鮮やか空の下で淡い君を見た
海亀君
第1話 屋上
「補講があるから、学校に行くように」という一通のメールが来ていた。
ベッドから起き、スマホを確認すると先ほどのメールが目に入り、気が滅入る。それに、今日が土曜日ということも相まってか、余計に気が滅入る。
自分の部屋でスマホを手に持ちながら、棒立ちしている金井陽はどうやってさぼるかを考えていた。
しかし、数分考えたのちに行っとくべきという考えになり、仕方なく準備をする。
なんで、前日にでも声を掛けてくれなかったのだろうか。突然の補講の連絡に疑問を持ちながら、学校へと歩を進める。
まさか、ベクトルで赤点を取るとは思わなかったな。あの先生の授業分かりにくいんだよな。不安だ。
いつもの朝の忙しなさもなく、静かな住宅街を歩いていく。鳥のさえずりに、車の走行音と、自然の入ってくる音が心地よい。
これが、ただの散歩だったら、どれだけよかったことか。
ものの二十分歩くと学校が見えてくる。玄関に入り、職員室に入るが誰もいない。
妙だな。休日でも部活がある人もいるだろうし、先生も少なからず、一人はいるだろう。
学校を散策し、誰かに会えれば、今の学校の状況でも聞くことにしよう。とりあえず、辺りを散策するが、誰もいない。
こんな静かな学校なんて初めてだ。自分の席へと座り、先生を待つ。窓際なこともあり、肘を机に置き、顎を手で押さえていると綺麗な青空が視界に入った。
あ、そういえば、屋上だけ見てなかったな。でも、入れるのかな。
基本的には、屋上は解放されておらず、鍵が締まっている。
そんなことは、頭でもわかっているのに、自然と屋上へ足が進んでいた。
ここにいてもどうともならない退屈な状況が、彼をそうさせたのか。それとも誰かに誘われたのか。
屋上への階段を上がり、ドアノブに捻る。
「え?」
まさかと思った瞬間だった。ドアが開いた。
一度も来たことのない屋上に、ワクワク感が抑えず、屋上へ足を伸ばす。
「え?」
二度目の「え?」が出てしまった。
目の前に広がるのは、見知らぬ屋上の風景と見知らぬ女の子が立っていた。
「あれ、見ない顔だね」
「う、うん」
目の前の女の子は、俺を見るや否や、声をかけてくる。目の前に広がる青空のような髪を靡かせ、興味津々と言わんばかりの顔をする。
「あの、お名前は?」
「私は、如月碧。君は?」
「金井陽」
「聞かない名だね」
「それは俺も」
「まぁ、いいや。こっち来て一緒に座ろ」
「うん」
如月さんは、こっちこっちと貯水槽の所、引っ張って行く。
このときは、まだ予想だにしていなかった。夏、目の前の彼女に振り回されることに。
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