二日目
第7話 六回目
「ただいま
「おかえりなさい
「鑑定の石板を使わせてください」
「いいけど、ちゃんとスライム十匹以上倒してきたのよね?」
「大丈夫だって、昨日一会さんにお説教を食らってから、必ず鑑定の石板使用料を賄えるだけ稼いで戻る事にしたから」
「ならいいけど、そこのトレーに魔石を出しなさい」
受付嬢に言われ、ザラっと受付台にあるトレーに魔石と呼ばれる石を出す少年。
「これでお願いします」
「はい、えーと……レベルの低いスライムの魔石10個……ぴったり千円なんだけど?」
「ですよね、買取額は探索者カードに預け入れでお願いします」
「……かしこまりました、このまま鑑定の石板使用料も払いますか?」
「お願いします!」
「これだと余剰分が出ないじゃないの……はい、では……鑑定の石板に触っていいですよ」
受付嬢は仕事用の端末を操作しながらブツブツと文句を言っている。
「どもっす」
若者には一切効いていないようだ。
そして高校一年生くらいの新人探索者の少年が鑑定の石板に触れると、石板が光り出して触れている者の情報を映し出す。
石板に表示された情報は。
奉野(ほうの)天人(たかと)
レベル1
〈体力〉1 〈魔力〉0
〈力〉1 〈器用〉0 〈速さ〉0 〈精神〉0〈幸運〉0
スキル
〈奉納〉
だった。
「うーん、普通だとレベルアップで上がる能力は最低保証の一つって事もあるから、二個上がっているだけでも喜ぶ人はいるんだけど……」
二日目にして普通のレベルアップ結果では興奮できなくなっている受付嬢である。
「外れだな……それじゃ一会さん、またダンジョンに行ってきます」
「はいはい、行ってらっしゃい奉野君、気を付けてね」
「行ってきま~す」
……。
……。
若い探索者が受付の側から去り、それを見送った受付嬢の表情は、今日の晩御飯は何にしようかと考えているのうな物であった。
慣れって怖い。
そして、周囲に誰もいない受付……ダンジョンの入口を覆った建物の中にある宝くじ売り場を大きくしたような受付場にて独り言をつぶやく。
「うーん、今日の夕ご飯は持ち帰りカレーにしよっと」
人があまり訪れない雑魚ダンジョン受付の周辺にはひとけがなく、受付嬢の呟きを誰かが聞くことはない。
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