第14話 その後の話
目を覚ますと、俺は病院のベッドに寝かされていた。バルジャンさんとスケルトン・ジェネラルを倒した後、ソルジャーの待ち伏せに遭い、ピンチのところで迷宮管理局に助けられたことまでは覚えている。救助されたタイミングですぐ意識を失ってしまったため事の顛末はわからないが、ここにいるということは、何とか地上に戻れたのだろう。
そういえば迷宮管理局の人に助けてもらったとき、なんだか懐かしい声を聴いた気がするのだが……ダメだ、思い出せない。まぁいいや。時間を置いて思い出すこともあるだろう。
意識が戻って数分経つと看護師さんが駆けつけてくれて、医者にも軽く診てもらったその後は怒涛の展開の連続だった。
まず見舞いに来てくれた両親にしこたま怒られ、優里にめちゃくちゃ泣かれた。三人にはとても心配をかけてしまったので、これは当然の報いだと思う。でも特に堪えたのは……
「颯太にぃのバカッ!!!」
と、優里に胸元で泣きつかれた時である。目を真っ赤にしてポカポカと叩かれた時、家族に涙を流させた自分自身に本気で腹が立った。そして、二度とこのような事態に巻き込まれないよう、ダンジョンでの活動内容は慎重に考えると家族で話し合って決めた。両親、そして優里には、もう悲しい思いはさせたくないからな。
次に、先に目を覚ましていたバルジャンさんと、彼の見舞いに来ていたセブンナイツの社長さんが病室を訪ねてくれて、何度も謝られた。恐らく危険な目に遭わせたことへの謝罪だろうが、そんなのは迷宮に入った時点で覚悟していたことだ。むしろ自分の警戒心のなさと実力不足で、バルジャンさんにこそ迷惑をかけたと思う。お互い謝罪をして落ち着いたところで、先ほど家族で話し合った内容を話すと、二人とも承知してくれた。彼らとのコラボは楽しかったが、再コラボには少し時間がかかると思う。
ちなみに、今日初めてお会いしたセブンナイツの社長は想像よりお若い方で驚いた。おそらくうちの部長と同い年くらいじゃないだろうか。知的かつ活発な雰囲気を感じさせる女性で、“シゴデキ”オーラをバンバン放っている人だった。
翌日。精密検査を受けて体の内外共に異常がなかったため、次の日には退院できると医者から言ってもらえた。あれだけの戦いを経てほぼ無傷で生還できたのは、本当に幸運だと思う。病室に戻って胸をなでおろしていると、会社から藤村さんが見舞いにきてくれた。
「色々と話したいことは沢山あるが、まずは君が無事で本当に良かった」
第一声、そう言ってくれた藤村さんの顔は、聖母のように優しかった。普段あれだけこちらに期待(圧)をかけてくる人がこれなのだから、本気で心配してくれていたのだろう。俺はどれだけ周りを心配させたんだと思うと、申し訳なさが増すばかりである。
それはそうと、藤村さんからは、今後の迷宮での広報活動はこちらの負担を考慮した上で、より慎重に企画し判断すること。会社がらみでダンジョンに入る時にもらう危険手当が、いつもより多くもらえること。退院後3日程度の特別休暇(有給とは別)が与えられたこと。弊社のSwitter、Enstagramiのアカウントのフォロワーがそれぞれ一万人ほど増えたこと等、沢山の報告を受けた。中でも次のボーナスは期待してよいと聞いた時が一番嬉しかった!丁度家のパソコンを買い替えようと考えていたところなので、ボーナスアップは朗報である。
まぁそんなこんなでその日は終了し、次の日には無事に退院することができた。病院の皆さん、大変お世話になりました。
***
与えられた特別休暇を家でゆっくり過ごし早2日。朝起きて郵便受けを確認すると、迷宮管理局から手紙が届いていた。何と先日の【スケルトン・ジェネラル】を討伐した件で、俺とバルジャンさんに感謝状が贈与されるとのこと。やはりあの個体は何らかの異常により生まれたものだったらしく、現在当局が【青山ダンジョン】を封鎖した上で異常の原因を調査中らしい。俺たちはその異常による被害を事前に抑えたと判断され、感謝状が贈られることとなったようだ。個人的に学生時代を含め表彰される機会などほぼ無かったので、素直にテンションが上がった。
手紙の続きを読むと、数日後マスコミも交えたちょっとした贈与式も行われるらしい。バルジャンさんも一緒に招待されているそうなので、また会えるのが楽しみだ。とりあえず今日中にスーツをクリーニングに出しておこう。
そんな感じで若干ウキウキしながら迎えた式の当日。俺は、予想外の人物と再会することとなった。
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