第3話 二回目
「ただいま
「おかえりなさい
「鑑定の石板を使わせてください」
「はい、では二回目なので使用料が千円かかります」
「……スライムの魔石を換金して貰っていいですか?」
「ん? いいわよ、そこのトレーに出して貰える?」
ザラっと受付台にあるトレーに魔石と呼ばれる石を出す少年。
「これでお願いします」
「はい、えーと……レベルの低いスライムの魔石だと一つで百円なんだけどいいかな? この換金率の悪さがこのダンジョンが『雑魚ダンジョン』って呼ばれている所以なんだけど」
「はい、探索者カードに預け入れでお願いします」
「かしこまりました、えーっとこのまま鑑定の石板使用料も払っちゃいますか?」
「それでお願いします」
「はい、ではこれで……鑑定の石板に触っていいですよ」
「あざっす」
高校一年生くらいの少年が鑑定の石板に触れると、石板が光り出して触れている者の情報を映し出す。
石板に表示された情報は。
奉野(ほうの)天人(たかと)
レベル1
〈体力〉0 〈魔力〉0
〈力〉1 〈器用〉0 〈速さ〉0 〈精神〉0〈幸運〉0
スキル
〈奉納〉〈剣術〉
だった。
「うわ! 奉野君! 〈剣術〉スキルを獲得しているわよ! レベルアップでのスキル獲得なんて十回に一回手に入ったら良い方なのに、これは超大当たりね!」
受け付けのお姉さんは興奮しすぎて少年を『君』呼びしてしまっている。
「ちっ、外れか……それじゃ一会さん、またダンジョンに行ってきますね」
「あ、はい、そこのカードリーダーに探索者カードをかざしてください、行ってらっしゃい奉野さん」
「行ってきま~す」
……。
……。
若い探索者が受付の側から去り、笑みを浮かべて探索者を送り出した受付嬢の表情が怪訝なものへと変化する。
そして、周囲に誰もいない受付……ダンジョンの入口を覆った建物の中にある宝くじ売り場を大きくしたような受付場にて独り言をつぶやく。
「あれ? 今奉野君、外れって言ってなかった? 〈剣術〉スキルは大当たりよね? 私の聞き違い?」
人があまり訪れない雑魚ダンジョン受付の周辺にはひとけがなく、受付嬢の怪訝な表情が営業用の笑顔に戻るには十数分程必要であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます