#30 侵攻
シェイクは戦乱のヘーマッタ王国の城を出た。
すると、そこにはさらなる異常な事態が起きていた。
ハーモネッタ王国の兵士達が侵略しに来ていたのだ。
傭兵達が数を減らしたおかげか、ヘーマッタ王国側の兵力は弱っていた。
「おや、お前達は」
すると、ハーモネッタ王国のバルサーマ兵士長が傭兵達の方へ近づいてきた。
「姫は無事に救出できたのか?!」
「いや、魔王城に連れていかれたぜ」
プルーンにそう事実を告げると、バルサーマは「ま、魔王城だと?! そんな馬鹿な……」と顔を青ざめていた。
「このままだと姫は魔物と結ばれることになってしまう。そんなのは駄目だ。我が国の跡取りが魔族の子だなんて……そんな事が国民に知られたら、たちまち反乱を起こし……」
「おい、兵士長さんよ」
顔面蒼白で呟いている兵士長にプルーンが声をかけた。
「ブツブツしているところ悪いんだけどさ、おたくのドラゴン、帰ってきていないか?」
「ドラゴン? いや、見ていないが……まさかそいつも連れ去られたなんて言わないだろうな」
「あぁ、その通りだ。恐らくドラゴンに乗って魔王城へ向かったんだろう。たぶんその時にお姫様も連れてな」
兵士長の顔がますます青ざめていった。
「あぁ、どうしたらいいんだ。手ぶらのまま国に帰ったら縛り首どころじゃ済まされないぞ」
兵士長は膝から崩れ落ちて嘆いていると、ゴールドが「じゃあ、馬を貸してくれないか。王国のギルドに行きたいんだ」と頼んだ。
兵士長は「馬? それは構わぬが……ギルドに行って何をするつもりなんだ」
兵士長が訝しむように見つめると、シェイクは「お前の国に所属しているギルドの職員達に魔王城へついて行くように頼むんだ。もし姫を救出したあかつきには『勇者』の称号とお姫様との結婚。さらの一生遊んで暮らせるだけのお金を授ける……なんて上限付きでな。どうだ? 悪くないだろ?」
そう説明すると、兵士長は腕を組んで唸った。
「……分かった。すぐに手配しよう」
兵士長はそう言うと、どこからかラッパを取り出して、天まで届くくらい吹いた。
「誰か! 転移魔法が使える者はいるか!」
兵士長が呼びかけると、「私が」と手を上げたのは可憐なドレスを着た女性だった。
「よし、彼らはギルドから魔王討伐と姫救出の求人を出すつもりなんだ。君の転移魔法でハーモネッタ王国まで案内してくれるかい」
兵士長の命令に可憐な女性は「分かりました」と丁寧にお辞儀した。
彼女は木の棒でササッと大きめの図形を書くと、「どうぞ!」と手招きしてきた。
人懐っこい笑顔に傭兵達は何の疑いもなく図形の中に入った。
「それではいきますよ……
可憐な女性が叫ぶと、辺りは光に包まれた。
「ぬぉっ?! なんだこれ?!」
「眩しい! 眩しいぞ!」
「おい、本当に着くんだろうな?」
傭兵達はブツブツと文句を言った。
が、光は容赦なく傭兵達を包み込んでいった。
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