#2 女神と名乗る女性を尋問する

「私の名前は……」

「おいおいおい、どういうことだ?!」

 女神と名乗る女性が自己紹介する前に、スキンヘッド筋肉飲ん兵衛が叫んだ。

 プルーンだ。

「どこかに連れて行かれたのは間違いないな」

 筋肉老人はそう言って腕を組んだ。

 ゴールドだ。

 彼の言葉にプルーンは怒った。

「連れて行かれたってどこに?! あと、俺がさっき飲んでいたウイスキーはどこにやったんだ?! ちくしょうめ!」

「ガタガタ言わないで。ただでさえ訳が分からない状況なのにどうしてあんたの発狂を近くで聞かないといけないのよ」

 長身細長短髪美女が耳を塞ぎながら舌打ちをした。

 ラムだ。

「お前ら、落ち着くんだ。とにかく冷静になるんだ。焦ってしまったら、満足にトイレにも行けなくなるぞ。ちなみに俺はちょっと漏れてしまったが……」

 スキンヘッドタンクトップであるトレインは自慢の大胸筋を踊らせながらラムとプルーンの間に入っていた。

 そして、シェイクはツルツルの頭を擦りながらこの状況を理解しようとしていた。

「大丈夫か、シェイク」

 そこへ角刈りムキムキ老人が話しかけてきた。

「……アーモンド!」

 シェイクは彼がこの場にいる事に安堵していた。

 アーモンドという男はゴールド大佐と同じくらい大切で、師弟関係だった。

「とにかく今はあのギリシャ女神を装ったやつに聞いてみた方が早そうだ」

 シェイクはそう言うと、女神の所に向かった。

 女神は全く自分の話を聞いてくれない事にポカーンと口を開けていたが、彼の気配に気づいた途端、「なななんですか?!」と怯えた。

「『なんですか』って……連れてきたのはお前だろ。目的はなんだ?」

 シェイクはそう言って、銃口を向けた。

 自身に危険が及ぶ事を察した女神は青ざめた顔で「ま、待ってください! 私は別に怪しい者ではございません。ただ純粋に世界を救ってほしいとお願いをしにあなた達を召喚したんです!」

「世界? またしても大統領からのメッセージか?」

 ゴールドがそう聞くが、女神は「ダイトウリョウ? ダイトウリョウ……えーと」とキョトンとした顔をしていた。

「おいおい、マジかよ? 大統領も知らないなんて、お前は宇宙人か?!」

 プルーンが腹を抱えて笑っていた。

「言い過ぎだぞ、プルーン」

 アーモンドが彼の発言を咎めると、胸ポケットからシガーを取り出して、ライターで火を付けてスゥと吸い、大きく息を吐いた。

 その煙が女神の所まで来て、彼女は慣れていないのか、咳き込んでしまった。

「ゲホッゴホッ……と、ともかく、あなた方には魔王を倒して欲しいんです!」

「マオウ? 俺達が追っているのは『悪魔の商人』だぞ。また追加で頼むのか」

 トレインが真面目な顔で疑問をぶつけると、女神は「いえ、悪魔でも商人でも無くて魔族と呼ばれる……」とキチンとした説明をしようとした。

 が、ラムが「あぁっ! もう! あなた達、小娘に甘すぎなのよ!」と苛立った様子で彼女に急接近した。

 これに女神は「ななななんですか?!」と震えていた。

「ねぇ、錯乱するような事をゴチャゴチャ言ってないで、本当の事を吐いたらどう?」

 ラムの目つきが鋭くなっていった。

「な、なんのことで……きゃっ?!」

 狼狽する女神にラムは足払いをして地面に転ばせると、すかさず両脚の太腿を女神の頭に挟ませて、首を圧迫させた。

「あ……あが、ぐぎゅ……」

 女神はほぼ白目を剥き、手脚をジタバタさせ、口からヨダレが垂れてきた。

「さぁ、落ちる前に白状しなさい。ここはどこ? あなたは誰? 悪魔の商人の仲間? それともマフィアのボスの愛人かしら?」

 ラムはドンドン力を強めていった。

 女神は喉を圧迫されてしまっているのか、錆びついたドアみたいなギィギィとした音しか出てこなかった。

「そのくらいにしておけ。このまま死んだら情報を聞き出せなくなる」

 シェイクは危険だと判断し、ラムを止めた。

 彼の静止にラムは「……分かったわ」と不満気な顔して女神を解放させた。

「カハッ、ゲホッ、ゲホッ……」

 気道が元に戻ったらしく、激しく咳をした。

 それが落ち着いた後は荒っぽく呼吸をしていた。

 シェイクは銃口を向けたまま「さぁ、口が聞けるようしてやったぞ。お前の目的を聞こう」命令するような言い方で尋ねた。

「はぁ……はぁ……ゴホッ、さっき言った通りじゃないですか。私は女神ラーナ。あなた達には魔王と呼ばれる魔族……えっと、モンスターを従えているおさを倒して欲しいんです」

「何を言っているのか、サッパリだな」

 アーモンドがシガーの煙をプカプカふかしながら言った。

「つまり、俺達に害虫駆除をやって欲しいんだよ」

 プルーンはヘヘッと笑いながらスキットルの蓋を開けて一口飲んだ。

「……で、報酬はいくらなんだ? まさか一回200ドルとか抜かすんじゃねぇだろうな」

「お金なんかではありません! もし世界を救ってくださるのでしたら名誉と……」

「ほう、そうか」

 プルーンは女神の話を遮ると、さっきまでのおじゃけた雰囲気が一変して、眼光鋭くさせて銃を向けた。

「ま、また何か疑っているんですか?!」

「大アリだ。さっきは大統領の事は知らなかったくせに、よくドルがお金の単位だと分かったな」

 プルーンの指摘に女神は『しまった』とい表情をしていた。

「やっぱり、奴らとグルだったのね」

 ラムは舌打ちをして彼女を睨んだ。

「三秒与えてやる。その間に何もかもバラすんだ。3、2、1……」

「は、話します! 話しますから殺さないでください! プルーンさん!」

 女神はこの虚無な空間に響き渡るくらい大声で言った。


To Be Continued……。

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