#15 がばっぼぼぼぼぼぼ!!!
「がばっぼぼぼぼぼぼ!!!」
ドローガーは水の張った大きな桶の中には無理やり頭を突っ込ませていた。
「どうだ? そろそろ悪魔の商人の居場所を言う気にはなったか?」
アーモンドがドローガーの頭を強く抑えながら腕をトレインとゴールドに掴まれて、自力で起き上がれないようにした。
「よし、そろそろ素直になったかな」
アーモンドはそう言って男の顔を上げた。
水面から上がったドローガーの顔はビショビショで、青白くなっていた。
ようやく地上の空気が吸える事が堪らなく嬉しいのか、過剰に呼吸していた。
「おら、さっさと吐くんだ。悪魔の商人はどこにいるんだ?」
「がはっ……ばはっ……がはっ……ごほっ、ごほっ……じ、じら……じらない」
「どうやら素潜りが好きみたいだな」
商人の居場所を知らないと言ったドローガーは再びアーモンドの手によって、桶の水へとダイブした。
ちなみにこの水は屋敷の近くに併設された馬小屋から頂戴した馬糞を惜しげもなく投入した水で、近くに寄るだけで鼻がひん曲がりそうなほど悪臭を放っていた。
ドローガーは何度も自害を試みようとした。
が、この拷問を受ける前にトレインに無理やり口を開かさせ、奥歯にはまっていた毒入りカプセルを取り出されてしまったので、それが不可能である事を思い出し、断末魔のごとく叫んだ。
アーモンドは気が済むまで馬糞水を漬けさせた後、再び頭を掴んで上げた。
今度は体内に入ってしまったのか、酷く咳き込んでいた。
その様子を遠くから見ていたラムは「自業自得ね」と呟いた後、ルーナ姫の手当てを再開した。
救急箱を携帯していたラムは箱から包帯と綿を取り出した。
彼女はドローガーが所持していたアルコール度数の高い酒で彼女の傷を消毒させた後、濡らした綿で汚れを拭き取り、包帯でグルグルと巻いた。
ルーナ姫はマフィアのボスに受けた暴行のせいで気が沈んでいるのか、黙っていた。
彼女が見つめる先には拷問を受けているドローガーだった。
何度も馬糞水をつけたり放したりしている様子を見ていた彼女の口角が少しだけ上がったように見えた。
「は、話すから……話すから……ゲホッ、ゲホッ……こ、これ以上は……止めてくれ!!」
ドローガーはもう我慢の限界だったのか、泣き叫びながらアーモンドに訴えていた。
「よし、いいだろう」
アーモンドそう言って、ドローガーを椅子に座らせた。
万が一何か不審な動きをしようものならすぐに発砲できるようにプルーン、トレイン、シェイクが銃を構えていた。
ゴールドは中だけでなく外も異常はないか、カーテンの隙間からチラチラと監視していた。
「さぁ、話してもらおうか」
アーモンドはシガーを口から離して、豪快に息を吐いた。
ドローガーは呼吸を整えたあと「あ、悪魔の商人はここにはいない」と荒っぽく答えた。
「あぁ、何となく分かっているさ。大騒ぎしているのに出てこないんだからな……それよりも、あのおかしな女神に連れて来てもらったんだろ? あの時、悪魔の商人は何をしていたんだ?」
アーモンドの質問にドローガーは
もう自害して真実を闇の中に葬るという選択肢を失った彼は寂しそうに奥歯を舌で触った後、深く溜め息をついた。
「悪魔の商人は女神を口説き落として、俺達をこの世界のどの場所に拠点を置くかという選択肢を与えてくれた。
彼は何の躊躇もなくこの村を選んだ。思えば、近くにオークが住んでいる森があるから選んだのだろうが、彼は女神にお前達が来たらその森にぶちこみように命じたんだ。あの女は素直に応じたよ。何の疑いもなくね」
ドローガーはそう言って一呼吸入れた後、再び話し出した。
「さらにそれだけじゃない。お前達がこの世界に到着した際、俺達よりも一週間、時間をずらすように仕向けたんだ」
傭兵達は驚きを隠せなかった。
つまり、女神は商人やドローガー達を守るために傭兵達を未来に飛ばしたのだ。
「本当、やっぱり殺しておくべきだった」
ラムが恨みのこもった声で呟いた。
「続きを」
ゴールドが催促すると、ドローガーは彼らの反応が嬉しいのかヘヘッと笑った。
「たかが一週間だと思うが、悪魔の商人の力は凄まじかった。この村に御殿を建てたら、すぐに近くの国に行き、城内に通じる内通者を作らせた」
「ロートだな」
シェイクが答えると、ドローガーは「そうだ」と笑った。
段々馬糞水の臭いが薄れてきたのか、舌がまわるようになったらしい。
ドローガーはさも自慢気に続きを話した。
「内通者が国の事や城の内部を伝えると、商人は姫を誘拐するように命じた」
「なぜだ?」
シェイクが尋ねる。
その問いにドローガーは不気味に笑った。
これにプルーンが腹立って、彼の禿げ上がった後頭部を叩いた。
「この野郎、ヘラヘラしやがって……さっさと答えろよ!」
「落ちつけ。プルーン」
アーモンドがポンと肩を叩くと、ドローガーの頭を掴んだ。
そのまましゃがみこんで耳元で囁いた。
「あいつのことだ。何か企んでいるだろ。言え」
「ヘヘッ……誰がおまがぼぼぼぼぼ!!!」
ドローガーが鼻で笑うと、アーモンドはすぐに馬糞水を彼の頭に突っ込ませた。
今度はしゃぶしゃぶみたいに瞬時につけるのではなく、すきやきのようにじっくり煮込んだ。
しかし、時間が経って感覚がリセットしてしまったのか、ドローガーは初めて漬けたかのように暴れていた。
今度はアーモンド一人で押さえ込むと、勢い良く顔を上がらせた。
ドローガーの顔は再びグシャグシャになった。
「さぁ、良い子になれたかな?」
アーモンドはそう尋ねると、ドローガーは「で、でかい取り引き! でかい相手取り引きするんだ?」
「デカイ取り引き? 一体何なんだ、それは?」
「えっと、それは……」
ドローガーそれを言おうとした瞬間、窓ガラスが割れ、彼の額銃弾が貫通した。
当然即死で、ゆっくりとうつ伏せになった。
「なっ……おい、どういうことだ?!」
アーモンドを含め、傭兵達が困惑していると、外を見張っていたゴールドが叫んだ。
「メイだ! 殺し屋が来たぞ!」
To Be Continued……。
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