遊んでもらおう
お腹、いっぱいになれたかな? そっかそっか、良かった。
途中、何度かお米をこぼしたりもしたけど……でも、今動けないんだから仕方がなかったし、最後は私が口移しであげたし、結果オーライかな。えへへへ。
それじゃあ、腹ごなしでもしよっか。食っちゃ寝食っちゃ寝してたら、牛になっちゃうらしいしね。ほら、私って牛肉とか好物だから。君が牛になっちゃったら、頭のてっぺんからつま先まで残さず、食べちゃうと思うからさ。……なぁんてね。冗談だよ、じょ・う・だ・ん。
でも、ちょっとは体を動かさないと不健康だからね。
動けない? 縄をほどいて欲しい? まあ、それはそれ。顔とか首は動くようにしてあるから、その範囲での運動ってことで。なに、不服なの? 私の言うことに文句でもあるの? 殴らないで? なに、それ。傷つくなぁ。すぐ、暴力を振るう女だと思われてるみたいで。私がやっているのは、しつけや間違いに対する暴力。これすなわち、愛ってね。わからない? わからないんだったら、そのうち、わかるようになるよ。私の愛。
話が逸れたね。とにかく、食後の運動をしようってことだけど、今からできることと言えば……
(ポンと手を叩く少女)
そうだ。クイズなんてどう。私が言うことに対して〇か×かを聞くから、君は合っていると思ったら首を縦に振って間違ってると思ったら首を横に振るの。ねっ。首を動かせて、食後のいい運動ができるでしょ。私? 私はそこら辺を歩きながら問題出すからご心配なく。それに、他にも運動をする予定があるしね。何の運動かって? 後で言うよ。
でも、ただ問題を出すだけじゃ、ちょっと味気ないか。じゃあ、合っていたらご褒美をあげようか。そうだなぁ~半分以上合ってたら、私の手料理を振舞ってあげる。ああ、泣くほど嬉しいんだ。これは腕の振るい甲斐があるなぁ。でも、飴があれば鞭があるのが世の常ってやつだよね。だから、間違ったら一問ごとに罰ゲームってことで。なんで、一問ごとかって。そうだなぁ……私が楽しいからかなぁ。きっと、君はいい声で鳴いてくれるから。
じゃあ、第一問。私は君を愛している。〇か×か?
首は、縦に振った。随分と強気だねぇ。それだけ自信満々に頷かれると、嬉しくなっちゃうなぁ。えへへへ。
では、正解は(ドラムっぽい口ぶりで)ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル……残念、不正解です。
(ぱぁ~ん、と頬を叩く音が響く)
鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔しちゃって、かっわいい~。なにが間違ってるか、わかんない、みたいな顔だね。でもでも、不正解なのです。じゃあ、なんで不正解なのか? それはねぇ……私は、君を、とってもとぉっても愛しているからでぇす!
ますますわけがわからないって? もぉう、察しが悪いなぁ。間違っているのは、ひとえに愛の量だよ。愛してる、なんて軽い響きじゃ、表せないくらい、君を愛しているからだよ。とってもとぉっても、の部分が重要なの。わかってないみたいだね。なんなら、罰ゲーム、もう一発いっとく? けっこうです? それはもう一発ってこと? 違う、ね。もぉう、遠慮なんかしないでいいんだから。君にとっては、罰ゲームもご褒美でしょ。えっ、違う? またまたぁ。でも、そうだね。後が詰まっているし、この辺にしておいた方がいいかもしれないね。
じゃあ、第二問。私が君をさらってきたのは、君を虐めるためである。〇か×か?
