勉強教えて?

「今日から毎日、放課後に勉強を教えてほしい?」


神坂慎也がきょとんとした顔であたしに尋ねた。


「別にいいけど…何で?僕以外にも勉強できる人はたくさんいるよ」


邪気のない目で見つめられて、あたしは返答に困ってしまう。


「いや、コウサカくん教え方上手かったし…」


あたしがそう言ってもなお、神坂慎也は不思議そうな表情をしたままだった。でも、嫌がっているようには見えない。


「まあ、いいよ。僕あまり人に教えたことないから下手かもしれないけど…それでもいいなら」


神坂慎也はそう言って、最後に少し微笑んだ。


…か、かわいい。


あたし、顔赤くなってないかな?めっちゃ心配なんだけど。てか、こんなとこ智子たちに見られたら人生終わりじゃん…!


「今からでも、教えようか?それとも明日からにする?」


「い、今からで!お願い、します…」


そう答えたあたしの声は完全に恋してる女のそれだった。…てかなんで敬語!?あたしドキドキしすぎておかしくなってんじゃん。


神坂慎也の声は心做しかいつもより柔らかくて、優しくて、少なくともあたしは嫌われてはいないみたいだった。

 


こうして、あたしは神坂慎也に一歩近づくことに成功した。

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