第4話
手を伸ばしても届かないくらいの、鈴木さんの隣に座った。
僕は鈴木さんを見たけれど、鈴木さんはずっと湖だけを見つめていた。
それでも、僕たちは並んで湖を眺めていると言えるはず。
僕は、微かに聞こえる歌声に気づいて、そっちの方に目を向けた。
美術部の子が、自転車を漕ぎながら歌っていた。
鈴木さんと僕は、目を見合わせる。
そのとき、鈴木さんが微笑んで、僕もつられて少し笑った。
僕たちは、その子のことを、こっそり隠れてやり過ごした。
でもその後、鈴木さんは、さっきのことを話さなかった。
だから僕も話さなかった。
湖から風が吹いてきて、鈴木さんの髪がそよぐ。
鈴木さんは立ち上がると、湖に左手の小指をつけて、それをペロリとなめた。
僕も真似をして、右手の小指を湖に浸して、ちょびっとなめてみる。
「しょっぱいね」
僕もそう思っていた。
「ここは海」
湖を指さして、鈴木さんはそう言った。
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