第141話 末吉末吉 青色無双


 セルヲルの操る赤いイルクは倒した。

 ピクトの改造した青いロボは、とんでもなく強いらしい。

 これなら、ギトロツメルガの攻略に使えるんじゃないかな。


「なあ、ピクト。この青いロボで、あのギトロツメルガの壁を壊せるかな?」

『簡単ですね。でも、できないです』

「え? ピクトは相変わらず、言っていることがよくわからないな。くわしく説明してくれよ」

『カンタンに言うと、もうエネルギーが、無いですよ。あんまり残ってないのです。つぎの対戦できると思いますよ?』


 それは、厳しい……え? 

 ちょっと待て。いまピクトが、なんか変なことを言っていたけど?


って?」

『逃げたピンズノテーテドートが、また別のイルクを起動させているです。黄色いのです。急いだほうが良いですよ』


 えー、また? 

 まだやるのかよ。

 あの王様、赤いイルク取られてセルヲルにさんざん負けたばかりなのに、りないよなあ。


 なんかオレにうらみでもあるのか。今日初めて会ったばかりだろうに。

 やれやれと腰を上げた、次の瞬間だった。

 オレはまゆみたいな形のシートに包まれていた。


「あれ? オレはストアされたのか? ここは?」

『青いイルクの中です。乗って移動もできる用に、いま作り変えました。その方が楽なので』


 やる前に言えよな。驚くっての。

 マジで事前の確認とかしないのな、コイツ。

 オレが乗ると同時に、青いイルクは滑るように進んだ。

 スゴいな、振動もない。これもアピュロン星人の科学力か。


 オレは、ギトロツメルガの永久焔獄を壊そうと向かっているだけだ。

 だけど、ピンズノテーテドートは自分が追われていると思ったのだろう。

 多数の兵士に迎撃の態勢たいせいととのえさせている。

 そして、永久焔獄の外壁に繋がれた黄色のイルクのいましめをはずしていた。


「しかし、この世界は争いごとが起きた場合に、誰も話し合おうとかしないよなあ。どいつもこいつも、暴力で問題を解決するのが好きだよな」

『ですね。粗暴そぼうで困るですね』


 よその国の施設を破壊しようとしている自分のことは棚上たなあげにして、ボヤいているうちに、黄色いのから蒸気がき出した。手足がゆっくりと動く。


「あーあ、動き出したなあ」


 黄色いロボは、青いのとも赤いのとも違う形だ。

 というか、イルクベルクバルクってものは、どれもみんな形が違う。


 黄色いヤツは、金属の板をウエファースみたいに重ねた四角いかたまり

 えーっとなんて言ったっけ。そう直方体ちょくほうたいだ。

 人の形と言うか建設機械みたいな印象あるな。

 まてよ尻尾しっぽがある。変な造形ぞうけいだなあ。


「でもさ。どうして、あの王様は、わざわざオレにからんでくるんだろうな?」

『それは────』


 ピクトの言葉をさえぎるほどの、耳をろうする爆鳴ばくめいとどろく。

 この音といっしよに、いよいよ黄色いのがオレたちの方へすべってきたんだ。


『さて。あれも一撃で潰せますけど、壊していいんですか?』

「いやダメだって。イルクは、できるだけ壊すんじゃない。止めてくれるだけでいい。ラシナ氏族がイルクは自分たちの所有物だって言っているから、返してやりたいんだ。黄色いのはストアして動けなくするとかにしてくれ」


 さて戦闘だという、この時に青いロボの足元から〝おーいスエキチ〟とオレを呼ぶ声がした。

 え? こんな所で知り合い? 戦闘直前に?

