第30話 仮面読書感想会へのお誘い
パーティーというのは、五年に一度行われる仮面読書感想会のことだった。この国で長年開催されているもので、どのような身分の者でも関係なく読書を愛する者なら誰でも参加できる読書感想会。
「参加条件は本を三冊持ち寄ること、仮面をつけていること。それだけだそうだよ」
持ち寄った本は会場へ預け、帰る時には誰かが持って来た別の本を手渡される。まだ出会ったことのない本に出会えるという、遊び心のある仕組みだ。
訪れる人はみな本の感想を語り合うことを目的としている。同じ作家や作品を愛する者同士で集まり、食事を楽しみながら歓談することが趣旨の会。
それはそれは豪華な読書感想会だそうだが、そんな会の主催者は未だ不明らしい。殿下に尋ねてみるも、王弟の彼も知らないという。読書感想会をわざわざ仮面をつけて行うくらいだから、正体を知られたくない者が主催しているのかもしれない。
「これまで参加を見送っていたのだけれど、今年は僕も参加しようと思っていてね。よかったら君たちもと思ったのだけれど、どうかな?」
一月前、陛下の側近であるサンピティエさんは手紙の差出人と仮面読書感想会で会わせてくれると言っていた。参加すれば、会いたい人に会えるのだ。
これは好機だと考えたアヴェルスは、殿下の話を聞いて直ぐに参加の方向で話を進めてもらった。
「よかった。ビノーコロも参加すると前のめりだったよ。イスバートにも参加の可否を聞いておいてくれる?」
「かしこまりました」
ソワールは城の裏手を待ち合わせ場所に指定すると、一枚のメモ書きをアヴェルスへ渡した。
「書庫から出る時にこのメモに書いた本を持って来てほしい。それから、服装はビノーコロの魔法で変えてもらうから制服のままでいいよ」
出発は日没だと言うので、慌てて書庫へと戻る。仮面読書感想会へ参加させてもらうのだから、それまでに今日の仕事は全て終わらせなくては。
書庫へ戻って早速イスバートさんに事情を説明すると、彼は迷わず首を縦に振った。
「仮面をつけるということですから心配ないとは思いますが、万が一にも殿下の正体が明るみになってしまう、という最悪の事態も考えられますから」
イスバートさんは護衛として同行すると話した。
彼自身が獣人だと知られてしまう心配もあるだろうに、彼は自分よりも殿下のことを気にかけていた。これから手紙の差出人と会えることに気持ちが昂ってしまっていて、そこまで気が回らなかった自分が恥ずかしい。
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