第2話 補講は?

「なんで君はここにいるの?」

「いやー、補講が入っちゃって……」

「え? 実は私もそうなんだ。でも、誰もいないから屋上で空でも見ながら、待とうと思って」

 意外にも彼女と同じ目的だった。二人して何もすることがないので、二人で世間話をしながら、待つことにする。

「もう、お昼だ」

 突然彼女は、大きい声を出すので、背中がビクッとする。時計を見ると、ぴったりと針が十二時を指していた。

「本当だ」

「そろそろ、中に入る? 誰かいるかもしれないし」

「そうだな」

一足先に、「よいしょ」といい、立っている彼女に手を差し出され、手を掴む。

 その時の彼女の手は、とても冷たかった。

 二人で、学校の中を散策するが、誰もいない。

「やっぱり誰もいないね」

「そうだな」

 まるでこの世界に二人だけがとらわれたような静けさだった。

「部活もやってなさそうだし」

 体育館を覗いてみるが、もぬけの殻。

「もう帰ろかな。お腹もすいたし」

「んー。でも、貴重じゃない? 学校に私たちしかいないなんて。何かしようよ」

 お腹をさすり、空腹アピールをしてみたものの彼女には通じなかった。確かに、彼女の言う通り、この状態で何もしないというのも勿体ないのは事実。

「じゃあ、一緒にコンビニに買いに行こ」

どうしたものかと考えあぐねていたら、彼女は閃いたといわんばかりの表情で、話してくる。

「腹が減っては戦も出来ぬっていうもんな」

「そういうこと!」

 かくして、コンビニで食料を調達し、屋上まで戻ってくる。

 なんか、コンビニの店員さんに怪訝な顔されたんだけど、何か気に障るようなことしたかな。

学校には文字通り誰もおらず、今日初めて出会った子と二人きりで昼ごはん。なんだかアニメの世界に迷い込んだような、それとも白昼夢をみているような感覚だ。

「どうしたの? 考えこんじゃって」

「――いや、この空間が不思議で、白昼夢でも見ているのかなって」

「ハハ、確かにそうだね。昨日までこんなことになるなんて思いもしなかったよ。いい意味でも、悪い意味でもね」

「どっちが俺だ?」

「それは内緒」

まさか俺が、こんな青春のようなことをするとは思わなかったなぁ。ふと、見上げた青空は、無限とも思える広さで鮮やかに照らしていた。

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