第4話 三回目
「ただいま
「おかえりなさい
「鑑定の石板を使わせてください」
「え? もうレベル2になったの? さすがに早すぎなような……ま、まぁいいか、では使用料が千円かかります」
「……スライムの魔石を換金して貰っていいですか?」
「ん? いいわよ、そこのトレーに出して貰える?」
カラっと受付台にあるトレーに魔石と呼ばれる石を出す少年。
「これでお願いします」
「はい、えーと……レベルの低いスライムの魔石5個……あれ? 少なくない? レベル1から2に上がるにはもっとスライムを倒す必要があると思うんだけど」
「買取額は探索者カードに預け入れでお願いします」
「あ、はい、かしこまりました、えーっとこのまま鑑定の石板使用料も払いますか?」
「それでお願いします」
「はい、ではこれで……鑑定の石板に触っていいですよ」
「あざす」
高校一年生くらいの新人探索者の少年が鑑定の石板に触れると、石板が光り出して触れている者の情報を映し出す。
石板に表示された情報は。
奉野(ほうの)天人(たかと)
レベル1
〈体力〉1 〈魔力〉0
〈力〉0 〈器用〉0 〈速さ〉0 〈精神〉0〈幸運〉0
スキル
〈奉納〉
だった。
「あれ? レベル2に上がってないじゃ……え!? 奉野君? 〈剣術〉スキルが消えているんだけど? もしかして〈奉納〉スキルでレベル0に戻しちゃったの? あんな当たりスキルを手に入れたのに!?」
受け付けのお姉さんは興奮しすぎて少年を『君』呼びしている。
「外れか……それじゃ一会さん、またダンジョンに行ってきます」
「え? あ、はい、そこのカードリーダーに探索者カードをかざしてから行ってください」
「行ってきま~す」
……。
……。
若い探索者が受付の側から去り、困惑したままの表情で探索者を送り出した受付嬢の表情が素の状態へと戻る。
そして、周囲に誰もいない受付……ダンジョンの入口を覆った建物の中にある宝くじ売り場を大きくしたような受付場にて独り言をつぶやく。
「え? 〈剣術〉スキルって大当たりよね? 銃火器が意味をなさない不思議空間であるダンジョンの中で、使い易くて探索者なら誰もが欲しがるようなスキルよね? え? ええぇぇぇぇ!? なんでー!?」
人があまり訪れない雑魚ダンジョン受付の周辺にはひとけがなく、受付嬢の困惑が積み重ねられるのは十数分程後であった。
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