#23 死闘

 シェイク達は城内を突き進んでいった。

 しかし、だからといって、メイドや執事、王族関係者などに危害をくわえるつもりはなかったので、万が一そういう人達に出くわした場合、気絶させるなどをして、先へ進んでいった。

 ヘーマッタ王国の城はかなり複雑なつくりをしていた。

 例えば、ある階段を登ると、一つだけしか部屋に繋がっておらず、閉じると衣装部屋だった。

 仕方なく戻ろうとしたら階段へと続く道は閉じられてしまった。

「どうする?」

 シェイクが問う。

「ネズミ取りじゃあるまいし、必ず出口があるはずだ」

 プルーンはそう言って衣装部屋を掻き分けたりしていた。

 他の傭兵達も部屋内を隈なく探した。

 隅から隅まで。

 すると、ラムがあるドレスが外せないことに気づいた。

「ねぇ、これ」

 彼女は彼らにそのドレスを見せると、アーモンドが「もしかしたらそれが鍵かもしれないな」と言って、ドレスを手に取り、押したり引いたりした。

 が、ビクともしなかった。

「これは一体何なんだ。まさか瞬間接着剤でくっつけたなんて冗談じゃないだろうな」

 アーモンドが眉間に皺を寄せると、ゴールドが「そうか」と何かひらいた。

「どうしたの?」

 ラムが聞くと、彼は「押しても引っ張っても駄目なら着ればいいんだよ」と言って、ラムとドレスを指差して言った。

「私?」

 彼女は目を丸くした。

「サイズあうかな」

 ブツブツ呟きながらも少し乗り気で野郎五人衆に向こうを見るように言った。

「どれどれ……あぁ、なんか変になっちゃった」

 ラムは舌打ちした。

 男達は振り向くと、実に奇妙な格好をしている彼女を見た。

 ドレスの袖だけ通していて、衣服は変わらず軍服のまま。

「それ着替えたって事になるのか」

 プルーンが呆れた様子でそう言うと、ラムは「えぇ、でも、そもそもこのハンガーから外せないから仕方ないでしょ」と今更知ったことでどうにもならない事をこぼした。

 しかし、どういう奇跡か、カチッと何かが開く音がした。

 早速入り口の方を見ても変わっている様子はなかった。

 ならば、強行突破だと六人全員銃を乱射した。

 あたり一面銃弾の雨が降り注ぎ、天井がボロボロになる。

 その衝撃は凄まじく天井から悲鳴が聞こえてきた。

「もしかしたら上に誰かいるかもしれないぞ」

 トレインが言った。

 男達は肩車をして頭突きをすると、すんなりと天井が穴が空いた。

 エッサホイサと進んでいき、上の階にいたのは兵士達の待機場だった。

 そこに銃弾を撃ってしまったのだから、大混乱だった。

 血まみれになって助けを呼ぶ者。

 震えて何もできない者。

 亡霊みたいにヨボヨボと歩き出す者もいた。

 傭兵達はどうすべきか困惑していた。

「とにかく悪魔の商人だ」

「あと、お姫様もね」

 傭兵達はそう結論に至り、走り出した。


 騒ぎを聞きつけたのだろう、兵士がわんさか出てきた。

 ドラゴンと対峙した兵士達の残党が彼らを見た途端、震えて泣いてしまった。

 しかし、兵士としてのプライドが彼らを鼓舞させ、剣を持って突き進んだ。

 傭兵達は銃を構えながら進んでいった。

 発砲したが、彼らが身につけている銃弾によって弾かれてしまった。

 仕方なく銃をしまって、己の拳で戦う事にした。

 トレインは兵士二人に片腕で戦った。

 一人の兵士が剣を振り下ろしたら、トレインはそれを受け止めてデコピンで返り討ちにし、もう片方の手で剣士の巧みな剣さばきに対応していた。


 ラムは兵士の顔面に飛び蹴りをして、背後にいた彼らを後退させると、得意の関節技で太ももを兵士の頭に挟ませた。

「ぶぎゅ、ぐぎぎぎ……」

 兵士は必死に抵抗しようとしたが、彼女の筋肉から逃れる術はなく、窒息してしまった。


 プルーンは酩酊めいてい状態だったが、兵士三人を相手に肉弾戦を披露した。

 しかし、あまり意識がしっかりしていないからか、殴られたり蹴られたりしていたが、彼の鼻から鼻血が出ようが、嘔吐しようが構わずにやり返した。

 だが、その中にニメートルはありそうな兵士が立ちはだかった。

 巨人兵士はプルーンの頭ウィ片手で掴むと、ドストレートパンチでめり込ませた。

「ふぎゅ……」

 プルーン危うく撃沈しそうになったが、ジャケットからスキットルを取り出すと、それを飲もうとした。

 が、巨人兵士に取り上げられてしまった。

「お前に与える水分補給はない」

 巨人兵士はニヤリと笑うと、蓋を開けて全部飲み干してしまった。

「俺の……俺のウィスキーーーー!!!!」

 プルーンは楽しみに取っておいたウィスキーを奪われてしまった事に憤慨し、自分の肉体が奮い立つのが分かった。

 巨人兵士に頭部を掴まれたまま半回転した後、蹴りで巨人兵士の脇腹を狙った。

「ぐっ……」

 巨人兵士は少し効いたのか、手を放してしまった。

 それがプルーンにとって最大の攻撃チャンスだった。

 プルーンは足払いで巨人兵士を転ばせた後、馬乗りになって殴りかかろうとした。

 が、彼はそう簡単に寝そべるような奴ではなくムクッと起き上がると、頭突きした。

 プルーンは「くそったれがぁああああ!!」叫びながら拳を振った。


 ゴールドは剣の達人と思われる兵士達に囲まれていた。

 一人の剣士が振り上げると、ゴールドはそれを片腕で受け止め、逆に剣を奪って斬った。

 他の兵士達はひるんだが、自国を守らなければならないという状況で勇気のリミッターは解除され、雄叫びを上げながら突っ込んでいった。

 ゴールドは剣を受け止めて弾き、斬って受け止めて弾いてと繰り返し、兵士達を返り討ちにしていた。

 しかし、絶命したと思われる兵士の一人が小さなナイフを取り出すと、隙だらけの彼の脇腹に突き刺した。

「ぐっ?! ぬぐ……」

 それが彼らに大きな隙を与えてしまった。

 兵士達は絶好にチャンスとばかりにゴールドの肉体に剣を突き刺していった。

 まるでおもちゃみたいに次々と刺さっていき、ゴールドの肉体には無数の剣が自身の身体に突き刺さっていた。

 その光景は処刑だった。

 ゴールドの瞳の光が消えていった。



To Be Continued……。

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