#5 肩慣らしぐらいにはなったな

 プルーンはというと、片手にスキットルを持ったまま銃でオークを撃っていた。

 オークが彼に近づこうものなら、どの方角でも急所だけを狙って即死させていた。

「あーあ、俺よりデカイなんて羨ましいぜ! こんちくしょうめ!」

 プルーンはオークの秘部を見ながら愚痴をこぼし、背後から振り下ろした棍棒を見ずにかわすと、振り返ってパンッとオークの眉間に一発命中させた。

「……ケッ、お前の死に顔だけじゃあ、酒のつまみにもなりやしねぇ」とブツブツ文句を言いながらクイッとあおって、プハッと口元を拭った。

 アーモンドは槍で攻撃するのは飽きたのか、拳でオークと戦っていた。

 オークの二メートルの巨体にも負けず劣らずの体格を持っている彼にとっては良いトレーニング相手だった。

 しかし、相手オークの動きが単調過ぎるにか、アーモンドは子供を扱うように小馬鹿にした態度でかわすと、鳩尾みぞおちに一発ぶつけた。

 オークは「ぶぎょっ?!」と悲鳴を上げて倒れた。

 これに対抗意識を燃やした三体のオークが棍棒を捨てて、アーモンドに戦いを挑んだ。

「三対一か……少しは楽しめそうだな」

 アーモンドはニヤッと笑うと、ファイティングポーズをとった。

 両者互いに何もせず、探っている状態だった。

 が、オークの一体がアーモンドに向かって拳を振るった。

 しかし、彼はそれを受け止め、グイッと引っ張ると、膝でオークの腕を脱臼させた。

 すかさず二体のオークが攻撃を仕掛けるが、アーモンドはサッと強靭な腕でオークの拳を受け止め、オークの顔面に反撃の一撃をかました。

 そして、最後の一体の拳も華麗にかわすと、オークの喉を手刀でトンっと叩いた。

 すると、オークは呼吸困難に陥ったのか、苦しそうに一歩、二歩、後退していった。

 アーモンドは顔面をぶつけたオークの腕を掴んで、窒息死寸前のオークを投げ飛ばして、ドミノ倒しをさせた。

 すると、脱臼したオークが片腕を駆使して立ち上がった。

 アーモンドは「大したやつだ」と感心した様子で頷くと、オークは咆哮を上げながら外れていない方の拳で彼に襲いかかった。

 しかし、アーモンドはヒラリとかわすと、もう一本の腕を掴んで同じように蹴って脱臼させた。

 そして、勢い良く顔面を膝で蹴り飛ばした。

 シェイクは銃だけでなく、ナイフの使い手だった。

 たった一本のナイフでオークの腕を切り落とし、身体のバランスを崩させた後、脚を切ってガクンと彼と同じ目線になった。

 その瞬間に喉元を掻っ切った。

 ナイフの性能がいいのか、それとも彼の実力なのか、はたまたその両方か――どちらにせよ、彼の刃はオークの血と脂まみれになっていた。

 超人的な速度で迫ってくるオークの腰を移動しながら裂くだけでなく、中にある腸や臓器をドゥロロロと地面に取り出した。

 これにはオークも即死で、シェイクが鼻で笑ってしまうほど倒れていった。

「ブボォオオオオオオ!!!」

 すると、オークの親玉らしきものが現れた。

 通常のオークよりも倍近く大きくて、棍棒樹齢100年は経ってそうなほど太くて大きかった。

 この怪物の出現にラムとプルーンは驚いていたが、シェイクは表情を一切変えずにナイフをもう一本取り出すだけだった。

 そして、何の躊躇いもなく走った。

 巨大オークも彼を仕留めようと迫ってきていた。

 最初に仕掛けたのは巨大オークだった。

 大きな棍棒を振って、彼をペシャンコにしようと試みた。

 しかし、彼の速度では巨大オークの攻撃はあまりにも遅いらしく、ヒョイッと軽くジャンプしてかわすと、大きな棍棒の上に乗って、極太な腕を登っていった

 これに巨大オークは驚き、蚊を叩くような動作で彼を潰そうとしたが、またしても同じようにかわされ、階段でも上るかのように別の腕を上っていた。

 これに巨大オークは冷静さを失い暴れたが、時既に遅く、シェイクはもうオークの肩に乗って、剥き出しの牙を掴んで落ちないようにバランスを保っていた。

「さてと……最後に言い残した事はあるか?」

 シェイクがナイフを巨大オークのこめかみに向けながら聞いた。

「ブボォオオオオオオ!!!」

 オークは悔しそうな声を上げて叫んでいた。

「ありがとう。褒め言葉として受け取っておくよ」

 シェイクはそう言って、オークのこめかみにナイフを刺した。

 たちまち断末魔を上げる巨大オーク。

 シェイクは暴れ出す前にまるで穴掘りみたいにナイフを刺したり出したりを繰り返していると、大きな穴ができた。

 仕上げにトドメの一突きをすると、巨大オークは白目になった。

 少しの間よろめきながらバランスを保っていたが、完全に事切れたのか、大きく傾いた。

 シェイクは落ち着いた様子で飛び降りると、残党の方へ向かった。

 親玉を失った事で、オーク達はたちまち恐怖のドン底に落ちていったのか、尻尾を巻いて逃げ出してしまった。

「逃さん」

 シェイクは目にも止まらぬ速さでオーク達の進行方向に向かって走った。

 そして、一体も残さずに腹を裂いた。

 オークの死骸が無数に転がっている森の中。

 彼らは他にも生き残りがいないか探したが、一体も見つからない事を確認すると、武装解除した。

「……ふぅ、こいつらは何なの?」

 ここで、ようやくラムがオークの事について聞いた。

「さぁ? 熊かと思ったが顔は豚っぽいし、やたら筋肉ムキムキだし……謎だな」

 アーモンドは口寂しさに木の枝を咥えながらオークの頭を眺めていた。

「ぬぁんじゃこりゃあああああ!!!」

 すると、男の叫び声が聞こえてきた。

 この声に傭兵達は一斉に銃口を同じ方向に向けた。

 その先にいたのは黒髪童顔の男と白いローブを着た女性、あとは猫耳の女の子だった。


To Be Continued……。

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