第4話 ある発見
使用人としての日々が始まった。
とはいえ、それほど仕事が多いわけではない。お金持ちそうな割には二人だけの生活なので、料理も洗濯も掃除も簡単なものだった。
使用人としてお金を貯めることができたら、料理店を開くのが夢である。
しかし調理人は男性にしか許されていない職業である。
一方主人――名前を『
「御主人様、食事ができました」
「
首を傾げる
今までにないタイプの主人であった。
生活も独特である。
「今日は夜まで蔵にこもる。昼食は蔵に持ってきてくれ」
お金持ちであれば、豪華な食事が一番の楽しみであるはずだ。それなのに、あまり食には興味のない様子。
ずっと例の蔵にこもって、本を漁っている。
《なるほど......》
これでは並の使用人はたまったものではない。このような変わり者の主人では、精神的にどうにかなってしまいかねない。
「まあ、おれは気にしないけどね」
そう言いながら、昼食の準備をする。小麦粉の皮でひき肉を巻き、それを蒸す。仕上げには笹の葉でそれを包む。
「これなら、仕事しながら食べられるしな」
手洗いの小さな桶も一緒に
ぶつぶつとなにか言いながら本を探している
「あの本......あの本はどこにいってしまったのか......」
本のタイトルらしき単語を何度も
ピクッと反応する
「......?」
「ありましたよ。お望みの本。これでしょ」
ホコリを払いながら一冊の本を差し出す
間違いない。その本こそが、二時間以上探しても見つからない目当ての本だったからだ。
「いや~、俺にも読める簡単な文字だったので覚えてましたよ。奥の本棚、真ん中の五段目左から三冊目でしたね」
じっと
「......なぜ場所がわかった?」
「え?それは......この間この蔵に入ったじゃないですか。そのときに覚えました」
「信じられん――」
「まあ、これって俺の得意技みたいなもので。一度見たものは忘れないんですよね。あんま役たたないけど」
「......」
「この文字は読めるか。このタイトルの本を探したい」
その文字は『鳳朝文字』であり、
「読めないけど――まあ、模様だと思えば」
目を閉じて
本のタイトルを確認する
衝撃が走る。
一語一句間違いない。
それは
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