六話 今度は冒険者に
実力のある人間というのはどこに行っても人気者だ。ランクが高ければ自然と名前が広がる。
そしてロックは五年前に勇者パーティのメンバーだったなだ。実力も実績もあり、それなりに名前も顔も知られている。
つまりどういうことかというと……
「ロックさん!お疲れ様です!」
「ロックさんイルギシュからこっちに来たんですか!?」
「隣の人は弟子かなんかか?」
ここはフラシア王国の辺境町オルス。そこにあるビジランテユニオンの建物だ。
ご覧の通り、俺たちは今 囲まれている。ロック目当てに、老いも若いも男子女子も関係なく群がってきて、非常に
どうやら俺は弟子やら舎弟やらと思われているようで、挙句の果てにはこっちに来る途中に助けられた子供みたいな感じに言われている。
「ほらほらどいたどいた。俺たちゃ用があるんだよ、後にしてくれー」
しっしっと手を振ると周りの人々は道を開けた。これが有名人の力かと感心しながら、冒険者として登録する為に受付へと向かう。
「すいません、冒険者として登録したいんですが…」
「冒険者としての登録ですか?それでしたらこちらにお名前と基本ポジションを記入してください」
ポジションとは、パーティを組む際に決める立ち位置の事。
相手にダメージを与える事に特化したのがオフェンス、相手の注意を引き付けて攻撃に耐えるのがディフェンス、味方に支援、回復魔法を掛けたり必要に応じてアイテムを渡すなどを行うのがサポーターといったところ。
こうした基本ポジションに加え、個々人に合わせたユニークポジションも存在する。
予め基本ポジションを決めておくと、他の冒険者が臨時パーティを組む時に参考になる。
そして、即席パーティを組む必要が出た場合、その中でもランクが高い人物をそこに据える場合もある。
ユニオンに名前を登録した人はユニオンメイトとと呼ばれ、その中には冒険者ともうひとつ、探索者というものが存在する。
探索者というのはあまり戦闘を行わなかったり、一人で活動したり、特定の支部のみで活動するなどの理由により、基本的に他の支部へ移動することがない者のこと。
こちらはその街のユニオン支部に登録され、基本的なサポートの他に個々人に合わせたサポートまでしてくれるが、あまり危険度の高い依頼は受けられない。
冒険者とは広範囲で活動し、他所へ移動することが多い者で、害獣や魔物討伐、アイテム採取だけでなく危険区域や未開拓地域などにも足を運ぶこともある。
冒険者はいつに何処へ向かうのかが不明瞭である為、個々人に合わせたサポートは出来ない。
だが他の支部にもその人の情報がある程度共有できるように、ユニオンメイトの証明書の代わりにカードが渡され、それを他の支部でも見せる事で自分に合った依頼を受けられる。
ちなみに冒険者として活躍していた人が、何らかの理由により一線を退き探索者になったり、探索者として細々と活動していた人が、冒険者になって活躍するということもあるらしい。つまり冒険者と探索者はある程度切り替えが可能らしいので、そこまで真剣になってどちらかを決める事はない。
ある程度活動してみて、後々方向性を変えることも可能なので、ある程度の柔軟性も持ち合わせている。
そんな気軽さから、職に付けなかった人のための救済措置でもある。
これから改めて冒険者として活動する訳で、勇者だったときの経験を鑑みるとオフェンスであるが、言ってしまえばオフェンス、ディフェンス、サポーターもそれなりにこなせるため、どれにするか少し悩んでしまう。
「まぁとりあえずオフェンスにしておくか」
とりあえずのポジションということでオフェンスにしておき、しばらく経過したときに他のポジションが良いとなれば、改めて変えるのもありではあるので、ここはオフェンスとしておく。
記入したので受付の人に提出した。
「はい、ではこの内容で登録しますね。では次に冒険者ランクについてですが…」
冒険者ランクとはその冒険者がどれだけ活動してきたかを表す指標である。
基本的にこなしてきた依頼の数によりランクは上がっていくが特定の条件を満たさなければならない場合もある。
ランクは下からビギナー、ベーシック、マスター、エクストラと存在しており、マスターランク以下にはC、B、Aランクがある。
ビギナーのAランクとかマスターのBランクみたいな感じ。
ビギナーランクは駆け出し冒険者用のランクで、ここはひたすら依頼をこなしていれば、自然とランクは上がる。
ベーシックはある程度の依頼をこなし、それなりに慣れた冒険者がなるもの、最もポピュラーなランクである。
そしてマスターランクは大型・強力な魔物や、対人での戦いで成果を収めた冒険者がなるもので、冒険者の花形とも言える。
但しマスターランクになるというのは大きな壁であり、憧れるものは多いものの、無理に目指して命を落とすものも多い。だからこそマスターランクの冒険者は基本的にある程度の権力を持つ。
最後にエクストラランクとは、魔物の大量発生や大規模な暴動、テロなどといった深刻な被害が想定された状況に於いて、多大な成果を上げた冒険者にのみ与えられるランクである。
依頼によってもそれぞれ危険度が存在し、自身の冒険者ランクと照らし合わせ依頼を受注することになる。
最初はビギナーランクから始まるが、その働きによっては飛び級も有り得る。
「いやいや、ソウスケのランクならエクストラでいいだろ」
飛び級も有り得るが流石にそれはぶっ飛びすぎである。いや確かに元勇者ならそうなるだろうけど、その事は内緒なので知らない向こうからすれば訳が分からないだろう。
大きな成果もなく、それでは悪目立ちしてしまう。それは避けたい。
「えっえとロックさん?流石に何も功績がないのにも関わらず、いきなりエクストラと言うのはちょっと…」
ほら、無茶苦茶なロックの発言に受付のお姉さんも困っている。
「そうだぞロック。物事には順序ってものが──」
「何言ってんだ、正当な評価だろ」
俺も受付の人と同意見なのでそう言ったのだが、彼はしれっとそう言った。ロックにとってはそうでも周りは分からないんだってば。
「貴方にとってはそうかもしれませんが、周りからすれば訳が分かりませんよ?」
突如後ろから聞こえた女性の声に懐かしさを感じた。腰まである綺麗な水色の髪に、緋色のつり目が特徴の女性がそこにいる。
「あぁ?よぉサラ、お前もコイツを見れば分かる」
「はぁ、見ればって………ッ!?」
そこにいたのは昔のパーティメンバーのサラであった。
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