#6 名を名乗れ、黒髪童顔男
黒髪童顔男、猫耳少女、白いローブを着た女性――突如として現れた三人組に彼らはある判断を迫られていた。
一般市民かそうではないか。
仮に前者であった場合は、武装を解除する必要がある。
後者の場合は……大体は想像がつくだろう。
シェイクは真っ先に彼らの外見を観察する事にした。
男一、女二の比率の三人組は実に奇妙な身なりをしていた。
男の方は王国の騎士を彷彿させるかのように頑丈そうな鎧(頭以外)を装備していた。
(腰には剣を携えている所から察するに、あの男は一般市民の可能性は低い。
しかし、隣にいるあの少女はどうだろう。
まだら模様の短い丈のパンツに、胸部だけを隠しただけを抑えた簡易的な身なりは、完全にハロウィンパーティのコスプレそのものだった。
その隣にいる白いローブを着た木の杖を持っているだけで、とても実戦経験者とは思えない)
シェイクはそう考察し、仲間達に「ただの一般市民だ」と告げた。
「確かにあんなおかしな身なりをした奴らが俺達を狙うとは思えないな」
トレインは納得した様子で銃をしまった。
しかし、黒髪童顔男が「お前らの方こそ、おかしな身なりをしたがって!」と鞘から剣を抜いた。
ギラリと光る刃は玩具ではなく本物の煌めきだった。
すぐに剣の
「や、やめなよ、ソーユ! この人達、普通じゃないよ!」
猫耳少女が傭兵達のただならぬオーラに野生の勘が働いたのか、男を止めようとした。
「うるせぇ! もしこのまま大人しくしていたら、殺されるかもしれないだろ!」
黒髪童顔男ことソーユは罵声に近い声で猫耳少女に喝を入れると、「お前らは何者なんだ?! 山賊? 盗賊? 荒くれ者か? どっちだ!」と叫んだ。
「それをそっくりそのままお返しする」
アーモンドが銃の標準をソーユの頭に定めて言った。
ソーユは「俺達はハーモネッタ王国ヨータルギルドに所属しているソーユEランクパーティだ」と名乗った。
「ハーモネッタ王国? 聞いたことない国だな」
ゴールドがすぐに反応した。
「さぁっ! 俺達は名乗ったぞ! 次はお前達の番だ!」
ソーユはそう言って剣をシェイクの方に向けた。
さらに緊張が高まる中、ゴールドが「俺達はアメリカ合衆国民間軍事会社『
「クロス……ペンタクル? 何だそれ。初めて聞いたぞ!」
ソーユは怒りに近い声で言った。
「それはこっちのセリフだ! デタラメな事を言いやがって! 本当の事を話せ!」
プルーンが唾を吐き飛ばす勢いでソーユを責め立てた。
これに黒髪童顔男は我慢の限界に達したのか、「そうか……よく分かった! どうやらお前達は新手の山賊らしいな」と言って剣を構え直した。
その瞬間、シェイクが彼の手元に銃を一発撃ち込んだ。
「うきっ?!」
当然ソーユの手から剣が離れた。
「ソーユ!」
「ソーユさん!」
猫耳少女と白いローブの女性はすかさず助けに行こうとしたが、すでにラムが背後に回って頭部に銃を突きつけた。
「長生きしたいなら、大人しくした方がいいよ」
ラムが鋭い声で言うと、まるで従順なペットみたいに立ち止まった。
「さぁ、お前はどうする?」
シェイクがそう聞くと、黒髪童顔男は「わかった。降参だ」と膝から崩れ落ちた。
すぐに男女に分かれて、所持品チェックを行った。
男達はソーユの身ぐるみを剥がして、不審なものがないかチェックした。
「この鎧……重量あるな」
シェイクは胴体の部分をアーモンドに向かって投げた。
アーモンドは片手で受け取って重量を確認していた。
「これは本物の金属で作られているな」
「間違いか?」
「あぁ、前に趣味で来た事があるから間違いない」
アーモンドはそう言ってシェイクに投げ返した。
そこへ猫耳少女と白いローブの検査を終えたラムが戻ってきた。
「どうだった?」
ゴールドが聞くと、ラムは「ちょっと奇妙な事が」と怪訝な顔をした。
「なんだ?」
「あの子……」
ラムは猫耳少女の方を指差した。
「ハロウィン浮かれ少女がどうかしたのか?」
「それが……あの猫耳と尻尾、本物なの?」
「なんだと?!」
プルーンが驚きの声を上げた。
「そんな訳ねぇだろ! よく出来た作りものじゃないのか?!」
「何度も確認したわよ。けど、毛並みといい、触った時の感覚といい。私が買っている猫……ゴホン、とにかく本物みたいによくできていたのよ」
ラムが真剣な眼差しで説明した。
トレインが「お前が見間違えるはずはないし……でも、だとしたらあの子は何者なんだ?」と首を傾げた。
「先程襲い掛かってきた豚の化け物といい、猫の耳が生えているといい……俺達は夢の中いるのか?!」
プルーンが髪の毛一つない頭を苛立ったようにかいた。
シェイクは下着一枚のソーユの所に近づいた。
「……ソーユだったな?」
「あぁ、なんだ」
「お前の出身はどこだっけ?」
「ハーモネッタ王国だ」
「よし、そのハラヘッタ王国……」
「ハーモネッタ王国だ」
「あぁ、そこまで案内しろ」
「……断ったら?」
ソーユが挑発的な態度で聞くと、シェイクが銃を突きつけた。
「頭をふっとばす事になる。そんなのは嫌だろ?」
シェイクの目線が猫耳少女達の方を見た。
彼女達はすでに着替えを終えていて、心配そうに見えていた。
すると、ソーユの表情が変わった。
「彼女達には手を出すな」
「……お前の返答しだいだな」
シェイク含めた男達はその気はなかったが、わざとそのような雰囲気を出した。
王国に案内させるために。
ソーユはまんまと策にはまり、「分かった。案内するよ」と頷いた。
シェイクは『してやったり』と不敵な笑みを浮かべて、彼を立たせると、急いで着替えさせた。
「さぁ、お散歩の時間だ。ソーユ」
シェイクは銃を突きつけながら歩くようにジェスチャーした。
彼は屈辱的な顔をしながら猫耳少女と白いローブ達の所へ行き、一言二言話した後、付いてくるようにと言って歩き出した。
To Be Continued……。
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