#24 勇敢な戦い
「ゴールド!」
アーモンドが加勢しようと試みるが、押し寄せる兵士の大群に対処しなければならず、彼は止むも得ず、長年連れ添った相棒を見捨てた。
しかし、彼もまた数の暴力には勝てる事はできなかった。
彼は一発一発重みのある一撃をかましていたが、ある兵士がボウガンを放った。
それがアーモンドの右肩に突き刺さり、動きを後退させた。
すると、ある兵士がボウガン兵達を呼ぶように伝えた。
その伝令から数分も立たないうちに、ボウガン兵達勢揃いした。
「今、ここで降伏すれば命だけは助けてやる」
兵士の一人がそう言うが、アーモンドは「お断りだ」と刺さった矢を引き抜いた。
「放て!」
兵士の言葉がそう言った瞬間、ボウガンが彼らに襲いかかった。
アーモンドはもろにくらい、大胸筋から血の雨が出ていった。
「ふっ……ぐぅおおおおお!!!」
アーモンドは自身の筋肉を膨張させて、刺さった矢を落とした。
そして、怪物のごとき咆哮を上げながらボウガン兵達の方へ突進していった。
しかし、矢は
「放て!」
また第二の矢がアーモンド達に降り注いだ。
アーモンドはまたしても身体中に矢が刺さったが、彼の本能が生きたいという意思を持っているのだろう。
再び筋肉を膨張させて、矢を落とした。
「あいつ、人間じゃないです」
兵士の一人が怯えながらそう言うが、巨人兵士は「ならばこれだ」と血まみれになったプルーンを見せていた。
「ぐっ?! ぷ、プルーン……」
仲間が瀕死状態な事に驚いていた。
一方、ラムは兵士の一人の首絞めが終わった後、アーモンドやゴールド達が危険な状態になっている事に気づいた。
すぐに加勢しようとしたが、背後から何者かに拘束されてしまった。
「誰……!!」
彼女の視界にメイが立っていた。
「さぁ、こっちに行きましょう」
メイは軽々とラムを持ち上げると、そのまま窓を突き破って行った。
シェイクはナイフを使って兵士達を蹴散らしながら違和感を覚えていた。
(あまりにも強すぎる)
一人一人がアーモンド並の屈強な筋肉を持っていたり、俊敏性もゴキブリ並に早かった。
この国の兵士は常人とは思えないほどの鍛錬を積んでいるのだろうか。
(まさか劇薬……?)
ふとヨーカン大統領が言っていた『世界のパワーバランスが壊れるほどの劇薬』を思い出した。
もし仮にその劇薬が兵士達に使われていたら、さすがの傭兵達も苦戦を強いられる。
シェイクはそう思って、仲間達の方を見ると、悲惨な状況になっている事に目を見張った。
ゴールド、アーモンド、プルーンは瀕死。
ラムは行方不明。
唯一まだ激戦を繰り広げているトレインだったが、膨大な数の兵士達に体力を消耗していた。
(くそっ、このままだと全滅する)
そう感じたシェイクはもう一本ナイフを構えて、二刀流で兵士達に戦いを挑んだ。
最早怪物と化した兵士達に情け容赦なく、兵士の腕を切り落としたり首を跳ねたりして、兵士の数を減らしていった。
(まずは動けるやつを優先的に)
シェイクは二者択一でトレインを助けることにした。
トレインは今にも気絶しそうなくらい拳を振るのにも限界が来ていた。
危うく突き刺さりそうになったが、シェイクが間一髪で首をはねた事で殺されずにすんだ。
「ありがとう、シェイク」
「お礼を言ってい暇はない。行くぞ!」
シェイクとトレインは瀕死状態のゴールド達を助けに行った。
しかし、第三の矢が放たれていた。
ゴールドの頭にボウガンの矢が刺さった。
アーモンドは胸部だけでなく目や腕に刺さってしまった。
プルーンは地面に棄てられた後、トドメとばかりに後頭部に刺さってしまった。
「あ……が……」
三人とも息も絶え絶えといった様子だった。
「ゴールド! アーモンド! プルーン!」
シェイクは彼らの名前を呼びながら切りかかった。
彼の存在に気づいた巨人兵士がボウガンの矢を彼らの方に向けた。
しかし、シェイクは二つのナイフをブーメランのように投げていった。
その刃はボウガン兵達の首をはねていった。
目の前で斬首されたのを見て、たちまちパニックになる兵士達。
その状況を利用してトレインが落ちていた剣を持って彼らに斬りかかった。
投げたナイフはシェイクの方に戻り、彼は巨人兵士に突進した。
強敵だと直感した巨人兵士は目にも止まらぬ速さで拳を振った。
しかし、シェイクによってその豪腕な手首がストンと落とされてしまった。