 下を見ると見知った顔があった。

 登洞の弟、登洞健人だ。

 パトロアと戦っていたけど、ここまで攻めてきたのか。スゴいな。

 イルクを降りるとすぐに、健人がオレに話しかけてきた。


「ピンズノテーテドートは、オレらの仇だ。スエキチは手をださねぇでくれるか?」


 あれ? どうしてだろう。さっき見たときと健人の雰囲気が違っている。

 張り詰めているというか、思い詰めた顔つきになっていた。

 なにかあったのかもな。きっとピンズノテーテドートに関わることだよな。


「頼む」

「え? ああ、わかった。オレは黄色のイルクとだけやる」

「恩にきるぜ」


 イルクどうしの格闘戦にまきこまないよう健人から急いで離れる。

 陣地から飛び出した黄色のイルクが青のイルクを追ってきた。

 直進するスピードは、いままで見たイルクのなかでは、一番速いかもな。


「ピクト、連戦だけど戦えるのか?」

『エネルギー以外は、まったく問題ないですね。でも念のために、主は青いイルクから降りてもらいます』

「う?」


 気づいたら地面に座っていた。ストアで降ろされたのか。


「ピクトおいオマエはッ! だからストアやる前に知らせ……」


 文句を言おうとしたら、頭の上を影が通りすぎた。

 見上げたら、自分の真上で黄色のイルクが飛び跳ねて青いイルクを蹴っていた。


 あの大きさで、跳ねたりするのかよ。

 運動能力が他の機体とは桁違けたちがいだな。

 大きな塊が飛び出した余波よはで、土煙つちけむりとともに周りのゾンビがゴロゴロと転がる。

 頭上では、硬いものを打ちつけたような盛大な衝突音が木々の間に鳴り渡った。


 周りの兵士たちは、押し寄せる音の圧力に転がされているが、オレには大きな音としか感じられない。

 ピクトが音や圧力の大部分をストアしているからだ。


 黄色いヤツは、青い機体の上に、まだ立ったままだ。

 青いイルクのほうも、受け止めたまま静止している。


 しかし、ぜんぜん攻撃をけないよな。ピクトは。

 相手の技を受けてから返すとか、プロレスかよ。

 実際、青いイルクは蹴られても微動びどうだにしていないから、問題はないのかな?

 よく見たら少しも揺れないどころか、自分を蹴った黄色いヤツの足をつかんでいた。


「ピクト、オマエよく蹴った相手の足とか掴めるよなあ」

『カンタンですね。現地人とは操縦の技量が違うですよ』


 自慢気じまんげなのがしゃくさわるけど、あながち間違いじゃないのだろう。オレから見てもピクトの制御する青いヤツは、他のイルクより格段かくだんに動きが速いんだよな。


『動けなくしてから、ストアするですね』


 つかんだ黄色いイルクを、そのまま大きく振って────ギトロツメルガの壁へ打ちつける。

 爆発みたいな音と一緒に、黄色のイルクの手の先からいきなり得体の知れない液体が放たれた。

 液体が散かれるとツンとする薬品の臭いが、周囲に立ちこめる。

 空中に漂う琥珀色こはくいろの液体は、青の躯体くたいを濡らした瞬間に煙をあげだした。

 よく見たら周りのゾンビは、落ちてくる飛沫ひまつびたヤツからドンドン溶けているぞ。


「なぁ、ピクト。さっきからウチのが浴びている液体は、触れたら危険なモノじゃないのか?」

『ああ、だいじょうぶです。ただの溶解液ですし』

「ええ! 溶解液って金属とか溶かす薬剤だよな。そんなの浴びても平気なのか?」


 いや平気じゃないぞ、これ。オレはストアで無傷だけど、液体をモロに浴びている周りは地獄絵図だ。


『ハハハ。この機体にはまったく影響ないです。いま表面でケムリを立てているのは、汚れですしね。黄色いイルクは、ただウチの青いののボディを洗ってくれているだけですね』

「この機体は強度がスゴく硬いっていうかキズもつかないよな」

『感心したですか? でしょうね。ハハ。単分子の装甲ですからね。硬いですよ?』


 青いイルクの腕が回り、黄色い機体が壁に打ちつけられるたび、轟音が宙を打つ。

 やがて、黄色のイルクの機体はひび割れ────各関節からは閃光せんこうが四散し、胸が内側から膨らんで、割れた。


「黄色いイルクの身体から火花が弾けているぞ」

想定内そうていないですね。あとで修理しゅうりするです』


 目をむける間に、空間ごと黄色の全身が粉々に砕けた。



※ 〝雄黄〟のイルクベルクバルクの画像(線画)は以下に掲示。


https://kakuyomu.jp/users/0kiyama/news/16818093089940136345

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