第5話 ミアと先生の大捕り物! その1:犯人認否。
「今日は何があってのご訪問ですか、お嬢ちゃん。以前、私相手に無礼にも『悪意感知』をしたのを忘れましたか?」
「先日は失礼な事を致しまして、誠に申し訳ありませんでした、オーバン・ルクリュ様。本日は、先日の火災につきまして判明した事がありまして、警察署長から貴方さま宛に書状をお持ちいたしました。また、ボ。いえ、わたくしは正規の王都警察官にして成人済みですので、子供扱いは勘弁して頂きたいです」
遺体検視から数日後、ミアは数名の兵士。
及びフィンを連れて、火事で亡くなった金貸し。
オーレリアン・フランクールの店舗兼の邸宅に赴いている。
「それは失礼、フォンブリューヌ嬢。で、私なぞに署長殿から書状とは如何に?」
ミアの前、豪華な椅子に座る中年後半のやせぎすな男。
それが、オーバン・ルクリュ。
主が死亡後、まだ彼の子息が幼いため業務はNo2であったオーバンが引き継いでいる。
今日も経営者変更の手続きや失われた証書の再発行などで、オーバンは忙しそうにしている。
今日も警察署長からの書状とのことで、オーバンはしょうがなく業務を休みミアの前に出てきている。
彼がミアとの会談につかっているのは、主が貴賓との面会に使用していた部屋。
豪華な家具や絵画、立派な石膏像などで飾り立てられている。
そして用心棒替わりなのか、彼は背後に屈強で商売人ともカタギとも思えない男達を三人待機させていた。
……あれ? ルクリュさんってば、腕に包帯を巻いているの。前に会ったときはどうだったっけ? 用心棒さんは、あんまり強くなさそう。神聖騎士団の皆と迫力が全然違うもん。店主さんが以前入っていた盗賊ギルドからの派遣さんだったりして。あ、この匂い! そーか。やっぱりね。
ミアは被疑者やその関係者を表情込みで観察した後、行動を開始した。
「では、ルクリュ様。この場にて書状の封印を解き、朗読をさせていただきます。なお、この書状は神聖契約魔法にて保護されており、同一文書は神殿と警察署にて保管されております」
ミアは後ろで先生が見ているので緊張しながら、書類筒から蜜蝋で
そして小声で封印解除の合言葉を唱え、赤い封印蝋を砕いた。
「読み上げる!
ミアは、高らかに逮捕状を読み上げる。
その様子に逮捕を宣言された被疑者、オーバンは何食わぬ顔。
背後に控えし用心棒たちも、ミアの事を何をバカなと薄笑う。
「あらあら。お子ちゃま警官が何を言い出すかと思いましたら、私が主人殺人の嫌疑で逮捕とは。一体、何の証拠で私が主人を殺したと言うのでしょうか? 警察署長も神殿長も小娘の言う妄想通りに逮捕状を発行するとは愚かではないですか?」
「証拠ならあります! え、えっとぉ、フランクール氏は焼死では無く絞殺をされていて……。え、えっとぉぉ。もー、分かんない! 先生、宜しくお願いします」
すっかり煽られてしまい、元より緊張しきっていたミアは、しどろもどろになってしまう。
しょうがなく、ミアは即座に背後で待機していたフィンに救援を求めた。
「ミアくん。最後まで自分で説明するように言ったでしょ。はぁ。しょうがない。これも不甲斐ないバカ教え子を導く教師の役目。それに、私に助けを求めたのも正解。では、不肖。王立魔法学院、魔法生命学教室 2級教授フィンエル・シンダールが説明を引き続きましょう」
「えー、先生。ボク、馬鹿なの?」
「学院の先生が警察のお手伝いですか? 一体、何の権限があっての行為ですか? 学院は政治や軍事、警察とは縁を切る事で学問に励んでいるとも聞いていますが?」
オーバンは、フィンに対しても強気に出てくる。
「今回の件につきましては、正式に警察署長殿からの依頼がありました。また、これなる馬鹿娘。ミアは我が愛すべき教え子。教え子の危機に先生が出てきたら不味いのでしょうか? 完全犯罪を阻止された犯人さん?」
「学者先生が偉そうに言うわい! では、証拠とやらを見せて見ろ!」
「はい、喜んで。ミアくん、資料を後ろから持ってきて。キミは説明できなかったんだからしょうがない」
「う、うん。先生」
馬鹿と言われて膨れているミアに、フィンは指示を出す。
「先生、ごめんなさい。ボク……」
「今は私に任せて。大丈夫、ミアくん。ちゃんと犯人は追い詰めて見せます。その代わりに、後の荒事は貴方に任せますよ」
「うん! せんせー。大好き!」
自分で上手く説明できなかったので、泣きそうな顔のミアの頭をそっと撫で、彼女が持ってきてくれた資料を確認するフィン。
全て揃っていたので、彼は被疑者の方に振り返った。
「では、最初からお話ししましょう、ルクリュさん。貴方は主、フランクール氏に事件の起こった夜、呼び出されましたね。そして、店のお金の使い込み、更には証文の書き直し、偽造が発覚して叱責を受けた!」
フィンは、ミアから聞いていた金融店での背任行為を、さも自分が調べたように語る。
もちろん、この情報はミアや他の捜査員が盗賊ギルドなどで調査したうえで入手した情報。
フィン自身は又聞きでしかないが、自説の根拠上げに使った。
「何を証拠に! 使い込みや証文偽造、何処に証拠がある!? 証文や帳簿は先だっての火事で失われているが?」
「そうなるように貴方が放火しましたからね。さて、フランクール氏から叱責を受けた後、油断した彼の後頭部を何か硬い物。そう、そこにあるような石膏像で殴りましたね。彼の遺体頭部、頭蓋骨は亀裂骨折をしており、現場に転がっていました割れた石膏像の破片が突き刺さってました。ですが、この時点ではフランクール氏はまだ死亡していませんでした。遺体解剖をしたわけではないので確定ではないですが、頭蓋内の出血で意識が混濁はしていたでしょうが?」
朗々と検視から分かった事実を、まるで見ていたかのように語るフィン。
その様子に、ミアは頬を染めて見惚れていた。
「な、なんだと。まるでその目で見たような事を言いやがって!」
「そうですね。見てきたわけじゃないですが、遺体には証拠が多く残る。遺体は『語る』のですよ。自分の無念を晴らしてくれと。それに今、貴方の心はひどく焦っている。秘密がどうしてバレたと」
食って掛かる
彼は、更に説明を続けた。
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