3. 菜を焼く
今ではすこしではあるけど、自分を許せるようになってきた。
無神経だったのは確かだが、きっと心配だったんだ。あの時のおれも。
六月おわりに部活に出てきた先輩は、どことなく、それでも確かに、生気をごっそり減らしてたんだ。
新入生をすこし強引に、熱心に勧誘して歴史部へ引き入れてきたあの時は、ふわりとした髪、白い肌が、童話の絵本にでてくるナニカのように思えた先輩が。
ひさびさに会った時には、髪のふわりとした感じも、肌にやどっていたものも薄れて。
ぞくっとした。
本当に幽霊に、いや、べつの童話の絵本でみた、海にしずんでゆく人物かなにかみたいに思えたんだ。
とにかく、あの夏の夕方に。
赤い西日と、コンロの熱気をあびてはしゃぐ先輩の肌は赤くほてって、髪は汗と光を吸って。
焦げくさくて炭くさいキャベツとかタマネギかじりながら、いつのまにか二人けっこう盛り上がってて。
先輩とのあいだに感じていた壁が、どこかへ溶けて消えちまったような気さえして。
そんなとき、先輩はそばに置いていたバッグを開けて、保冷剤にうずまっていた白い木の箱をとりだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます