#14 イージーミッションだったな
傭兵達は無言で頷くと、銃を構え外の様子を伺った。
夜は明けたばかりだからか、まだそんなに人気もなかった。
しかし、まるで影が独りでに歩いているかのように黒服の男達が見回りをしていた。
黒服の一人がバンドームに気づくと「おい、今日はやけに早いな。どうしたんだ?」と聞いてきた。
その間、シェイクは銃の発砲音を抑制するサプレッサーを取り付けた。
さすがに違和感に気づいた黒服は「荷物を確認させてもらう」と言って、大きなテントみたいに張った荷台に近づいてきた。
シェイクの他にもサプレッサーを付けると、どの方角から来てもいいように配置して構えていた。
黒服らしき足音が近づいてくる。
サッと隙間が出た瞬間、シェイクはそこじゃらサプレッサーを男の胸に向けて引き金をひいた。
トシュッと静かな発砲が聞こえたのち、黒服は「うっ」と
他の黒服に気づかれないよう、すぐさまトレインが回収して、荷台の中に入れた。
「進め」
ゴールドが銃を突きつけながらそう言うと、バンドームは「はい」とか細い声で応じた。
バシッと馬の尻を叩くと、荷馬車は再びゆっくりと進んでいった。
根城に近づくまでの間、傭兵達はサプレッサーの銃で次々と見回りの黒服達を撃っていった。
急所にあたっているからか、特に騒がれる事もなく、まるで的あてゲームの駒みたいにバタバタと倒れていった。
運が傭兵達を味方してくれているのか、村人達が黒服の大量死を目撃する人はいなかった。
いや、中には窓から目撃している者もいたかもしれないが、村人達の脅威が消え去っていたので、見てみぬふりをした。
あまり黒服の姿が見かけなくなった頃、この村の中で一番の屋敷が姿を現した。
一般の村人の家の三軒分はあるのではないかと思うくらい広大な土地を持っていた。
建物も城並に立派で、車寄せにはいかにも成金が好きそうな金色の女神像や噴水などが設置されていた。
当然巨大な門の前には黒服二人が立っていた。
「どうした、バンドーム」
黒服の一人が男を睨む。
「ぼ、ボスに早急にお届けしたいものがあって参りました」
バンドーム汗びっしょりの顔でそう言うと、黒服はジッと男の顔を見た後、「入れ」言って門を開けた。
荷馬車が入るくらい大きな道を進み、大きな出入り口の前に黒服が二、三人立っていた どうやら屋敷内に荷物を運ぶ係らしく、すぐさま荷物を運ぼうと荷台の方に近づいてきた。
傭兵達はギリギリまで接近を許して、目と鼻の先まで縮まった瞬間、トシュっとほぼ同時に三人を撃った。
黒服達は声も出さずに倒れた。
噴水の音が掻き消してくれたおかげか、門番の耳には届かなかった。
傭兵達は全員が事切れたことを確認すると、荷台から慎重に降りていった。
「お、俺はもうお役ごめんだろ?!」
バンドームは手綱を握りながら叫んだ。
「あぁ……運転、ご苦労だったな」
アーモンドがそう言うと、彼のこめかみに向かって撃った。
見事に命中し、彼は叫び声も上げる暇もなく倒れていった。
「別に殺さなくてもよかったんじゃ?」
トレインがそう聞くと、アーモンドは「マフィアに捕まったら裏切り者扱いされて、死よりも辛い拷問をジワジワとあたえて殺されるぞ。むしろ感謝してほしいぐらいだ」と自分の行いを正当化した。
大扉は開いていた。
傭兵達はゆっくりと開けて中の様子をうかがった。
豪華なシャンデリアと広すぎるエントランスを見たラムが「悪趣味」と呟いた。
ゴールドを先頭に中を進んでいった。
奇妙な事に黒服の姿はあまりいなかった。
たまに鉢合わせしたのをトシュっと始末するだけで、激しい銃撃戦は起こらなかった。
メイの姿も見かけなかった。
傭兵達は違和感を抱きつつもマフィアの親玉であるドローガーと囚われの姫を探す事に集中した。
周囲の警戒を怠らずに階段を上っていくと、どこからともなく馬鹿みたいに大きな笑い声が聞こえてきた。
傭兵達は声のした方へ進んでいくと、大扉を見つけた。
見張りがいないことを確認してドアまで接近した後、耳をあてて中の音を聞いた。
「ダハハハハハ!!! ほれほれ! もっと頑張れ!」と叫ぶ男の声とパシッパシッと空気を切るような音が聞こえた。
「いやぁああああああ!!!」と悲鳴を上げる女性の声も彼らの耳に入ってきた。
ここにドローガーとルーナ姫がいる――そう直感した傭兵達は三つ数えてから扉を蹴破った。
「動くな!」
「騒ぐんじゃねぇ!」
「大人しくしろ!!」
傭兵達が一斉に銃を向けた。
銃口の先には、半裸状態の紫髪の女性が手脚を縛られていた。
所々傷だらけで、目に涙を浮かべていた。
その近くにムチを持ったハゲ頭の男が口をポッカリと開けて、傭兵達を見ていた。
当然ボスがいる部屋に黒服達が大勢待機していたが、呆気に取られてしまったからか、銃を構えるのを忘れていた。
それが仇となり、傭兵達に先手を取られ、ドローガーの部下はあっという間に
「な、ななななななんだ、お前達は?!」
ドローガーは動揺しているのか、声を震わせていると、プルーンに左脚を撃たれてしまった。
「あがっ?! くっ……」
彼の脚から血が流れ、動きを止めた。
その隙を見て、ラムがルーナを保護した。
「さぁ、お楽しみの時間といこうか」
アーモンドはそう言ってシガーに火を付け、不敵な笑みを浮かべた。
To Be Continued……。
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