第1話
みーんみんみんー
セミが鳴いている。今は8月か。
まだまだ暑い日が続いていた。
「おーい!!なつにぃ!!」
「あーそーぼー!!」
外からこの暑い日にでかい声が聞こえた。近所の子どもたちだ。
「あきひと、はるな。」
「ねーあそぼーなつにぃ」
夜空なつき。呼びにくいからなつにぃなと、初対面でいわれたのだ。夏休み。毎年遠くからここに遊びに来ている子どもたちだ。にしてもさ。子どものコミ力はどうなってんだか。
「お前ら〜宿題は?」
「なつにぃわかってねぇなぁー!!夏休みの宿題はギリギリでやるべし!!」
たく。
「今日!川に遊び行こ!!ココ最近ずっと家に籠ってるでしょ?気分転換にさ」
僕の家は田舎だ。それもド田舎。
近くに綺麗な川があった。
まるで職人がみがいた硝子みたいに澄んでいる。アユにメダカ。鱗を美しくなびかせてスイスイと魚も泳いでいる。僕たちは夏になったらそこの川で遊ぶのが定番だった。
「そーだなぁ。残念。もーすこししたら花火が遊びに来るんだ。悪いな」
「……そうなの、、じゃあ、さ。はなねぇも一緒に行けばいいじゃん」
「あいつ、今日俺ん家のスイカ食べんだって」
「……ほんっと仲良いね、はなびねぇとなつにぃってさ」
2人は目配せをした。
なんだ?
「……別に。俺たちつきあってないからな?」
ふふっとはるなが笑った。
「わかったよ!じゃあ今日は2人で行こ!」
「そうだな、なつにぃ!あんま家に籠ってんなよ!!」
2人はサッと振り返り網を揺らしながら走り去って言った。あいつらこそ付き合ってんじゃないのか?
「 それはーかみのみぞしるねぇー」
「うお!!!!?」
「 わ!!どしたの!?」
「急に現れんなよ、花火。」
「 えー!玄関で叫んだけど来てくんないんだもん。」
俺の幼馴染。花火。
子供の頃からずっと一緒にいる。
花火は俺が幼い頃都会から引っ越してきた。
花火のお父さんとお母さんがなくなって、おばあちゃんが引き取ってくれたらしい。
花火は、いつも寂しそうな雰囲気をまとっていた。消して本心は見せないで、いつも切なそうにわらっていた。
俺が、守らないと。って思った。
「だーからってー!勝手に他人の家にずかずかはいってくんなっ!」
「 もう兄弟みたいなもんでしょ私たち。」
「ばぁちゃんは?」
「 挨拶してきたよ〜」
ちらっと見ると、台所でばあちゃんはスイカを切っていた。
俺も親がいない。花火と同じで。、
俺を捨てて、でていった。
でもばあちゃんが大切にそだててくれたから。
それに、ここには友達もいっぱいいる。
不思議と寂しくはなかった。
「や、なつき」
「冬月!!」
俺の友達。
「またこのメンツかー、ま、夏らしくていいや」
「今夏休みだしなー俺たち」
「 そだねぇ〜夏休みだよ〜」
「だからって俺ん家に集まったらいつもと変わらんだろ」
「まーそうだったなぁ」
「お前、最近籠ってんだろ。夏休みだからって、いくら何でもずっと家にいたらかえって体壊すぞー」
「いーんだよ。現代の若者はあんまりそとにでないんだよ」
「 あはは!!なんだそれ!!」
花火がわっと笑う。
「そういや、今年花火大会いく?」
「 もっちろん!!女子は花火大会すきなんだよぅ!!友達も行くって言ってたし!」
「そうだなぁー夏といえばだし、行きたい。」
「そうかぁ、俺と行くか?」
「なに!?私もだったら行きたい!!」
「いや、今年は。」
冬月は察したようだ。
「わかったよ。二人で行きたいよなぁ。」
「あんがとよ」
「 え!?なに!?なんか意味深なんですけど!?」
花火がりんご飴みたいに顔真っ赤になった。
「じゃ!俺はそのことだけききにきただけ。きょうは帰るわ。なつき元気そうだし。今度遊びに行くぞ!」
「おう。」
「 まったね〜」
冬月が帰ると同時に、ばあちゃんがスイカを持って来た。
「 まーーってました!!」
「ばあちゃん!随分きったなぁ」
「あれ〜?冬月坊ちゃん帰ったのかい?食べると思っていっぱい切っちゃったよ」
「俺、こんなに食べれるかな……」
「 はいはい!!!私食べれるーー!!」
「太るぞ」
「 残念スイカはふっとりませーーん」
「余ったらご近所さんにもわければいいさぁ、ほら、はるなちゃんとあきひとくんにも声掛けてぇな」
「おう。」
「 でわ、、、いっただっきまーーす」
セミの声がカナカナとひぐらしの声に変わっていく。まだなくには早すぎるだろ。
あたりは淡い透き通った青い夏色から夕暮れ色へと滲んで辺りを染めていく。夏の夕暮れは何故か懐かしい気持ちになる。遅起きのカエルたちが1匹また1匹と鳴き始めていた。
スイカはまだ半分も無くなっていなかった。
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