ハッピー“バース”デイ

恥目司

9/9

※作者からのご注意


 こちらは内輪向けの、二次創作ではないけれど半ば二次創作的(?)な小説となりますので、タイトルやタグでピンとこない方は楽しめないかもしれない旨、あらかじめお断りしておきます。 


 9月9日 

 ある暴力団の組長が死んだ

 死因は老衰

 御年99歳

 その組長は天寿を全うした

 老齢ながらもその身体は全盛期とほぼ変わらない筋骨隆々だった


 同日

 とある病院の産婦人科で巨大児が誕生する。

 体重は9999キログラム、身長は99センチメートルと異様な大きさの新生児だった。

 母親は帝王切開による失血ショックで死亡した。

 父親の消息は不明。母親は藤堂を名乗っていた。


 ————————


 9月9日。

 菊の節句と呼ばれる日の夕方。

 私、藤堂桜華は鼻歌交じりでスキップをしていた。


「桜華ちゃん、ゴキゲンだね」

 隣を歩いていた新戸ちゃんはそう言った。

「そりゃそうだよ!!だって今日は私の誕生日だもん!!嬉しい以外ないでしょ!!」

 今年で9回目の誕生日。

 9回もやっているけど、やっぱり誕生日というのはいつまでも嬉しい。


 普段より桜華ちゃんのテンションが高いなと感じる新戸ちゃん。

 新戸ちゃんの顔もとても嬉しそうだった。

 そのまま、別れ道で新戸ちゃんと別れた。


「ただいまー!!」

 家に帰ると、何故かもうパーティーは始まっていた。

「あら、桜華。お帰りなさい」

「おう、帰ったか桜華!!」

 机の上には、たくさんの手巻き寿司やロールケーキが並べてある。

 

「あれ……?」

 机にお父さんとお母さんと、知らない男の人が座っていた。

 私が首を傾げると、お母さんは思い出したかのように男の人を紹介する。


「あっ、ごめんなさい。桜華は初めましてよね。この人は藤堂寺さんよ」

「初めまして、桜華ちゃん。藤堂寺丘助です」

 男の人は笑顔で小さく手を振った。

「この人は、お父さんの弟さんでね〜“おんみょうじ”をやってるそうなの」

「それで、どうしたの?」

「実は、この人も桜華と同じ誕生日なのよ」

「えー!?すごーい!!!!」

 お母さんの言葉に私はびっくりした。

 同じ誕生日の人がいるというのはよく聞くけど、それがまさか親戚にいたなんて!!


 すごいすごい!!と飛び回る私に、藤堂寺さんは言う。

「私も君と誕生日を祝えて嬉しいよ」


 ふと、嫌な胸騒ぎがした。

 藤堂寺さんと見つめあったからなのかは分からない。

 だけど、何か嫌な予感がした。


 すると、藤堂寺さんは突然、

「——来たか」

 と言って立ち上がる。


 ピンポーン。

 突然鳴り響く呼び鈴。

 藤堂寺さんはそのまま玄関へと向かう。

 不思議に思った私はその後ろをついて行った。

 

 玄関には多くの人がいた。

 普通の男の人や、私よりちょっと背の高いセーラー服の女の子。それだけじゃなくて玄関の扉をくぐってくるぐらい大きな男の人やキツネみたいな女の人、大きな赤ちゃんを抱えた大きな体の幽霊がいた。


 藤堂寺さんは、そんな人たちを見て笑顔になった。

「ようこそ、今日は私達の誕生日です。盛大に祝いましょう」


 そう言って、藤堂寺さんは玄関にいた人たちを出迎えた。


 みんな、おんなじ誕生日なんだ。

 すごい偶然。

 藤堂寺さんが歓迎しているなら別に悪い人たちじゃないみたい。

 人が多いほど楽しくなるし。


「桜華ぁー」

 お母さんの声が聞こえたから、私もリビングへと走って向かった。


——————————


「まさか、並行世界のいち人物……藤堂が一斉に介在している……とでも?」


「ああ、そういう事さ。ある世界では藤堂という人間は死に、ある世界では藤堂が産まれてくる……それがこの世界で一気に起きてしまってる」


「平行だった線が繋がったって事か」


「違う違う。平行した線の上を通るの世界が生まれたんだ。どの世界の藤堂が同時に存在するそんな世界が」


「藤堂バース……そう言いたいのか」


「ああ、だからこそ僕らは祝わないといけない。全ての並行世界を結びつけたこの呪いの世界を……

  ハッピー“バース”デイってね」

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ハッピー“バース”デイ 恥目司 @hajimetsukasa

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