第2話 補講は?
「なんで君はここにいるの?」
「いやー、補講が入っちゃって……」
「え? 実は私もそうなんだ。でも、誰もいないから屋上で空でも見ながら、待とうと思って」
意外にも彼女と同じ目的だった。二人して何もすることがないので、二人で世間話をしながら、待つことにする。
*
「もう、お昼だ」
突然彼女は、大きい声を出すので、背中がビクッとする。時計を見ると、ぴったりと針が十二時を指していた。
「本当だ」
「そろそろ、中に入る? 誰かいるかもしれないし」
「そうだな」
一足先に、「よいしょ」といい、立っている彼女に手を差し出され、手を掴む。
その時の彼女の手は、とても冷たかった。
二人で、学校の中を散策するが、誰もいない。
「やっぱり誰もいないね」
「そうだな」
まるでこの世界に二人だけがとらわれたような静けさだった。
「部活もやってなさそうだし」
体育館を覗いてみるが、もぬけの殻。
「もう帰ろかな。お腹もすいたし」
「んー。でも、貴重じゃない? 学校に私たちしかいないなんて。何かしようよ」
お腹をさすり、空腹アピールをしてみたものの彼女には通じなかった。確かに、彼女の言う通り、この状態で何もしないというのも勿体ないのは事実。
「じゃあ、一緒にコンビニに買いに行こ」
どうしたものかと考えあぐねていたら、彼女は閃いたといわんばかりの表情で、話してくる。
「腹が減っては戦も出来ぬっていうもんな」
「そういうこと!」
かくして、コンビニで食料を調達し、屋上まで戻ってくる。
なんか、コンビニの店員さんに怪訝な顔されたんだけど、何か気に障るようなことしたかな。
*
学校には文字通り誰もおらず、今日初めて出会った子と二人きりで昼ごはん。なんだかアニメの世界に迷い込んだような、それとも白昼夢をみているような感覚だ。
「どうしたの? 考えこんじゃって」
「――いや、この空間が不思議で、白昼夢でも見ているのかなって」
「ハハ、確かにそうだね。昨日までこんなことになるなんて思いもしなかったよ。いい意味でも、悪い意味でもね」
「どっちが俺だ?」
「それは内緒」
まさか俺が、こんな青春のようなことをするとは思わなかったなぁ。ふと、見上げた青空は、無限とも思える広さで鮮やかに照らしていた。
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