第28話

「よし、あれ行こう!」

 晴斗はかよの肩に手を置いて笑った。その先にはお化け屋敷。

 かよが苦手なことを知っていて行こうとする。他の女性陣たちも嫌がっていてもドンドン突き進む晴斗に、平然とした顔をしている菜々美。

「菜々美は平気なの?」

「作り物だしね」

 と言いつつも、菜々美も実は苦手。作り物と分かっていても内心は怖いのだ。

「どうした?」

 振り返る翔に「大丈夫」と答えた。



 お化け屋敷には男女ペアで入ろうとなった。かよは晴斗と。菜々美は翔と。他の面々もそれぞれペアとなって入った。かよたちが先頭になって入っていく。

 かよは嫌がっていたが、入ろうと言い出しっぺの晴斗がグイグイと連れて行ったのだ。

(怖い……)

 菜々美と翔の番になって入って行く。菜々美は平気だというようにしていたが、やっぱり怖くて翔の後ろに隠れるように歩いていく。


「あれ?もしかしてダメ?」

 気付いた翔は菜々美の肩を抱いて歩いていく。

「大丈夫。おれがいるだろ」

 耳元で囁かれても、怖いものは怖い。どこかでかよたちのキャーキャーいう声が響く。それが更に怖さを増す。

「翔……。ほんとに……私………」

 涙目の菜々美が可愛いと思ってしまった翔は笑っていた。

「なんで笑ってるの……」

「可愛いから」

 お化け屋敷でそんなことを言われても嬉しくないと思いつつ、何かを言うことが出来ない菜々美は翔にしがみついて歩いていた。

 友人たちの後ろ姿を追いながら、怖さに耐えていた菜々美。そんな菜々美をやっぱり可愛いと思う翔は、菜々美に惚れ込んでしまっているのだろう。



 お化け屋敷を出た女性陣たちは、本当に怖かったようで「もう、嫌っ!」と喚いていたり半泣きになっていたりした。

 中には霊感がある人もいて「ホンモノいた……」と言って更にみんなをビビらせていた。

 菜々美はというと、みんなのように怖いと言えなかったが、翔にはバレバレ。菜々美の手をしっかりと握って離さなかった。

「大丈夫?」

「ん……」

 プイッと別の方を向いた菜々美が強がっているのを感じ取った。


「よし、じゃ次はあれな」

 コーヒーカップへと向かう男性陣。

「ほら、女共。早くしろー」

「もうっ。少しは休憩させてー」

「いいじゃん。それともあっち行く?」

 ジェットコースターを指す晴斗に呆れる女性陣。

「私、喉渇いたからー」

 ひとりが言ったことで、時間を見た。

「もう昼じゃん」

「え、マジ?」

「メシ食おうか」

「売店あっちだったよー」

 ゾロゾロと遊園地を歩く集団は、回りから見たらどんなメンバーに見えるのだろう。その中に菜々美がいることが不思議だった。




     ◇◇◇◇◇




「楽しかったー!」

 夕方まで遊んで地元に戻ってきた。これから呑みに行こうとなって、居酒屋へ。

 高校のメンバーとこうして遊んだりするのも悪くないと感じていた。

「気分転換になった?」

 隣に座る翔は菜々美に言った。

「まぁ……ね」

「良かった。根詰めてると書けなくなるだろ」

(あ……。もしかして、私の為?)

 翔を見た菜々美は、今回のこれは菜々美の為にみんなに声をかけたのだと気付いた。


「ありがとう」

 そう言うと「ん?」と惚けた感じで返ってきた。

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