まさかの寓話的思考実験!『怖さ』の核心。

大変に実験的な作品であると言える。
『怖い』と思う本質に鋭く斬り込むことで
その根源にあるモノを炙り出してゆく。
ホラー作品の『怖さ』だけを敢えて切り
取って纏めた作品だと作者は述懐する。

つまり極めて映像的な解析を要するのだ。

嘗て、モキュメンタリー等とも一味違う
『レポート形式』の作品や、最も難易度が
高いと言われる『二人称小説』で話題と
なった作者の新たな試み。
それも、ホラーに特化した感覚だけに
臨場感のスケールが、まるで違う。
文学の世界だけではない、映画などにも
造詣が深い作者ならではのホラーの王道。
『怖い』という場面、感情、そして動きに
至る迄、数ミリの誤差もなく術中に嵌る。

我々は、読む物を自ら選ぶ事が出来る。
だがしかし、読む者を選ぶ作品から
読み手として 選ばれる 事は、如何に
困難で名誉な事だろうか。


「この読みづらさについて来れるか?」
嘗て、王はそう宣った。

「勿論ですとも。」そう答えたい。
    賢きロバの如く、笑いながら。