第10話 バトルジャンキーといっしょ
「ようお前ら!配信者界のバトルジャンキーこと、バルジャンだ!今回は俺の見込んだこの男が、ゲストとして来てくれたぜ!」
「えー、皆さんこんにちは。エプロンニキです!本日はよろしくお願いします!」
《待ってたぜ》
《きちゃ!》
《おはバルジャン》
《エプロンニキタ━━━━━━━━!!》
《[¥10000]出会ってはいけない二人が出会ってしまった記念》
《こんにちは!》
はい、というわけでホントに超人気迷宮配信者【バルジャン】とのコラボ配信が始まってしまいました。例の投稿から今日まで、何と一週間。とんでもない早さで企画が実現してしまった。あまりの急展開に、バズってもなお小市民の俺は心が追い付いていない。
しかし、営業で鍛えたマイハートは、この程度のことで折れはしない。上司にも褒められたアドリブ力で、バルジャンさんとの配信も盛り上げてやるぜ!
「ん、なになに。同接五万人突破?マジか!みんな、見てくれてありがとな!」
すみません、やっぱダメかもしれないです。Ayuの配信に出た前回も一万人を超える視聴者さんたちが見てくれていたが、今回はその五倍である。配信出演二回かそこら、素人同然の俺には荷が重すぎる人数だ。
数字を聞いて青ざめた俺を気にしてか、横にいるバルジャンさんが「気負いすぎんなよ!」ってな感じにサムズアップしてくれる。前日の打ち合わせの時も思ったけど、“バトルジャンキー”と言われる配信時のキャラに対して、裏ではめちゃめちゃ気配りできて優しいんだよなぁこの人。その好意に報いるためにも、やれることは全部やる。そのくらいの覚悟で頑張ろう。
「じゃあエプロンニキ、まずはアンタの戦闘スタイルを教えてくれ。ゲストが来た時には毎回聞いてるんだ。事前に相手の戦い方を知っていた方が、対策とかも取りやすくなるからな」
《い つ も の》
《開始五分でバトルのこと考えてて草》
《ほぼ初めましての相手の対策立てようとするの恐いw》
さすがバトルジャンキー。闘気に満ち溢れた質問である。一応メタ的な話もすると、この質問はロールプレイをしつつ、ゲストの紹介も兼ねているのである。こうした何気ない下りからもテクニックを感じられ、配信をする者として関心する。配信者じゃなくてサラリーマンだけど。
「わかりました。俺の戦い方は、刀を使った近接戦闘です。武器に刀を選んだのは、中高と剣道をやっていたので、コレなら何とか俺でも戦えるかなと」
説明をしながら、撮影用ドローンのカメラに腰に下げた刀を近づける。
《かっこいい》
《やっぱ日本男子は刀よな》
《Oh,Japanese Samurai‼》
《海外ニキもよーみとる》
《エプロンニキと海外ニキ、夢の共演》
まさか刀一つでここまで反応が貰えるとは。コメントの流れが速すぎて追えないが、チラリと読めた中には英語でのコメントもあった。さすが人気迷宮配信者、視聴者もワールドワイドである。
ちなみに、日本の探索者の武器は剣や槍、ボウガン、Ayuのような魔法使用をアシストする杖といったものが多い。理由は単に日本では銃を所持・入手する条件が厳しいこと。あとは銃はある程度訓練しなければ、モンスターのような動く標的に当てるのは難しいことなどが挙げられる。そのため多くの探索者は免許取得時の短い訓練時間でも、ひとまず扱えるようになる難易度の武器を選ぶのである。困ったら魔力で強化すれば良いってのもあるかもだけど。
だから銃社会のアメリカの探索者や、正規の訓練を受けている自衛隊の迷宮専門部隊なんかは銃火器をガンガン使う。きちんと運用できればダンジョンであろうと当然、近代兵器の方が強いに決まっているのだ。
「オーケーオーケー、刀だな。ありがとう。そんじゃあニキの戦い方もわかったところで、今回の企画を説明するぜ!」
パチンとバルジャンが指を鳴らすと、配信画面が映像から手作り感満載のスライド(本人作)に切り替わった。
「どっちが多く倒せるか決めようぜ!“スコアアタック対決”ゥううう!!!」
《うおおおおおお》
《出ました人気企画!》
《エプロンニキはどこまでやれるのか……?》
視聴者たちが湧いてるように、今回の“スコアアタック対決”は、バルジャンの配信内で度々行われる人気企画である。内容は至ってシンプルで、制限時間内に指定されたモンスターを倒した数を競う。これだけである。
「けど、単純だからって気を抜かれちゃ困るぜ。一対多の状況でこそ、探索者としてのセンスと経験が問われるからな。どうだいニキ、自信のほどは?」
「もちろん、負けるつもりはありませんよ」
「へっ、そうこなくっちゃなァ!」
《やったれエプロンニキ!!!》
《二人ともバチバチだなw》
《これはアツい勝負になる予感》
《wkwk》
《[¥5000]エプロンニキに単勝》
《馬券方式やめいw》
ぶっちゃけ自信なんてほとんどない。でも、やるからには勝つつもりで挑まなければ、バルジャンさんや視聴者の方に失礼だ。それに、今回は前回のAyuの時とは違って案件配信ではない。俺はただゲストとして、バルジャンさんのチャンネルに出させてもらっているだけだ。
つまり俺が活躍できなければ、会社の宣伝にはならない!藤村さんにも「応援しているよ」と圧――じゃない、期待をかけられている分、格好くらいはつけないとな。
「んじゃあ場も温まってきたし、さっそくダンジョンへ行こうか!」
「はい!」
俺の答えにバルジャンさんはニヤリと笑みを浮かべ、再び指を鳴らす。配信画面がスライドから元の中継映像に戻り、視聴者の画面越しに今日の舞台が姿を現す。
「今回の舞台はココ!東京にある【青山ダンジョン】中層エリア“戦士たちの
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