第10話

「みんな、ごめん、俺のミスだ。」


「いや、僕の指示ミスと、伝達ミスだよ。」


「俺のプログラムミスでもある…」


 勝てた試合に負けることほど悔しいものはない。


「お前らすげえよ、大会最高記録だ。一度全国の土俵に片足突っ込んでの敗北、誇れる戦い方だ。」


 結果、10点だったため、ビリにはならなかったが、全国出場は逃してしまった。


 結局僕は全国には行けなかったのだ。




 帰りのバスは静かに学校に着き、僕はそこから自転車で家に帰る。


 自分の部屋に入ると、自然と涙があふれてくる。


 この半年、全力でやって、勝てなかった。


「ああああああああああ………」


 僕は嗚咽し、枕に顔をうずめた。


「鋼…ご飯…置いておくわね~…」




 翌週、ロボット研究部の打ち上げ。


「終わっちまったな、僕たちの青春…」


「そうだな…終わったな…」


「まあでも、楽しかった。」


「俺も、この部活でやっと、青春ができたと思うよ。」


「僕たちももう引退か…」


 この半年間は、今までのロボ研での思い出よりも、ずっとずっと忙しくて、でもそれが楽しくて…


「おい、どうした藍上!?」


「いや、ただ、もっと早く部員増やしておくべきだったなって…」


 もっと、この部活に没頭していればよかった…


「はい、ハンカチ。」


 小田中君は涙を流す僕にハンカチを渡してくれた。


「そうだ、みんなは進路どうするの?」


「俺は、専門学校だな。来週面接だ。」


「同じく、俺も専門学校。明日面接。」


 赤来と伊達は


 そう言い、静かに…


「「だから、ロボコンはこれで終わりだ。」」


 つぶやいた。


「そっか、今までありがとな。頑張れよ。」


「みんな、こうやって散らばっていくんだな…」


 そう小田中君は悲しげに言葉をこぼす。


 彼は進路はどうするのだろうか…


「小田中君は?」


「俺は、零澤ぜろさわ大学の工学部に入るつもりだよ。」


「そっか、僕は、からくり大学のメカトロニクス学科。大学に入ってからもロボコンは続けようと思う。」


「お、じゃあ僕も、大学で学生ロボコンやろうかな!」


 そして僕たちは後の卒業式でも同じ約束を交わすに至る。


「じゃあ次は、」


「「学生ロボコンで!!」」


————―――――――――――――


1年後


「おう、藍上、ロボコンの新人戦、初戦の相手、決まったから確認しておけよ~」


 僕は大学のロボコンプロジェクトに入り、新人戦に向けて奮闘していた。


「えぇっと、新人戦の相手は……」


 これは必然か偶然か…


“第1回戦/第1試合”


 いや、きっと必然だ。


“強豪・からくり大学 V.S.”


 あの約束は…


“ダークホース・零澤大学工学部”


「意外と早く果たせそうだな。」

                                   ~end~

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鋼鉄の蟻は青い空を見る 作島者将 @saku-1

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