第4話 広報部へようこそ
「ようこそ広報部へ。広報部長の
「初めまして、瀬川颯太です。今日からお世話になります」
引き継ぎやら何やらを終えた翌日。さっそく異動先の広報部に向かうと、めちゃめちゃ美人の部長が迎えてくれた。活気に溢れた大きな瞳と低めの位置で纏めたポニーテールが特徴的な人で、いかにも“バリキャリ”なオーラを放つ女性である。確か年は向こうの方が2つほど上なはずだったが、それでも同年代の人間がここまで活躍しているのを目の当たりにすると、少し悲しくなった。
「さて、さっそくだが瀬川君。どうして私が君をスカウトしたのか。理由はわかるかい?」
「えーと、やっぱりこないだの件で話題になったから、ですかね……」
というかソレしかないだろ。と、内心ツッこんでおく。
「その通り。我が社“さねふく”は業界内ではそれなりのポジションにいるものの、一般的な知名度。特に若い層からの知名度が低いのが課題でね。それを解決するために私のような若い人間が広報部長に選ばれ、SNS等を通じてPR活動をしてきたのだが……」
藤村さんはわざとらしく肩をすくめながら、さねふく公式Switterアカウントのプロフィール画面を見せてくれる。そこに表示されたフォロワー数は、僅か二桁ほどであった。
「ご覧の通り、この有り様でね」
「これは……確かにマズいかも」
俺が勤める“さねふく”は、食品の製造・販売を行っている会社である。元々は冷凍食品やインスタント食品を主としてきたが、数年前から迷宮探索者向けのいわゆる“迷宮糧食”の生産に注力し始め、業績を伸ばしてきた。幾度の試行錯誤を経て開発されて発売された我が社の商品は「過酷な迷宮内環境でも簡単に調理でき、しかも美味しい」と専らの評判で、業界内でもそれなりの地位に就けている。
しかし、我が社の世間からの印象は「商品は知ってるけど、作ってるのどこ?」であり、株主からも指摘されるレベルの認知度の低さを誇って(?)いた。
「こうした状況で困り果てていた広報部に現れた救世主がそう、君だ。先日の配信事故を見て私は確信したよ。君ならばいけるとね。だからこそ、こうして営業部から引き抜かせてもらったという訳だよ」
「まぁ、大方想像してた通りでした。それで、結局私は何をすればよろしいのでしょうか?」
「おや、随分乗り気だね。私としては嬉しい限りだけども」
乗り気も何も仕事だよ!!!!と直接口にできるはずもなく、大人しく「まぁ、配属された以上は……」と情けなく答えた。小心者の俺は上司へ強気に出られんのです。
「やる気があって大変よろしい。そんな頼もしい瀬川君にピッタリの案件を用意しておいたよ。これを見てくれ」
そう言って藤村さんはこちらにスマホを手渡し、とあるSwitterの投稿を見せた。
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Ayu@最近は身内が話題です@ayu_sevenknights
次の土曜日株式会社さねふく様による案件配信やります!
ゲストに今話題の“あの方”もお呼びします!詳細は後程別で
ポストしますので、そちらもチェックでお願いします!
お楽しみに~
#Ayuのアトリエ
#エプロンニキ
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「は……?」
「という訳で、瀬川君の初仕事はセブンナイツ所属、迷宮系ourtuber【Ayu】さんとの配信に出演することだ。詳しい段取りは既に向こうと決めてあるから、君は明日の打ち合わせに参加さえしてくれればそれでいい」
「ちょ、まっ、え?」
藤村さんは有無を言わさず、こちらの肩をがっしり掴んで満面の笑みを浮かべた。
「初の案件配信、緊張するとは思うが頑張ってくれ。君に我が社の知名度がかかっている!」
「はぁ~~~~~~~~~!?!?!?」
こうして俺は、まさかの優里と一緒に再び配信に出ることになったのであった。ヤバい、営業部に戻りたい……
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