第5話 四回目
「ただいま
「おかえりなさい
「鑑定の石板を使わせてください」
「えっと……ま、まぁいいか、では使用料千円です」
「……スライムの魔石を換金して貰っていいですか?」
「そこのトレーに出して貰える?」
カラっと受付台にあるトレーに魔石と呼ばれる石を出す少年。
「これでお願いします」
「はい、えーと……レベルの低いスライムの魔石5個……という事はまたレベル0にしたのね……」
「買取額は探索者カードに預け入れでお願いします」
「はい、かしこまりました、このまま鑑定の石板使用料も払いますか?」
「それでお願いします」
「はい、ではこれで……鑑定の石板に触っていいですよ」
「どもっす」
高校一年生くらいの新人探索者の少年が鑑定の石板に触れると、石板が光り出して触れている者の情報を映し出す。
石板に表示された情報は。
奉野(ほうの)天人(たかと)
レベル1
〈体力〉1 〈魔力〉1
〈力〉0 〈器用〉1 〈速さ〉1 〈精神〉1〈幸運〉0
スキル
〈奉納〉
だった。
「うわ! レベル一つで能力値が5つも上がってるじゃない!? レベル0だと能力値が全て0なのは全人類同じだから上がった数値が分かりやすいわねこれ、奉野君もさすがにこれはキープするでしょ? 〈剣術〉スキルがなくなったのは痛いけど、体力が1あるだけで外部シールドが発現するんだし、この能力値を消すのは勿体ないとお姉さん思うのだけど」
受け付けのお姉さんは興奮しすぎて少年を『君』呼びしている。
「外れだな……それじゃ一会さん、またダンジョンに行ってきます」
「え? ちょっと奉野君? 能力値5個上がるとか滅多に聞かないんだけど?」
「行ってきま~す」
……。
……。
若い探索者が受付の側から去り、困惑したままの表情で去っていく探索者を見ている受付嬢の表情が素の状態へと戻る。
そして、周囲に誰もいない受付……ダンジョンの入口を覆った建物の中にある宝くじ売り場を大きくしたような受付場にて独り言をつぶやく。
「え? 一回のレベルアップで能力値5個上がるとかすっごい大当たりよね? 能力値によって素の能力が割合で増していくからすごい強くなるよね? え? ええ? あれも外れなの? うそでしょ!?」
人があまり訪れない雑魚ダンジョン受付の周辺にはひとけがなく、受付嬢の困惑がさらに積み重ねられるのが、十数分程後の事である。
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