生徒から「……この部屋、なんかいい匂いだよな」と言われるくらいである。
「……なあ、別に毎回、俺の分まで洗濯しなくてもいいんだぞ? 別に俺だって自分でできるし」
「へーえ? そう言って、ニットベストを普通の洗剤で洗濯して思いっきり縮ませたのは誰だっけ?」
「……俺です」
「わかればよろしい」
そう言いながら、ルネが洗濯したばかりの衣類を、自分のクローゼットに仕舞っていく。
「……それに別に、ひとりぶん増えるくらいそんなに苦でもないし。洗濯も嫌いじゃないし」
だからいいよ別に、というルネに甘えて、毎回この体たらくの俺である。
「……ありがとな。今度なんか、ちゃんとお礼しないとな」
そう言いながら立ち上がり、俺も自分の衣類をクローゼットにしまおうと歩きがてら、ルネの頭をポンと撫でる。
そうやって俺がルネの頭を撫でると、なんともいえない照れたような表情で撫でられた頭に手を当てるルネが可愛いので、ついやってしまう俺の悪い癖。
――そうなのだ。こいつ、部屋にいる時可愛いんだわ。
自覚があってやっているのかはわからないが、部屋の外では気を張って『完全無欠の美少年』を演じているルネも、自室で二人きりになると途端に”ルネ”らしさが増す。
普段学校では見せない、女の子らしい表情やしぐさを、普通にぽろっと出してくるのだ。
その可愛い姿がつい見たくなって、今みたいに部屋で二人きりの時にはちょっかいをかけてしまう。
いかんいかん。自粛しないとなあ。
そうは思いながらも「いまなら誰も見てないしいいか?」と思った時にはついやってしまうのだが。
なんだろうあれだ。
猫とか犬とかが家で腹を見せて甘えてくる時に、ついかまってしまいたくなるあれ。
あれじゃないか。
そんなことを思いながら、ルネから渡された洗いたての衣類を、クローゼットに仕舞おうとした時――。
「あれ?」
畳まれた下着の中に、見覚えのない物が一枚混ざり込んでいた。
「なあルイ、これ――」
そう言って、俺が見覚えのない男物の下履きを、ルネに向かって掲げて見せた瞬間――。
ばっ! と、その俺の手にあったひらひらの一枚を、ルネの手によって勢いよく奪い取られた。
「ごめん! これっ……! わ……、僕の!」
そう言って動揺するルネの顔は、トマトと比べても遜色のないくらい、真っ赤に染まっていた。
「…………おう」
………………。
まあ、そうか。
流石に、ここに来て女性物の下着を履いていて、洗濯するわけにもいかない、よなあ……。
自分の下履きの大きさと比べて、あまりにも小さかったその下履きのサイズと感触を思い出して、なんだかちょっとよろしくない気持ちになりそうだった。
というかコイツ。
あんなのどこで買ったんだ……?
胸の内に浮かんだ疑問は、流石に本人に聞くわけにもいかなかったから、黙って収めておいた。
……今度からはもし混じっていても。
気がつかなかったふりしてそっとベッドサイドにでも置いておいてやろう。
そんなことを思いながら、まだ赤い顔で洗濯物をしまい続けるルネを背中に、俺も同じく片付けをするのだった。
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