これは簡単だよね。えっ、悩んでるの。そんなぁ、私の愛が足りてなかったのかな。だったら、やっぱりもっともぉっと、愛の鞭が必要だよね。……今、決めるからちょっとだけ待ってて? わかったよ。ちょっとだけだからね。
首を横に振ってるってことは、×って言いたいのかな。そんなにブンブン振っちゃったら千切れちゃうよ。大袈裟? そうでもないんじゃないかな。私、子供の頃にブンブン振り回してた人形とか虫とか、ちっちゃい動物とかの首、よくもいじゃってたし。だから、首ってけっこう簡単に千切れちゃうんだよ。そんなに顔を青くさせちゃって。怖がらせちゃった? ごめんね。これも冗談だから。でも、気を付けないと千切れちゃうのは本当だから、注意しようね。
それで、なんで×にしたのか、聞いてもいいかな? もっと、別の目的がありそう? ただ、虐めるだけだったら監禁までする必要はない? 監禁って言い方は酷いなぁ。これはね、同居だよ、ど・う・きょ。同居一日目の嬉し恥ずかし期間。ある意味、一番楽しい時期かもしれないね。まだまだ、わからないけど。
それでは、正解の発表でぇす。(ドラムっぽい口ぶりで)ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル……お見事、正解です! ピンポンピンポンピンポン!
簡単とは言ったけど、これもひっかけ問題要素があったからね。たしかに、君を虐めるのが楽しいとはいったし、今も楽しんでいるよ。でも、それ目的で攫ったわけじゃないんだよね。じゃあ、正解はっていうとね……今は言わないでおこうかな。ちょっと照れくさい理由だから、ね。後で言うよ。えへへ。
じゃあ、三問目行こうか。最終問題。これを当てれば手料理だよ、手料理。問題数が少ないんじゃないかって? えっとね、ぶっちゃけ作るのが面倒くさくなったっていうか、ちょっと飽きたんだよね。だから、ここで終わりです。代わりに最終問題の罰ゲームは三倍増しくらいにするから、心して臨んでね。罰ゲームの内容? それは間違ってからのお楽しみということで。
それじゃあ、最後の問題です。私は君がどんな風に答えようと、罰ゲームを与えるつもりでこの最終問題を出題している。〇か×か。
いやぁ、最終問題にふさわしい難しさだよね。〇も×もどっちもありうるよね。きっと、私も迷うと思う。でも、いつまでも渋っているわけにはいかないよね。時間は有限、時は金なり。二人とも皺々になるまで黙ってるわけにはいかないでしょ。
選択の余地がない? よくわからないなぁ。実際に〇も×もあるんだから、答えるのなんて簡単じゃない。だから、あとはよぉく考えて正解を出すだけだよ。どっちが正解かは、君の直感にかかってるんじゃないかな。
なかなか答えが出ないみたいだね。じゃあ、制限時間でも作ってみようか。あと、三十秒で答えなければ、強制罰ゲームね。じゃあ、スタート。
三十、二十九、二十八、二十七、二十六……いきなり言われても困る? そんなもんだよ、人生。二十、十九、十八、十七、十六……後は君の望み次第じゃないかな。もうあと十秒くらいだけど。九、八、七、六、五、四、三、二、一……
首を横に振った……か。ぎりぎりだけど答えられたみたいだね。時間切れにならなくて、良かった良かった。
じゃあ、正解発表です。正解は、(またまたドラムっぽい口ぶりで)ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル……残念、不正解です。正解は〇の、私は君がどんな風に答えようと、罰ゲームを与えるつもりでこの最終問題を出題している、でした。というわけで、不正解なので元の通りの罰ゲームに更に五割ほどを追加ということで。罰ゲームの追加なんて聞いてない? そこは私の気分かな。あと、やっぱり正解と不正解の罰が同じっていうのも味気ないしねぇ~。
罰ゲームの内容は? そう言えば、まだ言ってなかったね。これなぁんだ? そう、大縄跳び。今から君の体中をこれで精一杯叩きます。これがさっき言ってた、私の運動。君をたくさん叩いて、ダイエットするの。見ててね。たくさん、汗を流して更に綺麗になる私を。それっ!
(風を切るヒュンという音に加えて、強かに服越しに肉を打つ音。その音が延々と延々と続き……フェードアウト)
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