第2話

「 花火大会‥かぁ」

なにやら花火がため息混じりに話す。

「なんだよ?」

「 いやね、そういえば私毎年なつきといってるなぁと」

今日も飽きずに花火が俺の家に遊びに来ていた。友達いないのか?

「花火って友達いないの?俺以外に。」

「は!?!?」

昔は正直学校でも浮いた存在だった。

転校生ってのは良くも悪くも話題になるんだよね。特に田舎では。

小学校の頃に、ここに来た花火。

第一印象は暗い子だった。

いつも遠くを見つめて、話しかけても聞いてないみたい。感じ悪い笑笑

なんて言って女子達は花火のことを避けていた。たまたま俺と帰り道が一緒だった。

俺はしつこく、ほんとにしつこーく話しかけた。だって気になったんだ。子どもながらにこの子は寂しいんだってなんとなく感じたから。


日に日に少しずつ喋るようになってきたある日。周りの友達から冷やかしがあった。

「お前ら付き合ってのかよー?なつきやめとけよーそんなおばけみたいなの!!!」



子どもの世界ってのはシビアで残酷だ。

((普通))じゃなければ排除しようとする。

だから皆んな、必死に子どもたちは

((普通))になろうとする。



でも。俺たちは生まれた時から((普通))じゃかったんだぞ。親の愛情なんて注がれないのがあたりまえだったんだぞ。

否定され、親の顔色伺って、心に空いてるでかい穴を埋めたくて。どうにかして愛を求めるうちに((普通))の人と全く違うヒトになった。なるべくしてならざるおえなかった。


だから俺は、そういうヒトが傷つくことをいった。花火を否定したそいつらが許せなかった。花火は俺と同じヒトだ。この子を否定するのは俺も否定したことになる。たまたまいいところに生まれただけのくせに。いいところに生まれたのに相手の気持ちがわからないのか?


俺はそいつらに殴りかかった。

記憶にあるのはある言葉を何度も叫んでた

「お前らみたいな元々よく生まれた奴らが!!!俺たちのことばかにするな!!!!」


はい。即停学。

小学校でも停学ってあるのね。

帰ってからばあちゃんに謝った。


泣きじゃくる俺の手を花火は何も言わないで握ってくれた。帰り道ずっと。


そこからかな。

花火が明るくなったのは。


まるで別人のように明るくなった。

勉強もできてたし、運動もできる方で。そこから明るくなったら一瞬でクラスの人気者になった。


逆に俺が浮いた存在になった。でも、変わらず花火は俺に接してくれた

そして冬月もずっといてくれたな。

あいつには感謝だなほんと。


中学、俺は隣町の学校にいった。

花火はそのまま地元の学校へ入った。

でも。それからも仲良しだぞ。

だから今もこうしておれんちにずかずかはいってきてる訳で。


「 べ、別に友達がいないわけじゃないよ?ちゃんといるよ?」

「じゃーなんでいっつも俺と行ってるわけ?」

「 そ、それは。」

「なんだよ?」

「   だって、だって、夏と行きたいんだもん。私、さ。なつのこと‥」

チリーン

風鈴の音が響く。どっどっと自分の心臓が早まる。



「「なぁぁぁぁつにぃいいいいいいいぃいいいぃー!!!!でぇてこぉぉぉーーーい!!!!」


キィーーーーーーーーン

小学生特有の高い、でかいこえが外から聞こえてきた。



「 ‥‥‥。」

「はーい!!!いまいくからまってろー!!‥で?続きなんて?」

「 え!?し‥しらない!!!!!」

そそくさと小学生たちににみつかりたくないのか?裏戸から逃げるように帰って行った。


「‥‥なんだよ‥。」



(続きの言葉、ききたかったな。)




「やほー!!なつにぃ!!遊びに行こうぜ!!」

「そだよー!なつにぃ今度こそ私たちのカブトムシ取りに付き合ってもらうんだから‥‥ん?」

「どしたのなつにぃ?顔真っ赤にして?」

「おーおー?なんか泣きそうじゃん!!なんかあったの?」


「ほっとけ!!!!!!!!」


ばあちゃんが持ってきてくれた、ぬるくなったコーヒーを一気に飲み干した。

余計熱くなった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜空に花火が溶けていく 菊叉 眠子 @kikumata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る