第6話 逢瀬

 あれから私は最初の古屋へと戻りがてら、レンの捜索をするが彼と出会うことは無かった。

 古屋に戻ってみてもレンが帰宅していることもなく、私は何だか少し侘しい気持ちになる。



 そのまま待つこと夜の何時になったとしても、レンの叔父もこの古屋へと顔を出すことは無かった。


 私は孤独を感じながら、それを紛らわすかのように残った酒を一人で舐める。猪口に入った少量の酒をグイっと一気飲みをしてから、闇夜に乗じてあの、如何にも怪しい洋風建物の周辺から調べて入れそうな場所があれば侵入してみようと決起した。



 その前に、また下の方を”もよう”してきたので、昨日と同じ古屋の裏手で用を足そうとした、その時、夜目がまだハッキリとしていなかったが前方で蠢くなにかの塊りのような影が倒れている。


 なんだか嫌な予感がした。


 私は急いで灯りを取りに戻り、そしてまた裏手へとやってくると、そこには大量のコオロギのような、ゴキブリのような虫たちが人型に集まっていた。


「うわあぁぁぁ・・・・・・」


 私は叫びとも言えぬ、悲鳴のような声を漏らすように上げて、灯りであるランプを近づけていった。よく見ると蠢いている蟲はコオロギでもゴキブリでもなく、『カマドウマ』だった。


 触りたくはなかったので、代わりに持っているランプで蟲たちを掃うようにして、何に群がっているのかを確認してみる。

 少しランプのオイルが垂れてそこに引火し、周囲が一つの明かりよりも増えもう少し明るくなってしまうと同時に、暗くてジメジメした場所を好む竈馬かまどうまたちがバラバラと散らばり去って行く。

 数匹の竈馬にも引火し、それらはパチパチとよく燃える。


 見えてきたその蠢いて群がっていたその中は、友人のでした。


「レン!!おい!大丈夫か!?!」


 私は群がる竈馬群のことも自分の便意のことも忘れて、レンを抱えその息を確認する。


 息は無く、脈も無かった。


 悲しみと失意に襲われながら、私は外傷や死因を調べるが、致命傷と言える傷は無く、表情は苦悶のまま死んでいる。何があったのだ・・・・・・



 ガサッ・・・ガサガサッ!!



 背後の草むらに、何かが居る気配がした。

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