#39 殺し屋達との交戦
兵士長が魔王に斬りかかっている最中、傭兵達は廊下を駆けていった。
当然巡回らしき魔兵士に見つかったが、最高戦力を全て人間の排除のために使ってしまったからか、足止めと呼ぶに wで、たった拳一発で撃沈してしまった。
「あの商人、どこにいやがるんだ?」
プルーンが愚痴をこぼすように背中に背負っているラムの位置を揺さぶって整えた。
すると、どこからともなく陽気な音楽が流れてきた。
この緊迫した状況に音色と不釣り合いな時々曲の合間から聞こえてくる「いぇーい」などといった掛け声で相手が誰か分かった。
しかし、それでも進めると、広間に出た。
ここは魔物達で舞踏会を開く場所になっていたが、今は一人の男が床にラジカセを置いて、キレのいいダンスを傭兵達に見せた。
すると、ラジカセの音楽が止まった。
その男は「ようこそ、魔王城へ。ここから先は誰も通さんって言ったほうがかっこいいか?」と陽気な喋り方で聞いてきた。
「ダンシング・キラーか」
シェイクがそう呟くと、彼は「おーう、もしかして俺のこと知っている感じ? そりゃそうだよねー! だって、前にも会ったことがあるからーーー!! アハハハハハ!!!」と急に吹き出して腹を抱えていた。
「ふん、あの野郎の相手には俺がお似合いだな」
プルーンはそう言って、アーモンドにラムを預けた。
「よし、先に行けっ! このダンシングバカとは俺が相手してやるっ!」
「おーう? 面白い! 一対一のダンスバトル……サイコーにエキサイティングするじゃないか!」
ダンシングキラーはプルーンの控え室に乗り気で、ゴールド達をあっさりと通してしまった。
「酔いがまわって踊りに誘われるなよ」
シェイクは彼の背中をドンッと叩くと、走って行ってしまった。
「さてと……俺のダンスは他の奴らとはちょっとばかり違うぜ……覚悟しな」
プルーンはポケットからスキットルを取り出すと、蓋を開けてグイッと飲んだ。
「ほほーう、それは楽しみだ」
ダンシングキラーの瞳が怪しく光った。
ゴールド、アーモンド、シェイクは中庭に出た。
庭とは思えないほど広大だったが、草木が一本も生えていなかった。
「なんだよ。ここ」
「無駄に設けられた場所としか思えないな」
「たぶん次の所まで走れば三十分はかかるな」
「あぁ、最高のジョギングだな。クソッタレ!!」
野郎三人組は愚痴をこぼしながら走っていると、どこからともなく、爆発が起きた。
それは傭兵達の真横だったので、爆風に巻き込まれて飛ばされてしまった。
「ぬあっ?!」
「なんだよ、クソッ! こんなクソ忙しい時に!」
そんな事を言いながら立ち上がると、「あーえーおーえー! おうおうえー!」とこれまたテンション高めな声が聞こえてきた。
「上だ! 上にいるぞ!」
シェイクが叫んで指差すと、上空に人型のロケットが彼らを見下ろしていた。
「ミサイル・クラッシャー!」
アーモンドが奥歯をギュッと噛んだ。
「あーえー! よう、お前らっ! 随分数が減っているみたいだが、まさか俺の兄弟達がやってくれたのか?!」
クラッシャーは嬉しそうに手を叩いたが、アーモンドが「絶賛交戦中だ、馬鹿野郎!」とゴールドにラムを任せて、筋肉を膨張させた。
「よーーし、お前の相手はこの俺だ。ふんっ!!」
アーモンドはそう言って自分の筋力だけでクラッシャーの飛行している位置まで飛んだ。
「なっ?!」
さすがに彼も油断したのか、アーモンドの接近を許してしまった。
「おらっ!!」
アーモンドはクラッシャーの顔面に一撃をぶつけた。
ヒュルルと二人とも落下していった。
その隙にシェイクとゴールドは先を急いだ。
アーモンドは綺麗に着地したが、クラッシャーは真っ逆さまに落ちてしまった。
首をゴキッとなるかと思ったが、鍛え上げられた上腕二頭筋のおかげで態勢を立て直すことができた。
「おーえー……お前、人間じゃないよ」
「それはこっちのセリフだ」
アーモンドがクラッシャーに突進した。
彼も背中に背負ってある発射台から無数のミサイルが放たれた。
背後からミサイルの爆発音が聞こえる中、クラッシャーとゴールドはどうにか新たな塔へたどり着いた。
この塔は建設時期が古いのか、少しヒビ割れていたり、苔の繁殖範囲も多かった。それに一歩間違えれば崩落してしまいそうなほど危うい雰囲気を漂わせていた。
周囲に魔兵士や魔物がいないか確認しながら進んでいった。
「おい」
「あぁ、なんかいるな」
ゴールドとシェイクはただならぬ気配を感じたらしく、視線をより一層強くさせた。
「……シェイク」
「なんだ」
「ラムを任せられるか?」
「……分かった」
二人は手早くラムを受け渡しすると、ゴールドは銃とナイフを構えた。
「頼んだぞ」
ゴールドにそう言われたシェイクは「あぁ」とだけ返して運んでいった。
ゴールドは静かに立っていると、背後から気配を感じた。
サッと見ると眼鏡をかけた背広姿の男が立っていた。
「やはり、お前か。スーツマン」
「久しいな。ゴールド」
スーツマンは片手にポケットを突っ込んだまま眼鏡をクイッと上げた。
「お前もここに来ていたのか」
「あぁ、商人を殺すためにな」
「そうか……ここは俺には合わないな」
「だろうな。そのパリッと決まったスーツもここじゃあ浮いているぞ」
「ビル街に紛れ込むには打ってつけなんだけどな……まぁ、いいや」
二人の間に沈黙が流れた。
そして、ほぼ同時に発砲した。
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