#16 死闘
ゴールドがそう叫んだと同時にまた窓ガラスが割れた。
今度は銃弾ではなく、床に手榴弾が転がった。
「
ゴールドの叫びと共に傭兵達は一斉に離れた。
ルーナ姫と共に部屋を出た瞬間、激しい衝撃と砂埃が迫ってきた。
傭兵達は姫を連れて廊下を進んだ。
背後を見てみると、砂埃が漂う中に人のシルエットが浮かんだ。
シェイクは「ラム! トレイン! アーモンド! お姫様を外へ! 残りはあいつを仕留める!」と銃を構えた。
ラムは若干不満そうな顔をしたが、緊急事態なので、特に抗議する訳でもなくアーモンドと一緒に廊下を進んでいった。
シェイク、ゴールド、プルーンはサプレッサーを外して砂煙の方を向いた。
シルエットが段々大きくなり、メイが姿を現した。
シェイク達は一斉に発射されたが、まるで全ての銃弾を避けているかのようにかわしていった。
あっという間に接近を許してしまい、メイは「とりゃっ!」と足蹴りして正面にいたプルーンをふっ飛ばした。
すかさずシェイクがナイフで彼女に斬りかかるが、あっさりかわされてしまった。
メイがシェイクの顔面目がけて拳を振ったが、彼もサッと首を横に振ってかわし、反撃の鉄拳をくらわした。
メイはそれを片手で受け止めると、背中に忍ばせておいた小型のナイフを取り出した。
瞬時にゴールドの首を狙うも、その前に腕を掴まれ、引っ張られてしまった。
メイはそれを逆に利用して、彼と肌を密着させると背負い投げをして筋肉老人を床に叩きつけた。
序盤に吹っ飛ばされたプルーンが「酔いが醒めたぜ」と言ってムクッと起き上がり、加勢した。
ゴールドもすぐに起き上がり、三対一となったがメイは一切動揺する事なく「
シェイクが首と腹を狙って拳とナイフの二刀流を試みる。
が、メイは片腕でナイフをはらい、もう片方の手のひらで彼の拳を受け止めた。
拳を掴んで引っ張ると、背後から飛びかかろうとしてきたゴールドに向かって投げ飛ばした。
二人は仲良く重なっていた。
プルーンはファイティングポーズをとって挑発した。
メイはそれに乗ったかのように飛び蹴りをした。
プルーンは吹っ飛ばされる前に彼女の脚を掴んだ。
が、メイはもう片方の脚を軸にしてまるでコンパスみたいにグルンと回った。
「うぉっ?!」
油断していたプルーンは立ち上がったシェイクとゴールドの方に飛ばされていた。
二人はプルーンを受け止めるが、巨石級の重量を持つ彼が相手だとさすがに立ったまま出来ずに尻もちをついてしまった。
メイはその隙を逃さず、膝立ちしていたプルーンの背中を蹴っ飛ばして、野郎三人衆のミルフィーユが完成した。
「アハハハ! 大したことないね。これでも世界最強の傭兵軍団なの?」
メイが嘲笑っていると、背後から「大したことないのはお前だ」と渋い声が聞こえてきた。
メイはハッとなって振り返ると、アーモンドとトレインが立っていた。
二人とも殺し屋との戦いに疼いているのか、大胸筋をピクピクさせていた。
「へぇ、言ってくれるじゃない」
メイは嬉しそうに笑っていた。
「いくぞ! うぉおおおおお!!!」
アーモンドは雄叫びを上げながら突っ込んでいく。
メイは華麗に飛翔し、彼の角刈りを踏み台にして背後に回った。
トレインが突っ込んでくるが、サッとしゃがんで二人を足払いさせた。
「ほらほら! 来い来い来い!!」
メイは挑発すると、トレインが立ち上がって背後から拳を振った。
が、メイにガシッと掴まれて背負い投げされてしまった。
筋肉付きすぎたせいで、起き上がるのに時間がかかってしまったアーモンドはトレインの巨石を避ける事ができなかった。
が、見事に受け止めると、すぐにゴールド達に加わった。
そこそこ広めの廊下に五人の傭兵と一人の殺し屋――両者共に殺気立っていた。
傭兵達は再び銃に持ち替えた。
銃口はもちろん彼女に向けられる。
メイは小型のナイフを拾うと、彼らに向けるように構えた。
たちまち発射される銃弾の雨。
それをナイフで弾く。
「くそっ、あいつバケモンかよ!」
プルーンが舌打ちをしながら撃つ。
「アハハハッ!! 全員揃ってマヌ――」
しかし、激戦は幕を閉じた。
背後にいたラムが酒瓶を殴った事で、彼女は気絶した。
「……全くあなた達は可愛い子に甘すぎるのよ」
ラムはそう言ってメイの尻を蹴った。
メイが目覚めた時には椅子にグルグル巻きにされていた。
「なぁっ?! この、ぐ、このっ……」
メイがジタバタ暴れるが、ラムは「無駄よ」と両腕を組んだ。
「お前の隠し持っていた武器は全て押収した」
シェイクはそう言って、彼女から少し離れた所でナイフや小型の銃などの武器を見せつけた。
これにメイは怪訝な顔をした。
「まさか……身体検査したの? えぇ……変態?」
メイは軽蔑な眼差しで野郎五人衆を見たが、ラムに「殺し屋に言われたくないわ」と頭を叩いた。
「さて……お前は悪魔の商人に雇われているな?」
シェイクが尋ねる。
メイはフンッと鼻で笑った。
「そうよ。港でドローガーと劇薬の取り引きがあるからそれの護衛をしてほしいって……かなりの額の前払いをもらってね」
メイは開き直ったのか、ベラベラと喋っていた。
「……で、その劇薬はあるのか?」
「あるよ」
メイはすんなり白状した。
「でも、無駄ね。悪魔の商人が持っているから。彼、絶対に離さないの。自分の商品に関しては絶対にね……」
メイは尋問中だというのにニヤニヤしていた。
アーモンドは眉間に皺を寄せながら腕を組んだ。
「悪魔の商人は誰と取り引きするつもりなんだ?」
「それは……うーん、内緒♡」
なぜかそれだけは言わずにメイはウインクした。
ラムは彼女の頬に一発殴った。
「ヘラヘラして……白状しないとその可愛い顔をズタズタにするよ」
ラムはメイが持っていたナイフを持って彼女に向けた――その時だった。
「魔物だーーー!!! 魔物の襲撃だーーーー!!!」
外が騒がしくなった。
「魔物の襲撃?」
ゴールドが首を傾げると、メイが鼻で笑った。
「お前、何か仕組んだのか?」
シェイクが尋ねると、メイは口角を上げた。
「何の準備もせずに突っ込むと思う?」
彼女がそう言った途端、窓からゴリラが突っ込んできた。
体長二メートルぐらいある本物のゴリラは人間みたいに革のジャケットと長ズボンを履き、首からバナナ柄のネクタイを締めていた。
ゴリラは縛り付けられた彼女を椅子ごと持ち上げると、「返してもらうぜ」と人の言葉を話して別の窓を突き破った。
To Be Continued……。
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