#4 身体が鈍っていたから助かったぜ

【異世界・某森】


 傭兵達が目を覚ましたのは、鬱蒼とした森の中だった。

「いつつつ……どこだ、ここ?」

 トレインが立ち上がって鼻をクンクンと嗅いだ。

「う〜ん、蜂蜜の香りがするという事は、近くに蜂がいるな……って、うおっ?! 目の前にあった!」と一人で大盛り上がりしていた。

 そんな中、ラムは「ああああ!!」と叫んでいた。

「あの女! やっぱり『悪魔の商人』達とグルだったんだ! 私達をこんな所に連れて……あの時殺せばよかったんだ」

「冷静になるんだ、ラム」

 アーモンドがナイフでやや太めの枝の先を削りながらなだめた。

「恐らくあの扉は女神やつにしか開けられなかったし、それ以前に出てこなかったと思う」

「……確かに私があの女を絞め上げていた時は扉なんてなかった……じゃあ、あの女はわざとか弱い女を演じていたってこと?」

「かもな」

 ゴールドはそう言って自分に合う木の枝がないか、探していた。

 ラムが歯切りするぐらい悔しい表情をしていると、プルーンはスキットルを軽く振って、まだある事を確認した後、グイッと飲んだ。

「……で、どうすんだよ。おれぁ、このままキャンプするつもりはねぇぞ。帰って妻としこたま抱かないと……」

「おい、静かにしろ」

 プルーンが下品な話をしている時に、軽く森の中を散策していたシェイクが彼の話を止めた。

 アーモンドは何かを察したのか、シャっと豪快に削って槍を完成させていた。

 トレインは蜂の巣を抱えたまま真剣な顔で視線をしきりに動かしていた。

 ゴールドは自分好みの太めの木の枝を二本拾うと、無表情だが眼光を鋭くさせていた。

 プルーンは飲ん兵衛の顔を止めて、若干鼻を啜った後、銃を構えた。

 ラムも一丁だけでなく二丁持って、周囲を警戒した。

 傭兵達の間に緊迫した雰囲気が漂う中、突然ズシンズシンと地響きがした。

 通常の人間ならば、『なんだ?! なんだ?!』と騒ぎたてるかもしれないが、彼らは静かに息を潜めた。

 森の奥から現れたのは、推定二メートルのオークだった。

 豚みたいな顔に肥満ではあるが筋肉質な体躯たいくで、豪腕で大きい手には丸太みたいな棍棒を持っていた。

 衣服は着ておらず、ラムは誤ってオークの秘部を見てしまい、「きも」と吐きそうな顔をした。

 それがオークの逆鱗に触れてしまったのか、「ブォオオオオオ!!!」と咆哮を上げて迫ってきた。

 ズシンズシンと響く中、アーモンドが「どれ、お手並み拝見といこう」と槍を投げた。

 そのスピードは弾丸に負けず劣らずの速度で、オークの頭部をもいで、ドンッと地面に刺さった。

 頭を失ったオークの胴体はフラフラと歩いた後、ドスンと倒れてしまった。

「うん、良い肩慣らしだった」

 アーモンドは投げた方の肩を回しながら刺さった槍を取りに行った。

「なんだ。拍子抜けじゃない」

 ラムがハァと溜め息を吐くが、ゴールドが「いや、まだ終わっていない」と二本の棍棒を構えた。

 彼の読み通り、オークが一体、また一体とゾロゾロと出てきて、何体ものオークの群れが彼らを囲っていた。

 どのオークも荒っぽく呼吸をしていて、棍棒をドンッドンッと叩いた。

「どうやら彼らの縄張りに入ってしまったみたいだな」

 トレインがチクチクと刺す蜂を追い払いながら言った。

 すると、プルーンは「おもしれぇ、誰に喧嘩を売っているのか、見せつけてやろうぜ」とニヤッと笑った。

 両者、緊張感が高まる中、槍を取りに来たアーモンドはオークの近くにいた。

 当然今にも襲い掛かりそうな雰囲気を放つオークに彼は「やぁ、お嬢さん。良かったら一緒に踊らないか?」と言って、再び槍を持って足を突き刺した。

「ブオオオオ!!!」

 オークが森中に響き渡るくらい悲鳴を上げた瞬間が開戦の合図となった。

 皆、棍棒を振り上げながら迫って来た。

 これにラムとシェイクが銃弾でお迎えした。

 オークの一体が手に命中して棍棒を落とした。

 そして、眉間に当たり、ドスンと倒れた。

 ゴールドは二本の棒を使って、オークの棍棒を防いだ後、飛翔して頭を殴った。

 オークは若干バランスを崩した。

 ゴールドはその瞬間を見逃さず、二本の棍棒を組み合わせてオークの頭を叩き潰した。

 しかし、一体倒したからといって終わりではない。

 今度は二体同時にオークが攻撃を仕掛けてきた。

 ゴールドは再び一本ずつ両手に持ちかけ、二体のオークの棍棒を受け止めると、フンッと弾き返した。

 その反動で二体のオークは吹っ飛び、後方から走っていたオークとぶつかって倒れた。

 トレインはオークみたいに雄叫びを上げながら蜂の巣を持ってオークの頭にダンクした。

 見事にはまり、オークは中で無数の蜂達に攻撃されているのか、断末魔みたいな悲鳴を上げながらやたらめったらと棍棒を振り回していた。

 その攻撃は他のオークに当たったりしていた。

 散々大暴れした後、オークが倒れた。

 トレインは倒れたオークから棍棒を奪うと、頭を巣ごと思いっきり潰した。

 当然蜂達が集団で彼に襲いかかったが、馬鹿でかい咆哮で全蜂達を気絶させた。

 しかし、背後からオークの棍棒の一撃を食らわされてしまった。

 が、トレインは筋肉の鎧を纏っているおかげか、何事もなかったかのように棍棒を振って、背後にいるオークのバランスを崩した後、再び潰して、二本目の棍棒を奪った。

 ラムはオークの接近を許してしまっていた。

 恐らくオークの好物であるラムの女体に鼻息を荒くしていた。

 これにラムは殺意を剥き出しにて「そんなにヤリたいのならお望み通り……」と言ってわざと寝転んだ。

 これにオーク達は大歓喜し、何体ものオークが彼女に群がった。

 が、ラムが仕掛けた罠だった。

 彼女はオーク達に手脚を抑えつけられていたが、想像つかないような怪力でオーク達を振り払った。

 その勢いは爆発したような衝撃で、たちまち吹っ飛んでいった。

 これにオークは森の奥へ走った。

「逃げんじゃないよ。私に襲い掛かってきた奴らの顔は二度と忘れないし、生きて返さない」

 ラムはそう言って、逃げようとするオークの頭目掛けて鉛球なまりだまをぶち込んだ。

 貫通だったらしく、オークはバタバタと倒れていった。

 だが、他のオークは諦めていないのか、再び彼女に向かって突進してきた。

 ラムも対抗して同じ方向に走ると、ジャンプして、オークの頭に肩車するように脚に巻き付いた。

 乗られた方のオークは苦しそうに暴れる中、ラムはオークよりも目線が高くなったおかげで、頭を狙いやすくなったのか、近づくオークの眉間に狙いを定めて発射した。

 オークは次から次へと倒れていき、ラムはこれに愉快と感じているのか、猟奇的な声を上げて笑っていた。


To Be Continued……。

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