「はがぁあああああ!!!」
巨人兵士は失った手首を見て絶叫していた。
その一瞬の恐怖歪んで何も動けない瞬間をシェイクは逃さなかった。
まずは手始めに下半身を連撃させて身動きを封じてシェイクと同じ目線にさせた後、両手を巨人兵士の双眸に突き刺した。
「あ、ばばばば……」
巨人兵士はたちまち彷徨う亡者みたいになったが、シェイクが後頭部を掴んで首を掻っ切った。
血しぶきが彼の身体に飛び散り、地面にゆっくりと倒れていった。
すると、背後に潜んでいたボウガン兵が彼の後頭部を狙おうと定めていた。
しかし、瞬時に殺気に気づいたシェイクは振り向いて投げた。
トスッとボウガン兵の眉間に突き刺さり、バタンと倒れた。
シェイクはすぐにボウガンを拾うと、残りの兵士達に撃った。
ある兵士が喉を突き刺さっていた絶命した。
トレインは剣を振り続けていたが、さらなる増援が来てしまった。
皆、どれもボウガンを持っていた。
「うぉおおおお!!!」
「よせ、トレイン!!」
シェイクがそう呼びかけるが、トレインは野生の力により理性を失っているのか、両手に剣を構えたまま突っ込んでいった。
ボウガン兵達は号令によって一気に無数の矢が放たれる。
トレインは何本か剣でなぎ倒されてしまったが、既に装填済みのボウガン兵がすぐに入れ替わって放った。
今度は全身に突き刺さり、トレインは悲鳴を上げた。
「トレイン!」
シェイクはナイフを構えながらボウガン兵に突っ込んでいった。
しかし、第四の矢が放たれてしまった。
トレインの肉体に
彼はゆっくりと膝から崩れ落ちた。
「トレイン……くそぉおおおおお!!!」
シェイクの怒りは最高潮に達した。
二本のナイフを駆使して第五の矢を弾き返した。
急接近し、ボウガン兵を手当り次第に斬りかかった。
列を乱されたボウガン兵達シェイクの猛撃に狼狽したが、兵士の一人が「怯むな!」と叫ぶと、彼らもそれに伴ってボウガンを剣に持ち替えて斬りかかった。
大勢の兵士対一人になってしまった傭兵の戦いが始まった。
ゴールド、プルーン、アーモンド、トレインは彼が激闘を繰り広げている間にある兵士にトドメを刺されて、絶命してしまった。
そんな状況を知ってか知らぬか、シェイクはクールな表情とは打って変わって感情的に叫びながらナイフを振り回していた。
兵士の首は飛び、腕が落ち、肉片が飛び散る。
兵士達は国のためだと逃げることなく果敢に挑んだ。
シェイクのナイフは次第に切れ味が悪くなり、腕も鈍くなった。
しかし、仲間の敵討ちだと底力で彼らに切りかかっていく。
そうこうしていると、また増援がやってきた。
傭兵達に襲い掛かってきた時よりも倍以上の人数だった。
圧倒的な数にシェイクは顔面蒼白になる。
すると、その隙を狙って兵士の一人が彼の脇腹を刺した。
それが決定だとなって、シェイクの動きは完全に止まってしまった。
だが、彼は底力を発揮して、刺されても挑もうとした。
しかし、今度の武器はボウガンではなくガトリング砲だった。
無数の銃弾の雨がシェイクに襲い掛かってくる。
シェイクは防弾チョッキを付けてはいるが、正面からもろに喰らえば、覆っていない部分にあたるのは当然の結果だった。
彼の腕、目、頭、脚に被弾した。
シェイクの手からゆっくりとナイフが落ちた。
「トドメぇええええええ!!!」
ある人の号令に兵士達は一斉に剣を突き刺した。
シェイクの口から血が滴り落ちる。
兵士達は一気に引き抜くと、彼の胴体から血がブシャーと溢れ出ていた。
「ぐむむむむ……」
シェイクはナイフを投げて兵士の一人を仕留めるのに精一杯でまた無数の銃弾を浴びせられてしまった。
彼の意識は遠のき、膝から崩れ落ちた。
こうして、野郎五人衆は異世界の兵士達の手によって始末された。
兵士達は侵入者を仕留められたことに喜んでいた。
その間を割って入るように出てきたのは、ヘチーマ第一王子だった。
「アハハハハ! これが悪魔の力を手に入れた我が国の力だ!」
ヘチーマがそう叫ぶと、兵士達は「悪魔の商人、バンザイ!」「悪魔の商人、バンザイ!」と悪魔の商人を三唱する声が地獄みたいな空間に響きわたった。
To Be Continued……。
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