第10話 簡潔性
廃墟は砂に埋もれ、その前で酒を酌み交わす詩人を待つのみ。しかし、1人の魔術師と1人の魔属が手を繋ぐと砂は石畳の隙間に落ちていった。そして淀みが現れる。
崩れた石畳に囲われた淀みが揺れた。巨体が縁から飛び跳ねる。その生き物は鰐として知られていた。淀みは魔力が触れたために現れたものである。その前は一つの砂の吹き溜まりに過ぎなかった。
石畳は庭の池に水を貯めるための水路の縁を覆うものだ。鰐は今まで廃墟の奥に眠っていたのが這い出してきたのだろう。
鱗ではなく(通常の鰐とは違い)陸棲の肌をしてい。そして、人を見るその目は感情を示す瞬きをしていた(鰐には瞬膜がある)。
鰐は杖を待ち、二本の足で立ち上がり、二つの存在の前の通路を塞いだ。
威嚇として牙を見せ、同時に右手を回すと中空から布を生じさせた。左手は冠を取り出し、両手を合わせて獣の顔にはベールをかけた。布は上衣となり、そこに隠れた首から下は隆起が生じ、女となっている。彼女は一つの言葉もなくただ杖を石畳に置いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます