#7 こいつ、なんかおかしいぞ
ちなみにソーユパーティーが所持していた剣や杖は反撃防止のためゴールドが預かっていた。
同行中、シェイクはタバコに火をつけようとしたが、猫耳少女が近くにいるため、控える事にした。
「お前、名前は?」
「え? あ……ふぁ、ファニーです」
猫耳少女は突然話しかけられたからか、ドギマギしながら答えた。
「そうか……で、お前は?」
シェイクは続けて白いローブの方にも名前を聞いた。
彼女は若干緊張した様子で「ピューラです」と名乗った。
シェイクは続けて彼女に質問した。
「お前達はなぜあの豚の怪物がウジャウジャいる所に来たんだ?」
「えっと、あの……報酬のためです」
「報酬? 誰かに雇われているのか?」
「えぇ、まぁ……そんな感じです」
「確か……あの男が『ヨータルギルド』に所属しているとか言っていたな」
シェイクがソーユを指差して聞いた。
「はい、そうです」
「ギルドっていうのは組合みたいな所だろ。怪物の討伐なんかするのか?」
「えっと……もしかして知らないんですか?」
「まぁ、初めて来たからな」
「そうですか……ギルドというのは、あらゆる依頼を請け負う組織の事です。私達はそこに登録して、与えられた依頼を行います。そして、それが達成したらお金や物品などの報酬を受け取ります」
「まるで俺達みたいだな」
「あなた達もその……ミンカングンジガイシャ? という所に所属しているんですか?」
「あぁ、傭兵としてな」
「よ、傭兵ですか?!」
急にピューラが声を上げたので、ラムが「何騒いでいるの?」と立ち止まって睨んだ。
ピューラは怯えた顔をして「い、いえ、オークを倒せる傭兵がいるなんて初めてだったので、つい……」と弱々しい声で言った。
「オーク? それがあの豚野郎の名前か」
プルーンがそう言うと、ピューラは「相手が誰だか分からないで戦っていたんですか?!」と目を丸くした。
「急に襲い掛かってきたからな。血統書を確認する暇もなかった」
シェイクは表情一つ変えずに淡々と答えていた。
その彼の態度にピューラは戦々恐々したのだろう、震えた手で杖を強く握りしめていた。
「わ、私達をどうするつもりですか?」
「さっきも言っただろ。大人しく案内してくれれば何もしない」
シェイクはそう言ってピューラの顔を見た。
彼女の顔は変わらず青ざめていた。
そうこうしていると、ゴールドが突然「止まれ」と腕を上げた。
その合図で一同立ち止まった。
「どうしたの、ゴールド」
ラムが尋ねた。
ゴールドは「誰か双眼鏡を持っていないか」と後ろを見ずに手だけ出して言った。
「あるぜ」
プルーンがジャケットの内ポケットから小さめの双眼鏡を取り出すと、ゴールドに手渡した。
「あら、酒以外にも所持品あるのね」
ラムが皮肉を込めてそう言うと、プルーンはお返しとばかりに「風呂場にいるねーちゃんを覗くためだよ」とアンダージョークをかました。
ラムは無視した。
ゴールドは双眼鏡を覗いて向こうの景色を見ていた、
レンズでは、城を含めた建物が栄え、多くの人々が入り乱れていた。
「あそこがハーモネッタ王国か?」
ゴールドが聞くと、ソーユは「あぁ、そうだ」と頷いた。
「ところで、お前らは門番をどう切り抜けるつもりだ? 俺達みたいに武力行使すればたちまち応援を呼ばれてお縄だぞ」
ソーユはそう言うが、ゴールドは「心配するな」と双眼鏡を外して笑みを浮かべた。
城門はかなり厳重に調べられていた。
とはいっても、傭兵達から見たら軽い荷物チェックと何しに来たのかなどの質疑応答といった空港の出国審査みたいだった。
ソーユ一行と傭兵達がギュッと固まるように列に並んだ。
門番の一人がソーユを見て、「お前は確かヨータルギルドに所属している……」
「ソーユです」
彼がそう答えると、門番は「出国した時よりも人数が多くなってないか?」と当然の質問をしてきた。
すると、ラムがファニーの尻をポンッと叩いた。
猫耳少女はヒャンと声を上げた後、「オークと戦っていて危なくなった時に助けてくださって……えっと、その、この方達が……」と傭兵達の方を見て言った。
門番は傭兵達の顔を一人一人見た後、「お前達は何しに来たんだ?」と尋ねた。
「観光だ」
シェイクがそう答えると、門番が「危険なものがないかチェックさせてもらう」とさらに二、三人呼び寄せて傭兵達の所持品検査を行った。
当然傭兵達から銃やナイフが出てくるが、皆護身用であると突っ張った。
門番達は納得したが、ある門番が「おい、これはどうやって身を守るんだ?」と銃を見せて聞いてきた。
「投げるんだ」
トレインがジェスチャーしながら答えた。
すると、門番は「なるほどな……」と手遊びするかのように銃をいじっていた。
「じゃあ、こんな感じで守るのかな」
門番は傭兵達と同じ構え方をして彼らの方に向けた。
まさに間一髪だった。
銃弾が発射する寸前にシェイクが体当りした。
発砲音が鳴り響いたが、銃は上を向いて、誰一人あたる事はなかった。
この音は周囲を驚かせるには充分で、辺りは騒然となった。
シェイクは発砲した門番の身動きを封じた。
しかし、暴れる門番にアーモンドが彼の手首を足でグリグリやって銃から手を離した。
「おい、何をやっているんだ!」
すると、そこへ事情を知らない兵士長がやってきた。
「おたくの兵士に敵国のスパイが紛れていたので、捕まえておきました」
ゴールドの堂々たる振る舞いに兵士長は「……名前は?」と尋ねた。
「ゴールドです」
兵士長は彼の名前を聞いた後、深く頷き、シェイクの方を見た。
「……兵士を取り抑えているのは、君の仲間か?」
「はい」
「そうか……」
兵士長は何かを考えるように腕を組み唸った後、「あそこで暴れている奴を捕まえろ」と指差して言った。
兵士達が門番の方に向かい、シェイクとアーモンドから引き渡された。
「くそっ! あともう少しだったのに! 離しやがれ!」
門番は抵抗したが、大勢の兵士に拘束されたせいか、そのまま連れて行かれてしまった。
「ゴールド……だったね。少し話があるんだ。付いてきてくれないか」
兵士長はシェイク達の方も見た。
「できれば、仲間達にも」
「分かった」
ゴールドは頷くと、シェイク達の方にも目配せした。
もちろん彼が言いたい事は分かっていたので、黙って取り上げられた銃を自分のポケットにしまった。
そして、兵士長達と一緒に入国する事になった。
完全に忘れ去られたソーユとファニーとピューラは、口をあんぐりと開けて彼らの後ろ姿を眺めていた。
To Be Continued……。
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