第5話 案件配信
「あー、ゆー、レディ?ようこそ、Ayuのアトリエへ!そして、今回は素敵なゲストが来てくださってます!」
「えー、皆さん、初めましての方は初めまして。お久しぶりの方もいらっしゃるかな?株式会社さねふくから参りました、エプロンニキです。本日はよろしくお願いします!」
《イエス、レディ!》
《きちゃ!》
《エプロンニキキタ――!!》
《ホントにエプロン着てて草》
《Ayuちゃん、エプロンニキもこんにちは》
《待ってたぜい》
《wkwk》
気づけば案件配信の日が来てしまった。ただ配信に映り込んでしまった前回と違い、今回は正式にゲストとして出演しているため、正直すごく緊張している。とはいえ、ここでやらかして二度もAyuに恥をかかせるわけにはいかない。精いっぱい、やれるだけのことはやってみよう。
「というわけで、エプロンニキはようこそ、Ayuのアトリエへ!いやぁ、まさかこういった形で身内と配信することになるとはねぇ~」
「そうだね。俺もまさか正式にAyuの配信に出れるとは思わなかったよ。ところでさ、俺のことエプロンニキっていうのやめない?身内にニキとか言われるのめちゃ恥ずいんだが」
「違うな。間違っているぞエプロンニキ!この界隈では相手を配信ネームで呼ばない方が失礼なんだよ!なので以降もニキ呼びは継続させていただきます」
「そう言われるとグゥの音も出ない……てか自分で名乗っといてアレだけどエプロンニキって正式なヤツだったのね」
《自分の名前把握してなくて草ァ!》
《自社のロゴ入りエプロン着てるやつを他の呼び方する方が違和感》
《二人のトーク軽快で心地よい》
《てかいつもよりAyuちゃんのテンション高くない?》
《お父さんと一緒に配信出れて楽しいんやろ》
《兄貴だよ!》
《従兄だよ!!!》
《お弟子さんたちのツッコミスキルが光る》
《あゆえぷてぇてぇ》
《既にカップリングしてるやついて草》
おっと、ついつい家にいる時のノリで会話をしてしまった。でもコメント欄を見る限り、俺たちの会話は好評のようだ。Ayuのマネさんにも「いつも通りのお二人で大丈夫です」とは言われていたが、それが見事に当たっていたようである。
「て、身内漫才している場合じゃなかったね。今回は事前に告知していた通り、株式会社さねふく様からの案件配信です。といっても、さねふく様からは“いつも通りの配信の合間に、少しばかり弊社の商品をご紹介いただければOKです!”とのことなので、今回もフツーにやらせていただきます」
「それでいいのか弊社は……」
「うん、まぁ私もそう思ったけど、向こうが言うなら仕方ないよね。なので、今回もいつも通りの企画にしました。デデーン!【ダイヤモンドタートル】でブローチを作ろう~~~」
撮影用ドローンがくるりと回転し、配信画面に俺たち二人がいる場所の光景が映し出された。
《江ノ島ダンジョンだ!》
《いつ見ても綺麗な場所やなぁ》
《なお生息するモンスターは危険なものが多い模様》
《それは下層の話な。上層にいるモンスターはむしろ大人しい》
《探索者ニキの解説助かる》
今回探索する場所は、神奈川県藤沢市にある【江ノ島ダンジョン】、その上層エリア“水無き珊瑚礁洞窟”である。名前の通り
加えて名前のせいかわからないが、このエリアに生息するモンスターはどれも海洋生物に近い見た目をしていることが多い。俺たちが狙う【ダイヤモンドタートル】も例に漏れず、まさしくダイヤのように光り輝く甲羅をもった、亀にそっくりなモンスターなのである。
「江ノ島ダンジョンはダイヤモンドタートルが沢山出現するので有名だよな」
「そうそう!そのため今回の探索場所として選びました。それに、前々からダイヤモンドタートルを使ったアクセサリーは作ってみたかったしね」
「でも、一人で倒すのは大変なんじゃないか?ダイヤモンドタートルはそこまで強くはないけど、体がデカいから相手をするのは骨が折れるぞ」
「そこでニキの出番ってわけですよ。あーんなに強いんだから、戦闘とか素材の持ち運びとか、色々頼りにしてるよ!」
「ハイハイ、どうせそんなことだろうと思ったよ。りょーかいです」
「よぉし、役割分担も決まった所で、早速しゅっぱーつ!」
《おー!》
《二人ともがんばれ~~~》
《[¥1000]どんなブローチができるか楽しみにしてます!》
《[¥3000]エプロンの修理代に使ってください》
《エプロン修理代www》
《破れるの前提でペイチャすなw》
コメントも和気あいあいとして良い雰囲気だ。このムードを崩さず、いやむしろより盛り上げていけるよう、頑張らないとな。
俺は一度大きく深呼吸をし、改めて気合いを入れてから、先を行くAyuの背中を追いかけた。
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