その2 ︎︎俺が書く
その日の夜、俺は自宅で頭を抱えていた。
クラスで一番の美少女マキアさんからとりあえず交換日記を貰ってきてしまった。
しかも最初のページがめっちゃかわいい。
この交換日記は最大4人まで書けることになってるらしい。4人キャラクターがいて、なんか吹き出しが出てて、その中にプロフィールを書くところがある。
そして、そこに既にマキアさんのプロフィールが丁寧に書かれていた。
【名前:
【性格:普通】
【好きなもの:ぬいぐるみ】
【ひとこと:よろしくね!】
……やべ、超かわいい。
マキアちゃん何なの!?
同じ人間!?
いや違うだろ!?
天使、天使だこれ。
……落ち着け。
天使に俺は何という邪な感情を向けようとしてるんだ。
俺は、交換日記を、書くだけだからな!!
【名前:槙野アキタカ】
【性格:普通】
【好きなもの:夕焼け】
【ひとこと:こちらこそよろしくお願いします】
……バカ! ︎︎俺のバカ!
嫌だこれ超絶キモイじゃねーか!?
なんだよ「夕焼け」って!?
今日見た夕焼けキレイだなーって思ったからつい書いちゃったけどさあ、何だこのカッコつけポエマーみたいな「好きなもの」は!?
あ、でも消しゴムで消すのももっとダサいぞ!?
うわぁ、無難に「漫画」とかにしときゃよかったな。
でもそしたら「オススメ教えて」とか言われても困るしなー。
次のページをめくると、既にマキアさんの日記が書いてあった。
【9月10日】
突然こんなこと提案してごめんね。でも、どうしても槙野くんと直筆でやりとりしてみたかったの。私SNSとか苦手で、何だか疲れちゃうから……だから、こうして私のことを話せる人がいいなって思ったんです。少しだけど、付き合ってくれると嬉しいな。
……かわいい。
俺は世界で一番幸福な少年なんじゃないだろうか。
もうキモくてもいいや。俺も返事を書こう。次のページの「フリー」というでかい欄に日記を書けばいいんだな?
【9月11日】
こちらこそ、誘ってくれてありがとう。いきなり滝田さんに声をかけられてびっくりしたけど、たまには直筆のやりとりというのも楽しくていいですね。僕はまだクラスのことがわからないので、いろいろ教えてくれると嬉しいな。
あーダメだ俺、やっぱりキモイ!!!
こんなんじゃマキアさんが俺キモすぎ問題で死んでしまう!
何で俺には文才がねーんだよ!!??
もっと気の利いたこと書けねえのか俺のカス野郎が!!!
……まあいいか。
俺はファンシーノートをカバンに突っ込んだ。深く考えるのはやめよう、それが一番だ。明日の朝、マキアさんの机に入れて、それからいろいろ考えよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます