第6話

 大会まであと1週間…


 なのにまだ機体が完成していない!!


「プログラムは完成だ!!俺は、帰るぞ!!不備があったら明日治す!!」


 赤来はそう言い放つと帰っていった。


 現在時刻:17:00PM


 機体に仮の板を張り付け、とりあえず配線してみる。


 配線が終わったらコントローラを持って試走させてみる。


 コントローラは小田中君に合わせ、ゲームのコントローラのプログラムを魔改造したものになっている。


「あれ?動きが変じゃないか?」


 それは秋谷先生の声…


「試しに地面から浮かせて動かしてみましょう。」


 先生に車体を浮かせてもらい、コントローラのジョイスティックを前に倒す。


 ん?


「他のモータはジョイスティックの信号を止めたらピタリと止まるのに対して1個だけ、泊まり方がぎこちないモータがあります。」


「明日だな。」




 翌日、早めに来てアームを取り付けるリフトの昇降を確かめる。


「えっと、L2ボタンで前後2つのリフトの切り替え、うん、しっかりできているな。」


 その時、ふと頭によぎるイケない考え。


「リフトを動かしながら前後切り替えたらどうなるんだろう…」


 まだ誰も来ない静かな校舎に満ちる緊張…


 僕は後ろのリフトを下げながら前のリフトに切り替えた。


__バキバキバキバキ!!


 やばいやばいやばいやばい!!


「非常停止!!」


 結論:切り替えられる前のリフトは暴走し、もう一方のリフトは正常に動く。


 ちなみに、バキバキってのは何かが壊れる音ではなく、歯付きプーリーが空回りする音だ。


 まあ、ゲーム好きの小田中君が運転するロボットだ。こんなミスはしないだろうし、真面目だから試合中にふざけてこんなことはしないだろう…


「さっきすごい音が聞こえたけど…」


「き、気、キノセイデスヨ?」


「そうか?ならいいんだけど…」


 どうやら職員室まで聞こえていたらしい。


「あ、藍上、今日中にロボコンのチーム名と機体名みんなで話し合っておいて。ごめん俺ずっと忘れてたわ、よろしく。」




「というわけで、会議を始める。みんな、何か案はあるか?」


 すると伊達が手を挙げ


「できるだけ校長先生が読みづらい名前にしようぜ!“ぢぢぢづぢづづ”とか…」


 だめだ、何言ってんのか分かんねえ…


「はいはーい!!」


「小田中君!!」


「“パブロ・ディエーゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ…」


「文字数オーバーだ、却下。」


「じゃあ俺!!」


「赤来!!」


「鮮血…」


「却下。」


「じゃあ部長の案を出してみろよ!!」


「僕のかい?フフフ…やっぱ、ロボ研最後だから…“ラストロボ研=サンダーボルト”とかどうだ!!」


 …………。


 反応が無い…


「だったら、ロボ研カイザーとか…」


「工業高校生がよくハンダ溶かしてリード線繋げて作るアリのオブジェからとって、鉛蟻とかどうだ?」


「じゃあ、帝王蟻とか?」


「サンダーボルト…帝王…ハッ!!」


 刹那、伊達が何かを思いついたように僕に言う。


「機体名、これでどうだろう!!」


 伊達はとっさにメモ帳を取り出し、そこに“雷帝”と書いて見せた。


「えっと…ライテイ?」


「違う、“カミナリノミカド”だ。」


 僕はそのワードを聞いた瞬間、消えていたと思っていた厨二心が蘇ってしまった。


「なら、“イカヅチノミカド”はどうだ?かっこいいだろ!!」


「「「おぉおおお!!」」」


「じゃあ、まず機体名は“雷帝イカヅチノミカド”で決定でいい?」


「「「賛成!!」」」


 満場一致、あとはチーム名だけだが…


「チーム名も思いついた!!“メタルアント”なんてどうだ?鋼鉄の蟻って意味だ!!」


「なるほど…メタルとアントを英語表記にして繋げて“METALANTメタラント”なんてのはどうだ?」


「「「うおおおお!!」」」


 意外とすぐに決定した。


 大会まであと半週間…

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