#41 それぞれの戦い
「あがっ……くっ」
すると、ルーナ姫に異変が生じた。まるで水中か密閉された空間にいるかのにように苦しみ出したのだ。
「お前……何をした?」
「ハハハッ! なぁに、少しだけ悪戯をしたまでさ。さぁ、我々の仲間にならなければお姫様は死ぬぞぉ」
悪魔の商人はニヤケながらシェイクを見ていた。
シェイクはどうすればいいか悩んだが、頭の中である事を
彼はお姫様の抱き寄せるように密着した。そして、商人から背を向け、これみよがしにナイフを見せつけると、首元に近づけた。
「何をするつもりだ?」
商人の彼の行動には理解できかなったのか、首を傾げて尋ねていた。
「なぁに。苦しみから解放されるだけだ」
シェイクはそう言ってナイフを動かした。商人の眼にはルーナ姫の首元から血しぶきが出ているのが見えた。
「うぉおおおおお!!!」
「うほぉおおおお!!!」
一方、トレインとラリラリゴは肉弾戦を繰り広げていた。互いの拳が衝撃波となって、窓を全て叩き割っていた。
彼らの身体の節々にも拳の跡や掠ってできた擦り傷も垣間見えた。
「ふんっ!」
ラリラリゴがトレインの頬に命中させた。彼の顔面が歪むが、すぐに元に戻って同じように拳をぶつけた。
ゴリラはニ、三歩よろめいたが、どうにか態勢を立て直すと、激しく胸を叩いた。
「俺とここまで戦えたのはお前が初めてだ! 他の人間どもは俺の馬鹿力でなす術無く粉砕されていったからな!」
「喋れるゴリラとしてテレビに出ていたら、汚れ仕事以上の大金が得られたかもしれないのに……愚かなやつだな」
トレインがそうこぼすと、ラリラリゴの逆鱗に触れたのか、獣同然の雄叫びを上げて迫ってきた。
彼も負けじと大胸筋を叩いて走った。
人間の野生児と本物の野生児とのぶつかり合い――互いの拳は
「うごっ……」
「うほっ……」
両者、白目を向いて仰向けに倒れた。どれくらいの時間が経ったのか、先に目を覚ましたのはトレインだった。
「ほぅ、ふぅ、うぅ……か、勝ったぞーーー!!!」
トレインは嬉しそうにドラミングして勝利を祝福した。
「いぇい! ふぅっ! はぁっ!」
広間に軽快な音楽が流れる中、ダンシングキラーの巧みなナイフ捌きにプルーンは苦戦していた。
プルーンの手持ちにあったのはスキットルだけだった。ナイフや銃は彼の華麗な脚で遠くまで飛ばされてしまった。
「へいへいっ! 君、そろそろお疲れなんじゃないの? 無理にリズムに乗らずに楽になっちゃえよ!!」
ダンシングキラーはプルーンに蹴りをお見舞いしようとしたが、寸前でかわされてしまった。
が、すぐに拳で腕にドンッと一撃を与えた。
「ぐわぁ! あ、がっ、くっ……」
プルーンは悶絶した様子で片腕を抑えた。隙ありと言わんばかりに足の先で顎を蹴った。
彼は豪快にイナバウアーをして空中で一回転した後、強く地面に叩きつけられた。
「くぅ……」
プルーンは息もまともにできないのか、苦しそうだった。
「へいっ! 全然駄目じゃないか! 踊りのなってない奴はこのままフェードアウトしっちゃいな!」
ダンシングキラーは片脚をあげた。
「あぁ、お前がな」
プルーンはスキットルを彼の顔面に向かって投げた。
「ぶっ!」
勝利を確信していた彼はまんまと命中し、身体のバランスを崩した。
「そいっ!」
プルーンは足払いして彼を転ばせると、「おらぁっ!」と顔面を集中的に殴り続けた。
やがて、無反応になると、プルーンはよろめきながら立ち上がって銃とナイフを拾った。
そして、未だに流れ続けているラジカセに銃弾を数発お見舞した。
音は失速していき、不気味な音を立てて消えていった。
「……俺はポップスよりジャズ派なんだ。馬鹿野郎」
プルーンはそう愚痴をこぼすと、投げたスキットルを拾って歩き出した。
「あーえーおーえー!!」
クラッシャーは無数のミサイルの雨をアーモンドに振らせた。
アーモンドの足場は破壊兵器によってデコボコで、一歩間違えれば身動きできない状況だったが、彼の老齢ながら若者以上のたくましい筋力のおかげで、常人を超えた俊敏な動きで数多の兵器をかわしていった。
「おいおいおいおい、なんだよ。あのじーさん、やっぱり人間じゃねぇよ」
瞬殺を予想していたクラッシャーは、ここまで粘られることに予想外だったのか、サングラスをかけ直していた。
「おーーん、どうしよう……よし」
クラッシャーは何か思いついたのか、背中に背負ってある発射台のスイッチを強く押した。
すると、クラッシャーもろとも飛んできた。
「おーーーえーーーー!!! 俺様が直々に相手しに来たぜぇふぅーーーーー!!!」
クラッシャーは興奮した様子で、アーモンドに急接近してきた。
「うおっ!」
アーモンドは飛ぶように避け、豪速球のクラッシャーをかわした。
が、空中でUターンして戻ってきた。
「無駄だっ! 俺様の追撃からは誰であろうと逃げられないぜ! あーーえーー!!」
クラッシャーはそう叫ぶが、アーモンドは冷静に立ち止まり、呑気にシガーを取り出し咥えた。
「……悪いが、お前とのお遊びはおしまいだ」
そう呟いた瞬間、大爆発が起きた。その熱風で葉巻に火がつき、煙が出てきた。
実は彼が避ける時にピンを抜いた手榴弾を発射台の穴に入れておいたのだ。
そのことに気づかないクラッシャーはそのまま爆発の餌食になり、残骸と化してしまった。
アーモンドは燃え盛る瓦礫を鑑賞しながらシガーをふかしていた。
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