第2話

「湖、行こ」って鈴木さんに誘われた。


気づいたら、僕は「あ、うん、いいよ」と答えていた。


別に湖に行きたいわけじゃなかったけれど、特に断る理由もなかった。



「じゃあ、行くよ」って言いながら、鈴木さんは僕の肩をポンと叩いて美術室を出て行った。


思っていたより、けっこう強くて、痛かった。


僕は窓側の戸締まりだけを確認して、鈴木さんの後を追った。



下駄箱でやっと鈴木さんに追いついて、急いでローファーに履き替える。


もう履き替え終わった鈴木さんが、「自転車ある?」って仁王立ちで聞いてきた。


「あ、うん、あるよ」と答えると、「よかった。あんたもチャリ通で」って笑いながら返してきた。



昇降口から駐輪場まで、僕は鈴木さんの背中を追った。


「かっこいい自転車だね」と、僕は思わず声に出した。


「おう、グラベルバイクって言うの」、サドルをポンと叩いて、鈴木さんはそう言った。

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